MMW-102
事前に相談した戦法は、とても単純だ。
チーム戦だというのなら、相手のリーダー格を誰かが縛り付ける。
残りの面々をそれぞれに倒す、それだけだ。
相手の得意なところで戦う必要は、全くない。
「戦士セイヤ、見つけたら言ってくれ。私が行く」
戦士の1人にそう言われ、俺は俺の役目を果たすことにする。
俺が相手を縛るより、自由に動けということだ。
短く了解と答え、手持ちの銃を相手全体に乱射。
威力より球数を重視したタイプで、狙いはあぶり出しだ。
相手が当然のように回避運動をし……ウニバース粒子も感情に乗って動く。
その動きの中心、行きつく先が……左から2番目!
ぱっと見、遠距離を中心とした武装の白い塗装のMMW!
「左2!」
俺の声に、先ほど立候補した戦士の機体が一気に前に出るのがわかった。
俺たちはそれを援護し、残りの相手にぶつかるように動き出す。
俺たち以外も、歴戦の戦士だ。
苦手な距離、相手というのはほぼほぼないはず。
伝わる気迫も、それを証明している。
「俺の相手はっと」
一番、動きのよさそうな相手に食らいつくことにする。
相手の左右へ弾を飛ばし、意識を散らしながら接近。
表面の直しきれていない傷も見えるぐらいの距離で、こちら仕様のブレードを振りぬく。
相手のブレードとぶつかり、妙に派手な光が飛び散る。
「派手な割に、攻撃は強くないのが無駄技術すぎるっ!」
『いかに試合を盛り上げるかってことなんだろうな。上っ!』
何かを感じると同時に、機体を横滑り。
地面に当たる、上からの攻撃は別の敵からの援護射撃だ。
なるほど、チーム戦……甘く見てはいけない。
(別の相手に援護するのも当たり前のことってわけね)
こちらはそういう戦い方が当たり前、そういうことだ。
これは確かに、俺が相手を甘く見ていたという油断だ。
ちゃんと、戦い方を変えなくてはいけない。
「リングっ!」
「おうよっ。持ってくっ!」
ほかのみんなも、同じように自分が相手している敵以外からの攻撃を受けているはず。
つまり、考えることは一緒だ。
ちょうど近い位置で戦うリングへ向けて、俺が相手をしている敵機を誘導すべく攻撃を仕掛ける。
切りかかる方向、撃つ向き、それらを意識して調整。
このぐらいは、追い込むために攻撃を偏らせるってことでよくやっていた。
相手だけがチーム戦、複数戦闘に慣れているわけじゃないことを示してやるのだ。
(相手が近くなった……今っ!)
敵機の2機が、予定通りに近づいたところで突進。
正面に攻撃を集中し、釘付けに。
そのままでは俺に食われると考えたもう1機と一緒に、俺への攻撃の圧が高まる。
意識も攻撃も俺に向かわせたところで、リングの射撃とほぼ同時に横移動。
そしてすぐにまた戻る。
攻撃しながらのその動きは、相手からするとリングの射撃が俺を貫いてきたかのような挙動になる。
何度も繰り返してきた、特殊な射撃だ。
「姿勢を崩した今ならっ!」
とっさの防御、回避、どちらも大きな隙だ。
一気に接近し、事前に確かめていたルール通りに、コックピットへとブレードを突き刺す。
大きく威力は減少し、判定上直撃とされる攻撃が当たる。
これにより、相手は戦闘不能扱いになるのだ。
「セイヤ、行けっ」
「わかった!」
リングが残り1機を受け持つから、自由に動けと叫んでくる。
返事を返しながら、他の戦いへと乱入を開始する。
ベリルコロニーの戦士が、特別弱いわけではない。
それは今戦ってもわかる。
けれど、上手くやらないと死ぬ、その経験が圧倒的に違う。
失敗しなければ死なないのと、上手くやらないと死ぬ、のは違いすぎるのだ。
「いいか悪いかは、何とも言えないけどね」
横合いから襲い掛かりながら、そんなことをつぶやく俺。
火力の都合で長引くだろうけど、コランダムコロニー側の勝利が決まったと確信するのだった。




