MMW-101
「ごめんね、ソフィア」
「いいえ、大丈夫です。最初は驚きましたけど、もっともです」
案内された先は、普段使っていない雰囲気の倉庫。
そこにMMWを運び込み、装備のチェックだ。
ソフィアの両親と数名は、こちらについてきた。
たぶん、助言……のためだと思う。
「これはある意味、大きな未来へつながる駆け引きです。力関係、とも言い換えられます」
きりっとした表情で、俺たちの前に立つ彼女は……うん、強い。
吹っ切れたともいうのだろう。
その原因の1つは、目の前にいるわけだが。
「ソフィア、よくそこまで考えが至ったものだ」
彼女の父親は、感心したようにつぶやく。
助言の必要もないなと言葉を添えて。
母親のほうは、心配なような、そうでもないような。
複雑な思いなのだろうなとは思う。
「戦士たちのおかげです。それで、お父様。こちらでは事故以外では死人は出ないのですね」
「ああ。よほど当たり所が悪くない限りは。火力が低い……というより、コランダムコロニー側が高すぎるのだ」
少しだけ見た試合と、今見ている映像でもそれはわかる。
まるでランク1の泥仕合のような、低火力。
その理由は、はっきりしている。
勝敗が、ポイント制だからだ。
「命中精度や、どういった被害が想定されるかで決まると。どうするよ、お前ら」
「どうもこうも、武器をこっちに合わせてやるしかないだろう」
あきれたようなリングの声に、他の戦士たちも同じような様子で答える。
俺も、頷きつつ1つ気になったことを聞くことにする。
接近戦は、どうなっているのかと。
「ブレードや、突進はどうすれば? 俺の武器の1つは、MMWの腕ぐらいなら切り落とすエネルギーブレードなんだけど」
「それは問題ない。弾は切れるし、刃同士をぶつけられるが、機体は切れないものがある」
何それ、逆に怖い。
どうも、MMWの表面に当たる色々なものを取得し、被弾の判定をすることができるらしい。
やれるならいいけど……ふむ。
『問題は誰が出るかだな』
そんなプレストンのつぶやきが聞こえたわけでもないだろうけど、すぐにその話になった。
人数だけは言われている。
全部で、5人。
こちらではチーム戦が主らしい。
出るのは俺とリング、他3人。
3人は、試合で1回は見たことがあるランカーたちだ。
そう何度も組まないだろうと、名前も気にしていないけど……。
5人とも、ちょっとムカついている。
ベリルコロニーからの提案が、ちょっとアレだったのだ。
最初は、1:1が提案された。
ベリルコロニーはチーム戦が主だから、ハンデだとか。
「舐めてやがるぜ」
「戦士セイヤの好きなように。合わせる」
今回は参加を見送った戦士も怒っているし、一緒に戦う戦士はもっとだ。
それでも、俺が主体でいいという。
不思議に思い、聞いてみる俺。
「戦士セイヤのことは有名だし、連戦連勝、調子がいいやつは調べるもんだ」
1人の意見が、全員の共通認識のようだった。
ともあれ、方針は決まった。
大事なのは、武器、そして機動だ。
さっそく、準備のできたMMWで倉庫内を移動。
謎のこだわりで、実戦モードなスイッチを入れずにトリガーも引ける。
すると、コックピット内ではまるで実際に撃ったかのようなデータが表示されるのだ。
「なんだかなあ……いや、でもこれで過ごしてるのだから、弱いわけじゃないはず」
緩みそうになる気持ちを、引き締めなおした。
この武装たちも、相手にとっては古くからのものらしい。
やはり、技術は少し先を言っている。
「もし、コランダムコロニー側のように武器が変わっていったら?」
小さなつぶやきは、みんなにも聞こえたらしい。
動きが、真剣さを増したのを感じる。
「やるぜ」
リングの声が、妙に力強く感じた。
そうしてしばらくして、呼び出しがかかる。
案内を受けて向かう先は、試合会場。
そこでも、小さくない衝撃に襲われる。
整った試合会場、薄汚れていない観客。
明るすぎる、それに尽きた。
こちらの紹介も、変に馬鹿にするようなものじゃない。
「……どうする?」
「別に印象悪くする必要もないでしょ。まともにやって、まともに勝てばいい」
悩んだ表情のリングへ、きっぱりと答えて機体を数歩前に。
時間は、もう来てしまったのだから。




