MMW-111
『まずは相手の分布をよく確認するんだ』
(何かしらのルールに沿って動いてるはず、だよね)
機械獣たちは、生物ではない。
おそらくは人間か、人間に近い何者かが仕組みを作ったはず。
もしかしたら、人が増えにくいこの地下世界で、人の代わりだったのかもしれない。
今は、人間に文字通り牙をむいているわけだけれど。
「射撃は無し。でもこっちを結構な数が見てる」
いつぞやのように飛びあがる俺。
あまり上に上がると、他のみんなと連携が取りにくいから建物の上ぐらいの高さ。
それでも十分遠くまで見渡せる。
機械獣たちの種類や数、その動きもだ。
何かを飛ばしてくるということはないけれど、視線のようなものを感じる。
『MMWでいうところの誘導、ロックだろうな。走ってくるやつがいる……跳んでくるぞ!』
「うっそでしょ!?」
プレストンの声に、半分疑いながらもブレードを構えさせ……見事に2匹ほどが大ジャンプ。
そのまま突撃してくる相手に対して、こちらは好きに動ける。
角度を変え、無防備な腹相当の部分を切り裂き、撃破。
落下した機械獣に、他の機械獣が群がり……ばらばらにした!?
「接近戦なら通る! でも気を付けてね! 何か変だ!」
俺が言うまでもなく、みんなもその光景は見ているだろう。
あちこちで戦いが始まり、機械獣たちが撃破され、そしてばらばらにされていく。
気になるところだが、俺の役目はそれではない。
そばに飛び上がってくるもう1機のMMW、アデルだ。
持ち込んだ装備に交換し、同じように一時的ながら飛翔機能を付けたらしい。
「では行こうか。怪しい場所はどこかな」
「そう言われてもねっと……」
アデルも一緒だと、安心は安心である。
探索に集中できるからね、うん。
ちょーっとばかり、前のめりな感じがするけど……。
(今は気にせず、親玉を探さないと……)
気を引き締めて、機械獣たちの走る地上を見下ろしながら飛ぶ。
クレーター周辺の施設、その構造はコロニーと似ている。
きっと、大元の技術も一緒なのだろう。
だったら、施設の重要度も察せられるというものだ。
「ウニバース粒子が一番集まってる場所……あそこだ!」
そうして示した場所は、粒子が見えなくてもわかりやすい目印があった。
機械獣の集団の中に、ひときわ豪華な個体がいたのだ。
体つきも大きく、装備となる牙、爪といったものも明らかに鋭い。
指揮官、あるいは……。
「あの場所ではUGは撃てぬな」
「確かに。援護よろしく!」
そう言いながら、上空から突撃。
相手もこちらに気が付いてるようだけど、逃げる様子はない。
よほど自分の耐久や、数に自信があるのだろう。
自分がそこにいるほうが良いと、これまでの攻防で学んだのだと思う。
「けれど、今回は一味違うよ?」
巨大な機械獣の関節や頭部、そのほか重要そうな部位へと叩き込む。
とことん、ウニバース粒子に、止まれ、人間だ、といった感情をこめて……。
最初は単に装甲にはじかれて終わり。
でも、続けているうちに変化が出てきた。
残弾がさみしくなるほど打ち込み、ようやく……狙い通り、相手の動きが止まった。
「戦士セイヤ、上手くいったようだな」
「うん。他も影響を受けるのは予想外だったけどね」
2人して巨大な機械獣のそばに着地。
そのまま戦いに!とはならず、周囲は静かなもの。
そう、俺の攻撃で親玉だけでなく、他の機械獣たちも不思議と動きを止めるのだった。
武器を下さないまま、みんなが近づいてくる。
「相手の命令みたいなのを、書き換えたんだよ」
「信じられねえが、実際止まったもんな。じゃあ、こっからは決まってるな」
リングの声に、頷きを返す俺。
ソフィアやベリルコロニーの人員も集まるのを待ってから、向かう先は……。
「施設の中心、コロニーにもあるという巨大メタルムコアのある場所……」
その時、なぜだか俺はワクワクとした気持ちと、恐怖のような気持ちを同時に味わっていた。
知るべきであるという気持ちと、知らないほうがいいという気持ち。
すっきりしない感情を抱えながら、進む。




