MMW-124
(見える範囲では上に異常はないけど……)
肌で感じるこの感覚、近いのは噴火直前の火山だ。
沸騰する直前のお鍋のような……うーん?
今回は、空が、いや……地面のような岩盤である天井が揺れているような錯覚。
実際には、岩盤自体は動いていないはずだけど……。
『MMWで出よう。みんなを起こして、見回りでもなんでもいいから受けて外へ』
(了解。そのほうが早いね)
中に戻り、起きてきたソフィアたちに異常事態を告げ、外に出ることを提案。
俺の真剣な様子に、リングもそのまま準備を始めてくれた。
エルデと赤ちゃんの準備も終わり、なぜか爺もついてくることになり……。
「外仕事をいきなり受けるってときは驚いたが……こいつは……」
「耳が痛い気がします。なんでしょう……」
コロニーのすぐ外。
ほぼほぼ安全地帯で、MMWと乗り物の外に。
みんなで空を、岩盤を見上げている。
俺以外には見えないだろうけど、まるで力が波のように動いている。
力が来る先は、遠く遠く。
そのまましばらく、全員で無言のまま、異様な雰囲気を見守っていた。
一緒に連れ出した機械獣だけが、まっすぐ前を向いている不思議な光景。
と、そんな時だ。
「セイヤ、戻るぞ。上半分の戦士に呼び出しがかかった」
「え? あ、本当だ……俺も上位層扱いか」
いつの間にか手元の端末が揺れ、そんな連絡が来ていた。
出てきたときの見回りの仕事は、仕事という名の外出権利みたいなもの。
報酬はないそれはいつ終わってもいいので、気にせずコロニーへ。
そのまま集合先へ全員で行くと、結構な人数の戦士と飼い主、関係者が集まってきていた。
どこか建物で話があるのかと思ったが、みんなの前にベルテクスが出てくる。
「よく来てくれた。この異様な雰囲気を皆も感じていると思う。過去の記録からすると、スターレイに何かあったときに起きている。そこで、調査団とコロニーの防衛に分かれてもらう。むろん、報酬は出る」
そんな話から始まり、思ったより多くの戦士が調査団に名乗りを上げた。
俺とリングは、喧騒のさなか、すでにベルテクスから直接参加要請が来ていたのだが。
もともとそのつもりだったし、断る理由もない。
にぎわう戦士たちとを見つつ、準備に戻る俺たち。
今回は、ソフィアとエルデ(と赤ちゃん)に爺は留守番してもらおう……。
「だめです」
「ええ……そんな戦う予定はないよ?」
「それでもです」
ところが、留守番をお願いしたところで、怒ったソフィアに却下された。
なぜか、爺までもが頷いている。
リングを見ると……あきらめろ、なんて返ってくる。
「……わかったよ」
結局、俺が折れる形で、全員で。
1週間以上は旅路となる覚悟で、準備を進め、コロニーの出口へ。
ほかにもいく予定の戦士たちと合流し、各方面、ベリルコロニー以外の方向へと調査団は出発。
俺はこっそり、力の波を感じた方向の調査団に入っている。
(ま、ベルテクスにはバレバレだろうけどさ)
実際、明らかに彼のところで見た覚えのある人が同行している。
隊列を組み、急ぎつつもすぐに止まれるように進む。
とはいえ、しばらくは当然、何もない。
「セイヤ、少しいいか?」
「何? 今のところ、機械獣も虫も感じないよ」
希望の穴で人形と会話し、あれこれ調整をした時に、俺は機械獣たちの探査方法について教わった。
独特の機構を持つ彼らは、生き物の探し方ではダメだったのだ。
管理者の権限とか言うものを流用した方法で、そこそこの範囲でどちらも感じ取れる……はず。
今のところ、目の前の味方である1機以外は反応は感じない。
「そいつはいいことだ。だが話は別のことだ。俺も話に聞いたことがある程度なんだが、もし色が変わるスターレイを見つけたら、コンテナサイズでいい、気合いで持ち帰れ」
「そこまで言うってことは、良い材料になるのかな?」
「本当かどうかはわからないが、な」
わざわざリングが言うぐらいなのだ。
それなりに信憑性のある話なのだと思う。
それにしても、色が変わる、か。
(無色透明なあれが? もしかして……)
俺は一人、レアなスターレイについて考えつつ、他の面々と一緒に進むのだった。




