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5757  作者: 華月 ゆき
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体育祭

 体育祭。

 梅雨を目の前にした初夏の日差しの中で、私たちは運動に精を出すことになった。

 私はスポーツは得意な方で、二人三脚とリレーに出ることになっていた。

 つき子さんは200m走とリレーのアンカーで、思っていた通りスポーツも万能なのだった。


 「香蓮ちゃん、がんばってねぇ。」

 赤い鉢巻き靡かせながらスタート地点へ移動していると、のんちゃんが観客席から手を振る。

 私はのんちゃんに手を振り返して、頷いた。

 クラスに貢献できるように、……つき子さんにみっともない所を見せないように、がんばろう。


 「櫻宮さん!」

 二人三脚の準備をしていた私に、クラスメイトの桂さんが駆け寄ってきた。

 「どうしたの?」

 「あなたと組むことになっていた田崎さん、急な腹痛で保健室に運ばれたの。」

 「ええっ!?」

 「代わりの人を見つけないといけないのだけれど……主要なメンバーは出払っているの。」

 どうしよう。

 私はしゃがみ込んだ。

 相手が居なければ、棄権する事になる。

 クラスの、……つき子さんの合計点を、引く事になってしまう。

 

 「櫻宮さん。どうしたの?」

 凛とした声にはっと顔を上げると、つき子さんが心配そうに眉根を寄せて私を見下ろしていた。 

 「清水さん……。」

 私は混乱しながらも事の経緯をつき子さんに話した。

 「二人三脚の相手が急病?……仕方がないわね。」

 つき子さんは溜め息をつくと、

 「私でよければ一緒に走るわ。」

 私の手を取って、起き上がらせた。


 つき子さんの、手。

 滑らかで温度の低い、ほっそりした手。

 しっかりとした手つきで私を握り、導いてくれた。

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