No.547 プギャー
質問来てたので解答。
ツナ達のGBHWの異能ビルドについて。これはノートから指定されています。
ツナ
・【SpaceGia】
転移や空間操作など雑に強いヤツ。
しかしこれは初心者向けに思わせてスタミナ消費が激しく、しっかり考えて使わないと一気に地雷異能に早変わり。つまりツナには合っていない異能なのですが、スタミナ消費の意識を根付かせるために敢えてセレクト
・【SaturnCat】
猫の様な能力を身につける異能。なんだか他の異能に比べて地味に見えるが相性が良いプレイヤーが使うと大化けするタイプの異能である。特にトリックムーブ、つまり行動補正がかなり強い。こちらはSpaceと違ってツナ向きと判断してセレクト。全異能中スタミナ消費が圧倒的に低いのも魅力的。
・【RizinDrive】
運動強化に電撃バリバリのスタンダードに強いヤツ。強いがこれがアクロバット強化のCatと併用するとかなり悪さ出来る。もちろん制御出来るプレイヤーの運動神経が必要だけど。
総括
普段の動きからRizinとCatをメインに近接寄り方。そこにSpaceを入れる事で絶対に使いたくなってしまうツナにスタミナ消費の概念を覚え込ませる事を目的としている。実際一般プレイヤー相手なら単騎で複数を相手取れるくらいには強い
Ginger
・【SilverKey】
異界から腕だの足だの召喚する人を選ぶ異能。ぶっちゃけるとベヨネッタのアレに近い。これはGingerに相性が良いというよりはGingerの初期特の召喚攻撃に近いものだからセレクト。Gingerも何度か使うだけで、これ天叢雲剣のアレだな?ってなるくらい操作感は似ている
・【LeviathanBlood】
血液操作や治癒力強化の異能。継戦能力が段違いに上がる。基礎的な戦闘技術はツナと違い完成しているので生き残る意識を身につけさせるためにセレクト。
・【KamikazeSoul】
風操作及び速度強化。Rizinが身体全部強化するならKamikazeは自爆しかねないレベルで速度を強化する。多少やらかして負傷してもリヴァイアサンで治療すればOK。実は相性ならRizinの方が上だが、風をどう使うか、つまりリアル戦闘技術だけで無くゲーム的な能力にも目を向けさせるためにセレクト。下手に使うと味方を巻き込むので位置取りも大事となかなか玄人向け異能はその名を裏切らない。
総括
ALLFO向けの意識を忘れさせないことを主題とした編成で、Gingerにとってのメイン火力がKamikazeに大きく依存するためどうしてもこの難しい異能と向き合う羽目になる。GBHWを知っている人なら、何このクソデッキ?ってなるセレクト
GBHW3日目。
彼女達はノートが声をかけるより前に駆けよってきてノートの服を掴んで強く揺さぶった。ツナに引っ張られてかGingerも遠慮なくノートの服をつかんでいるあたりだいぶ染まってきている。
見た目だけならまるで父親か兄に我儘を言う駄々っ子の様である。
「引率担当のゴローはいやじゃ!」
「リーダー!ゴロが酷いの!」
ツナとGingerは、コイツが悪いとゴロワーズを指差す。3日目のガイドを務めたゴロワーズはツヤツヤとした顔でニコニコしていた。
「いっぱい殺しましたぁ、あはっ」
「「ガルルルルッ!」」
いよいよ犬のようにゴロワーズを威嚇するツナとGinger。そんな威嚇を見てもゴロワーズはヘラヘラと笑っているだけだ。陰湿なこの女はリアル社会的強者をボコれて御満悦である。
初日のスピリタスには基礎の教授を依頼した。
2日目のカるタには適度に見守りつつ、余計なものは露払いをしつつエロマの面倒も見るミッションを与えた。
では3日目のゴロワーズの役目は。
ノートがゴロワーズに依頼したのは、ツナとGingerの殺害。ちょっとでも気を抜いたら隙を見て殺せとノートは指示していた。
ノートの狙い通り、意見のぶつけ合いを経てお互いに合わせようとするばかりに周囲への意識が疎かになっていた2人は、人の隙を見ることにかけては天才的なゴロワーズからすれば絶好のカモだった。単純な戦闘能力と総合的な戦闘能力は全く違うものだとゴロワーズはしっかりと後輩達に叩き込んだ。
ゴロワーズは味方殺しを一切躊躇わない。ノートから命令されれば誰でも容赦無く殺す。他のメンツだと純真なツナとGingerを手にかける事に抵抗を覚えるだろうが、ゴロワーズは率先して殺害を目指す。ノートからの殺害許可が出ればこの女は誰でも喜んで積極的に殺す。
2人からしたら相当ストレスが溜まった事だろう。ゴロワーズはここぞいうときに限って2人を攻撃して邪魔をしていた。
奇襲は相手の認識の外に位置取りするのが大前提。
ツナとGingerはゴロワーズが嫌になっていたが、同時にそれはゴロワーズのPK技術がずば抜けているという事。熟達したPKプレイヤーはとにかく嫌われるのである。GBHWで嫌われるプレイヤーはそれだけ優秀なPKプレイヤーの証だ。
PKの基本は相手の隙を突く事。幼少期、家庭でも学校でも存在感を消す事だけを目標に24時間立ち回っていたゴロワーズは無意識に人の認識外に身を置く技術を習得していた。相手の性格からどの位置取りをすれば死角になるかを本能的に察する事が出来るようになっていた。これはノートをストーキングして得た今なお生きている技術でもある。
そしてツナとGingerはテンション直結型のプレイヤーの為、ゴロワーズから見ればどのタイミングでエンジンがかかりそうか手に取るようにわかる。同時に何を苦手とし、どの様な攻め方に不慣れかも表情に出やすいので簡単に弱点が分かった。
そして始まるは奇襲に次ぐ奇襲。ゾンビや他プレイヤーに殺されるよりもゴロワーズに殺される方が2人は圧倒的に多くなる。こうなればと付け焼刃で対ゴロワーズで連携を試みるも、ゴロワーズとてアホではない。ノートロールプレイを得意とするゴロワーズは十数人のギャングを誑かしてツナとGingerを襲わせ、ゾンビをトレインして巻き込み、2人がボロボロになったところで協力してくれたギャングとゾンビ達諸共爆破した。
言い訳はできない。GBHW歴そのもので言えばゴロワーズとてまだ浅瀬。ノートに誘われて最近始めたくらいだ。なのに2人はゴロワーズ相手に全く歯が立たなかった。
PKの才能とは言わば、人が嫌がる事をどれくらいできるか、とも言いかえる事が出来る。
その点、性格が悪いゴロワーズは頭抜けたPK適性を持っていた。魂がGBHWに適応したこの性格の悪い女は非常に生き生きとしていた。
対してツナとGingerはあまりに素直すぎた。ゴロワーズの仕掛ける罠と言う罠全部に引っかかるものだから、流石のゴロワーズもあの二人だいぶアホなんじゃないか?それともノラ君のドッキリ?と途中で少し心配になるくらいだった。
直情的で根っこの性格が良いツナは人を疑う才能がない。なので罠によく引っかかる。そこはゴロワーズも疑問はあまりない。
問題はGinger。Gingerも性格が悪いわけではないが、良いとも言えない。人を疑う事はできる。だが、罠を全然見破れない。Gingerには優れた共感覚があり、その嗅覚でいつも危機を察知していた。だからALLFOでは罠に引っかからない。なのにGBHWではまるでそのリアル危機感知スキルが通用しない。
GBHWでは至る所に危険信号を発するものが転がっているので、Gingerの嗅覚はバカになってしまう。嗅覚に頼っていたGingerにとってGBHWは鬼門だった。Gingerにとって嗅覚は生まれてからずっと頼ってきた感覚。常人に例えるなら、嗅覚を潰されるのは目を塞がれるに等しい所業なのだ。
嗅覚が効かないと難しい。そう愚痴るGigerに、ノートは目を見て諭す。
それは違う、と。
その嗅覚は、本当に何か危険な匂いを嗅ぎ取っているわけではない。視覚や聴覚など別の情報が嗅覚として出力されているだけ。つまりGingerの危機察知の根本にあるのは視覚と聴覚。嗅覚ばかりに意識を向けているから、ちゃんと情報を得て分析するヒントもあるのに、勝手に自分で目を逸らしているだけだろ、と。
いっぱい攻め込まれると分かんなくなる、そう愚痴るツナにもノートは諭す。
まず、ツナはペース配分と立ち位置を覚えよう、と。
ツナは瞬間的な処理能力が非常に高く、集団の中に突撃しても捌ける力がある。素の才能そのものは非常に優れている。ただ、得意な事があるからと言って必ず得意な事をしなければならないわけではない。例え生還できても、体力も精神も消耗する。消耗すれば隙が生まれる。極論、トン2やスピリタスの様な人外級でも体力を削り切ってまともに立てないくらいに追い込めば素人でも勝てるのだ。
迂闊に集団に飛び込まず、常に視野を広く確保できるポジションを探す。敵がいるからと言って直ぐに攻撃を選択するのではなく、今この場が戦闘に適した場か考える。戦闘のフィールド自体も一種の武器だ。それを無視した立ち回りをするのは自分から一つ大きな武器を放棄しているのと同じである。
一日目はオリエンテーション。
二日目は反目を誘発。
三日目は共通の敵を作り温めたところで、問題点を指摘し熱した頭に冷や水を浴びせる。
ノートの指摘に、珍しく直情本能型の2人も考え込んでいた。
◆
GBHW四日目。
「ぷぷぷっ、雑魚ですね~。ざっこーざっこーこけっここーー、コココッ!」
ヨワヨワ~顔真っ赤でプギャー!と2人の周りをスキップしながら煽り散らかすゴロワーズ。
対してツナは涙目でプルプルしており、Gingerは牙を剝き出しにしていよいよ獣の様に唸っていた。
暴言差別用語なんでもOKなクソな世界に於いて、ゴロワーズという存在は誰よりも輝いていた。
ノートより直々に殺害許可証を得ている強気なゴロワーズは無敵の人だ。散々2人を煽り倒し、怒って集中力が切れると見るや直ぐに罠にかける。
メンタルへの攻撃はゴロワーズの十八番。
ゴロワーズからすれば口プも戦略の1つなのだ。使わないほうが悪い。
「で?どうだった?」
「一本だけとられましたね~。ギア噛み合ってきたんじゃないんです?」
周囲は敵だらけな事に加え、明確に自分たちを集中攻撃してくるゴロワーズという存在。
ゴロワーズはあらゆる手を尽くして2人の間で連携を取れないようにした。ノートからお互いに離れ過ぎたら訓練にならないので近くに居ましょうとツナとGingerは強く言い含められているのだから、離れられないなら協力すべきなのに、ゴロワーズに邪魔されて一向にできない。しかし連携できない奴が近くをウロウロされても邪魔なのだ。
そのイライラをゴロワーズは的確に利用する。
だからといって、お互いを殺し合ってもゴロワーズの思うつぼ。一人になってしまってはいよいよ押し切られてしまう。
やりたいのにできない。そのもどかしさ。
2人は初めて、惰性や義務感ではなく、必要に駆られて連携の完成を求めた。
けれど悠長に話し合う時間をゴロワーズは与えてくれない。なら、お互いの呼吸を測るしかないのだ。
おまけ
ゴロワーズ
・【LeviathanBlood】
どんなゲームでも大体バーサクヒーラーなコイツには必須級。自傷を本能的に避けてしまうプレイヤーが一般的な一方、コイツはカケラも自傷を恐れないので常人では考えられない様な攻撃を仕掛けてくる。腕を切り飛ばそうが生えてくるこの異能との相性は抜群。しかも血液操作などあまり重要視されない能力もゴロワーズにとっては罠を幾らでも仕掛けられる強能力に化けさせられる。
・【CostumeScylla】
触手操作及び肉体改造というVRの制限に喧嘩売っている異能。つまりこれも適性のアリナシが滅茶苦茶出る異能。大事なのは自分の肉体と精神の乖離に一切怯えない事。これを使うゴロワーズはもはや化物と化す。ここに血液操作を組み合わせて非常に気色の悪いムーブをしてくる。とある昔の漫画を読んだノートの一言「コイツだけ喰○に出てきても違和感なさそうだよな」
・【AdamasBehemoth】
肉体の硬化と怪力というクソシンプルな異能なのだが、これがスキュラと組み合わさると非常に悪さをし始める。強化再生、硬化に肉体操作…………これやっぱり○種だな?とはノートの言葉。
総括
罠とかその他諸々は自分の頭脳や周り頼りで本体は近接特化寄りのビルド。こちらはゴロワーズ自ら選んでいる。何が厄介かと言えばこの喰○擬き、銃もプロゲーマーのカるタが反応するぐらいには使いこなしているし、その肉体からは想像できないくらい体術も長けているという事。例えば背後に回り込もうが先読みして硬化した触手で薙ぎ払ったり、血液と肉体を操作して盾を作ったり刃を生成したり、血液を弾丸の様に飛ばしたり。
「あれ?どっちかと言えば寄○獣か」とはノートの言葉。
素の状態でもクソ強い人外が平気で銃とか兵器とか使うし、おまけに人心掌握で周囲の奴らを引き込んで襲撃してくるというクソみたいな敵に仕上がっている




