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No.Ex 対米鯖第三≠五臨時偵察小隊 ㉓

ゲリラだぁ



「目が~目が~!」

「バル〇~!」

「ミミガー!ミミガー!」


 最初から遠方にいた魔人バブゥとミゴは魔人バブゥが即座に結界を張った為にエインが張った障壁無しでも大きなダメージを受けることはなかったが、もっと近くにいて障壁もなしにその衝撃を受けてしまったプレイヤーは少なくないダメージを受けた。


 それでも、山登りの最中だったギャルズ三姉妹とヌルは生きていた。

 一番早く復活したのはヌル。光の棍棒が振り下ろされるのを見たとき、すぐに飛び込めそうな凹面に飛び込み、好奇心を振り切って斜面側を向いて目を閉じ耳に指を突っ込んで口を開けた。そして金属性魔法で肉体を最大限強化した。

 爆発物に対する衝撃を一番抑える対ショック体勢。普通のゲームならあまり意味はなさそうだが、物理演算がいい意味でも悪い意味でもかなりリアルに機能しているALLFOなら意味があるとヌルは賭けた。

 そして賭けに勝った。


 また視界は少しぼやけるし、耳鳴りもひどい。地面に強く体を押し付けられたことでダメージも大きい。だがそれもポーションを飲めばいい。


 しかし、そんな動きが咄嗟にできるのは限られた人物だ。

 好奇心に引っ張られてしっかりと棍棒がマグマ漬けドラゴンに直撃する瞬間を見てしまったギャルズ三姉妹はのたうちまわることになる。

 ヌルは一瞬このまま放置してやろうかとも思ったが、その思いを振り払い回復ポーションをバシャバシャと顔面に振りかける。


「ふがっ、はなにっ」

「なに!?なにこれ!?」

「ぽーしょんの味がする~げほっ」  


 顔面に無造作に振りかけたことに、今までさんざんトラブルに巻き込んだ仕返しがなかったというとウソになる。今日も本来はアサイラムを見に来たはずなのに気づけばわけのわからない怪物から逃げる始末。

 それでも色んな思い出を分かちあった大切な友人たちでもあるので何とも言えない。彼女たちがいなかったら、もっと暗い青春を過ごしたとわかっているだけに。彼女たちが強引にでも明るい世界に手を引いてくれただけに、今がある。

 愛憎入り混じった感情に答えが出せないまま、ヌルは強引にギャルズ三姉妹を立たせた。


「ほら、逃げますよ。バブ師匠たちと合流を急ぎます」

「おぁ~頭がお星さま~」

「いぃぃぃぃ、おんぶしてぇ」

「ぬるママだっこぉ」

「しっかりして!ごねると私一人で逃げますからね!」


 なんなんだコイツら、と思いつつ糸を手に縛り付けて強引に引っ張っていくヌル。


「うぼぁ、ちょっと楽かもぉ」

「あたしらヌルちゃんのペットみたい、ウケる」

「わんわん。ヌルちゃん捨てないでね?」


「ふざけてると捨てますよほんとに!」


「「「いーやーだー」」」

 

 ホントにもう、と思いつつちゃんと付いてきているか振り返るヌル。その視線の先にはゆっくりと再生を始めたマグマ漬けドラゴンの巨体が。

 誰よりも近くにいたから、彼女には見えた。

 首の付け根より少し胴に近い位置。そこに目を潰さんばかりに発光する塊が見えた。地面の砂が熱で溶けて体に取り込まれていく。

 

 その光球の中にうっすらと口やら爪やら人とも爬虫類とも取れる生物のパーツが蠢いているのが見えた。その中に浮いていた巨大な人の眼球と目が合った時、ゾッと背筋に寒気が走りすぐに目を逸らした。同時に発狂の状態異常にレジストしたことを知らせるアナウンスが視界を走る。

 それだけでない。砕けた肉体がまた新たな分身となろうとしている。インチキも大概にしろ言いたくなる光景だ。


「「「いやーーーー!なに!?なんでーーー!?」」」


 それを見たヌルは本当にシャレにならないと判断。振り返るな、というと十中八九振り返るので何も言わずに金属性魔法で肉体を最大限強化。糸を引っ張りギャルズ三姉妹を引き釣りながら山を駆け上がっていくのであった。




「ALLFOって、どこを目指しているゲームなんですか…?」

「初期限定特典なんて明らかな呪物を最初にばら撒いたゲームだぞ。分かりきったつもりなら脚を掬われる」


 その光景は、私の知るALLFOの世界とかけ離れていた。

 もはや公式からも名指しされている時点でアサイラム統領は別枠扱いだったが、そうではないプレイヤー達であってもキノコ雲が上がるような規模の爆発を引き起こせてしまうというのか。


 アサイラム統領が過去にやった小規模流星群の雨より単純な破壊力では上。恐らく現環境において出せる最高火力の1つとも言うべき威力。

 それですら驚嘆なのに、その一撃が直撃したら6周目くらいのシナリオボスでも瀕死に持っていけそうなのに。ダメージを表す赤いポリゴン片一つなく、その巨体はゆっくりと再生を始めていた。

 しかしそれはダメージ0という事でもない。赤いポリゴン片は血の代替表現ではないかと検証勢は見解を出していた。実際首を掻き切った時と打撃によるダメージは総ダメージが同じでも首を切った方が派手にポリゴン片が散る。しかも首元から集中して。 

 

 そんな細かいこだわりを随所にちりばめているALLFOの中にある明確な異分子【初期限定特典】。

 明らかなパワーバランス崩壊を齎すソレ。それ以外はオンラインゲームとしてのバランスを上手く取ろうとしているのが分かるだけに殊更に目立つ。


 特典と言うなら、真っ当にプラス方向に強いならまだ分かる。

 けど初期限定特典は今まで出揃っている情報を見ても全てがPKを推奨するような性能をしている。

 まるで負の面を押し出すように。

 初期限定特典には何かALLFOの根底に関わる設定が深く絡んでいる事は検証などに興味がある人ほど理解しつつある。


 定期的にあるアンケートで初期限定特典への質問や苦情は多々あったはずだ。

 けれど、ALLFOは何故か頑なに、絶対に反応しない。まるでそんなものは無かったかのように。

 黒歴史だから無視した?ナーフをしないという宣言をしているから取り上げも出来ずに無視?

 らしくない。であればPKを奨励するような効果を別物に切り替えればいい。それができない製作陣ではないだろう。それならナーフにはならない。

 それとも月面サーバーの様な一部初期限定特典勢の様に根気よく一般プレイヤーに呼びかけ、教会側と交渉するまでこぎつけて街に入れてもらえるようにするのが正規ルートでも言うのか。


 回りくどすぎる。それはあまりに人の善性に頼り過ぎている。


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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 コアみたいなの、結構アンデッドくさいでしょうか? 少なくともマグマドラゴンの要素はなさそう
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