MMW-118
俺と組んでいる戦士、リング。
いい年をしたおじさんであり、たぶん、かなり強い戦士だ。
出会った時は、どこか弱気な姿が目立ったように思うが、今はそんな様子はない。
知れば知るほど、強いだろうなと思わせる存在だ。
この世界、長生きできる戦士は少ないという事実が、強さを証明しているのだ。
生き残る術に長けているのか、単純に強いのかは人それぞれだろうけども。
「近距離2、中距離2、遠距離はいねえ」
「わかるの?」
「わかるさ。長くやってれば、武装のスペックぐらい、覚えちまうもんだ」
試合開始直後は、距離を取っての撃ち合い。
一見すると、特に機体の差はないように見えて……なるほど。
(確かに、内2機のほうが火力が高いかな?)
4機それぞれに攻撃を仕掛け、動きを観察するリング。
俺はその援護をしながら、左右に動いて相手の意識をそらしていた。
飛び交う弾丸たちは、実体弾とエネルギー弾が入り混じる。
1つ1つが、相応の威力だと感じられる。
それでも、当たらなければ威力を発揮しないのは当然のこと。
「リング、後ろは俺が見てるから、好きにやりなよ」
「そいつはうれしいね。なら遠慮なく!」
そう言って、リングは少し前へ。
その背中には、俺と最初に組んだ時のぎりぎりさは全くなかった。
機体越しなのに、それが感じられたのが不思議だ。
『本来、戦士としては強いんだよ』
どこか、誇らしげなプレストンの声。
笑みを浮かべつつ、俺も役目を果たすべく動き出す。
その際、ウニバース粒子をしっかりと見る。
頼るのではなく、自分の技術として使いこなすためだ。
「今のリングは目立つけどさ、そうはさせない」
迫る粒子の流れ、殺気めいたそれの……リングへ向いたものをチェック。
その主に向けて、牽制の射撃を繰り返す。
それが効果的なのは、結果が示している。
普通、自分自身への意識を無視して他に行くのは難しいからだ。
(今の俺なら……きっと!)
リングの攻撃を観察すると、わかることがある。
特別な技術はないけれど、1つ1つが、上手い。
行動と行動の間の隙も、短いように思う。
逆に考えると、この強さがあっても1つ間違えると転がっていく、そんな怖さが世の中あるわけだ。
「俺は、空を見るまで止まるわけにはいかないからね」
実質1:3か4の戦い方なのに、相手を押していくリング。
相手の攻撃は避け、カウンターで放った攻撃が相手には当たる。
いや、当てるというよりは……。
『置いておき、相手があたりに行っているってとこだな』
(こう動くだろうっていう予測が当たってるんだ)
リングには、ウニバース粒子の動きがはっきりとは見えていないはず。
つまり、これは俺にない技術だ。
そのことに驚きと、感動を覚えながら少しでも学ぼうと俺も動きを止めない。
近づこうとする2機には厚めに射撃をし、リングの得意な距離にできるだけとどめる。
さすがに俺たちも被弾はするが、相手のほうがはるかにその量が多く、天秤は大きく傾いていく。
「セイヤっ! もいじまえ!」
「了解っ!」
これでとどめとばかりに、一気に弾をばらまくリング。
それで相手の動きが鈍ったところで、俺が突撃。
武器も欠損し、動きも鈍くなった相手は、近接のブレードの良い的だ。
手足を続けざまに切り裂き、戦闘不能へ。
最後に残った1機へと銃口とブレードを突きつけ……降参。
「ふぅ、なんとかなったぜ」
「よく言うよ。強いじゃん、やっぱりさ」
「頼れる味方がいるってのは、いいもんさ」
色々な感情をこめてそう言うと、リングからも小気味よい返事が返ってきた。
MMWの拳を、生身のそれのように打ち合わせる。
それが合図になったように、歓声が響き渡った。
しばらくは続く、たくさんの試合の始まりは、こうして終わった。




