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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-114



「質問を変える。俺にだけ回答しているように見えるが、理由はあるか?」


「遺伝子情報から、貴方のみ管理者のものを感知しました。暫定的にですが、貴方が管理者です」


 ふわりと、人形の指に何かが乗った。

 灯りは十分で、それが何か俺にも見えた。


 小さな、機械虫。


『蚊、小柄で血を吸うやつだ。探索中に、すでに情報は得ていたわけだ』


(血を? 痛くないから、そこまでアレなやつじゃないか……)


 なんとなく、首をなでてしまう俺。

 そんな中、ソフィアたちの雰囲気が、戸惑いに染まるのがわかる。

 それはそうだろう。


 俺はただの生産された戦士、その1人でしかない。

 そりゃあ、頭にプレストンという未来の自分がいて、少しばかりMMWの操作はうまいが。


「管理者? 俺は作られた人間でしかないよ」


「推測、推測。検索……情報アリ。人類再生、繁栄の計画。人類を可能な限り遺伝子情報として保存、新天地での再生を試みる。情報を整理。貴方は管理者としてではなく、偶然により再生された?」


「あ、ああ。そういうことだと思う」


 人形の語る内容は、じわりじわりと衝撃を与えてくる内容だ。

 地下世界に人類が逃げ込んだとき、どれだけが生身だったのだろうか。

 もしかしたら、もしかしたらだが……。


『いや、ある程度は生身のはずだ。その場所が生存に適した環境かどうか、データだけではわからない』


(それはそれでどうなんだろうね?)


 慰めにもならないプレストンの声を聞きつつ、人形との対話を続ける。


「人類の再生には、多種多様の組み合わせが重要です。優秀なものだけというのは、いつかひずみを生む。そう定義されています。管理者……呼称はセイヤで?」


「その機械虫で聞いていたんだな。セイヤでいい。できれば俺以外、管理者以外とも話すようにしてほしい」


「管理者からの命令を受諾。ようこそ、人類」


 どこまで本当かはわからないが、急に俺以外にも顔を向け、語り始めた人形。

 不気味なような、それも人間が設計した通りと考えれば問題ないような、不思議な感覚だ。


「質問がある。これまで人類を受け入れず、排除していた理由は?」


「初期の命令が、陣地を構築し、管理者による命令があるまで維持拡大をし、防衛せよというものだからです」


「管理者による命令とは、セイヤが行ったような攻撃行為のことか?」


 順番に質問が行われることになり、まずはこの場所のことを。

 そして、どうして人類のはずの俺たちに反撃してきたかを聞いた。


「その通りです。貴方がたがウニバース粒子と呼ぶものを使い、人類は我らに命令を打ち込み、制御していました。今もそれは有効です」


「今の俺が命令をするにはどうしたらいい?」


「そうせよと外でしたようにお命じください」


 短く、そう告げられた。

 最初は訳がわからなかったが、すぐに思い当たった。


 ウニバース粒子はどこにでもあって、生き物はそれを内包している。

 そして、MMWなどのメタルムコアはそれを人為的に集め、力を発する装置だ。

 人間にも、生き物にも最初からコアに相当する力がある。


 俺は覚悟を決めて、人形の手を握り、力を意識しながら口を開いた。


「今、この地下世界に生きている人類、生産された人類も含め、繁栄のために協力して」


「命令を受諾。陣地構築、防衛モードから変更。人類の受け入れ、支援に移行します。以後、施設の利用は自由ですが、権限はセイヤ、あるいは承認を得た管理者相当の人類のみとなります」


 一気に話が動いたけど、ひとまずこれで……これで?

 待って、今俺がこのまま管理者と同格って言った?


 ちらりとソフィアたちを見ると、真顔で頷きを返された。

 うそでしょ……そういうこと?


「質問。それはつまり、俺がこのコロニーというか施設のトップということ?」


「現時点では。管理者権限を持つ遺伝子情報は、1万を超えます。ただ、多くは生産された人類ということですので、無条件で権限が付与されるわけではありません。人格までは再生できないはずですので」


「それは確かにって、あまり慰めになってないな……」


 ちょっと保留、と告げてみんなのところへ。

 誰かと話さないと落ち着かない感じだ。


 ベリルコロニーの人員なんか、青い顔を通り越してる気がするよ、うん。

 ソフィアたちは……またこいつ、って顔な気がする。


「どうしましょうねえ」


「本当だよ。ひとまず、俺が支配するってのは無しの方向で。でかい拾いもんだよ……」


 早急に、双方のコロニーで話し合わないといけない案件となったのを感じるのだった。



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