No.Ex 対米鯖第三≠五臨時偵察小隊 ③
ぬきたしアニメ化ってホントに大丈夫なんか………?
まあ一般紙で漫画版は出てるし大丈夫か
「さて……私の見立てではUADDは十中八九こちらに対アサイラムの支援をする様に要求してくる。教会関連の情報を開示する様にも騒ぐだろう。しかし改めて言うまでもないかもしれないが、私は教会関連の情報を開示する気はない」
生産組組合は今でこそ絶対的な日本の取りまとめの様な立ち位置にいるが、冷静に考えるとオンゲという秩序やモラルが現実よりもあやふやな世界でプレイヤーメイドの組織がここまで権力を持つことは異常だ。
では何が生産組組合を今の地位たらしめているのか。
答えはシンプル。
それは運営の実質的代理人である教会とギルドの二大組織と最も強い協力体制を築けている事に他ならない。その連携力は世界単位でも他の追随を許さない程のレベルだ。
ケツモチと言えば過言だが、生産組組合はプレイヤーメイドの組織でありながらバックに運営の実質的代理組織がいるのだ。
どんな悪質なプレイヤーですらも、この箱庭世界の神に近い存在である運営と事を構えようとしない。何せ神の機嫌を損ねればこの楽園から追放されかねないのだから。
日本では当たり前のように競馬場をメインに据えた拠点が誕生したが、あんな事は日本以外に起きてない。ロシアが部分的にカジノ特区を実現させたくらいで街ぐるみの単位だと競馬町は異質な存在なのだ。
それが生産組組合の影響力を端的に示している。
故にこそ世界の複数の有力な組織は生産組組合が如何に教会及びギルドという統治機構と協力関係を結ぶに至ったが知りたくて仕方がない。
それこそスパイを送り込んだりリアルマネーで買収してでもその情報が欲しい。
だが、この生命線の秘密は未だ明かされていない。
というか私も知らない。
恐らくここに居る面々でも知っているのは先生、先生の護衛として行動する抜刀斎さん、そして先生の代理でギルド側と会話をする事もあるカイチョーの3人だけであると私は見ている。
情報は漏らす気が無くとも漏れてしまうことがある。
なら最初から知らなければいい。
無知こそ最大の情報戦対策と言わんばかりのやり方だ。
古くから付き合いのある面々にすら話さない横暴なやり方を罷り通せるのは先生の手腕か、あるいはその方針に理解を示せる者だけが今日この日まで生き残っているだけなのか。
だからUADDが生産組組合に幾らちょっかいをかけようと知りたい情報はほぼ出てこない。先生が話す気は無いと宣言した時点で楽して後追いする道は絶望的なまでに絶たれている。
その生ける妖怪みたいなムーブを平気でする先生が、敢えて皆の注意を引いてから口にする言葉とは。
「ただ、全く協力しないのも外聞が悪い。なので私達は物資の供給でこれを援助とする。その物資を運ぶ輸送部隊の生産組組合側の責任者をミゴ君にしようと思う。ああ一つ補足を。この輸送はほぼ100%ノート君の手勢に襲われる。彼なら絶対にルートと期日を計算して補充路を断とうとする。なので逆に彼が予測していそうな日に運ぶ。そして負けていい。生産組組合が対アサイラム側としてUADDを支援したという実績は残しつつ、その物資が届かないことでUADDにメリットを与えさせないのが生産組組合にとってのベストアンサーだ。なんだったらそのまま物資を奪われれば遠回しにアサイラムを支援出来る」
一拍の間を置いての騒めき。
つまりこれはアサイラムと戦う機会を得るメンバーをある程度出すと言っているに等しい。
言っている内容が悪魔としか思えない事を今更気にする面々ではない。
…………もしかして、負けても良いようにアサイラムを日本の最前線に現れたように見せかけるのだろうか。
これなら物資運送の護衛チームが少数かつ本命ではない事の言い訳が出来る。むしろ日本の最前線に全戦力を置きたい所だがUADDがゴネるので仕方なく戦力を派遣したという恩の押し売りみたいな事もできてしまう。
恐らくここに至るまでの流れを先生とアサイラムの統領が打ち合わせして組み立てたのだろう。
先頭に立って華々しく動き周囲を扇動する若きトップと、それを後方から支援して組織をより使い易く飼い慣らす手腕に長けた裏のトップの二枚看板。
考えるだけで末恐ろしい。
現に方や世界でもトップの知名度を誇る悪役の統領。
方や日本という世界有数のサーバーを統べる組織の長。
この2人が同じ組織に居て連携して動いていたとしたら一体どんな事が出来るだろうか。
彼等に従い動けば確実に何かしらで歴史に爪痕を残せる。
その楽しさを知って、魅せられて。
だからここに居る面々は先生について来るのだろう。
そしてその二枚の傍らが離れ、今までとは違う戦力を形成しながら更に無法な強さを得つつある。
ゲームで楽しい瞬間とは。
それは積み上げた実力や戦略で圧倒的なまでに敵を轢き潰す瞬間と答える人も少なくない数いるだろう。
切磋琢磨出来る同レベルの対戦相手。これもまたゲームを楽しくしてくれる。一方的に常に勝つだけならただの作業だ。絶対最強が楽しいのはほんの最初だけなのだ。
実際、私には経験がある。とある非VR式の超高難易度系のゲームを遊んでいた時の事。戯れにMODを入れてデバッグモードの様なことを出来る様にした時、最初は中々に面白味もあった。
苦戦した数々の難敵の裏のデータを曝け出し、そこから逆算的に戦略を練り必要なアイテムを揃えて最適解を全力でぶつけて倒していく。過去の苦戦した敵を簡単に倒せた事への喜びには、暗い、という形容詞をつけるべきか。
されど直ぐに熱は冷めた。
当たり前の事を当たり前に成して、何が得られるというのか。
馬鹿馬鹿しい子供じみた欲求の解消方法に我事ながら呆れを覚え、好きだったゲームは私の愚かさの象徴に変わり果てて結局データごと全部消した。
きっとアレを楽しいと思い続けられるのは性根にどこか異常をきたしている。そう思ってしまった。
そう。私は歯応えのあるゲームが好きだ。難易度はいきなり狂気的なものを選ぶほどではないが、ハード以上を選ぶ。
当然ながら一般的なゲーマーが難しく知恵を捻らずとも挑み続ければやがて先に進める様に開発が調整したノーマルモードと違って、一般より上の実力を前提としたハードモードは多少なりとも技量や知恵を求められる。
聳え立つ壁。厳しい岩壁にフックを突き刺し登って、頂上に辿り着いた時の快感は他では代用し難い種類のモノだ。
格上。理不尽にも感じる圧倒的な暴力を悪辣な智慧を使って振るってくる存在。
それを倒そうと足掻いて居る時は苦しくも確かに楽しい。
データさえあれば神様だって殺せる。
果たしてこの言葉は誰の言葉だったか。
絶対的な悪として君臨しているアサイラム。
されど彼等は人間だ。
公式公認のチートを使っている疑惑があるとはいえ、とどのつまり運営が想定し得る範囲内で自分達を最大限強化して暴れているだけで本当の意味でのルール破りをしているわけではない。
自由に数値を入力し無敵のキャラを作ろうと思えば幾らでも作れる運営が作り出したNPCではなく、自分の使える手札を最大効率で運用して暴れてるだけの同じプレイヤーなのだ。
だったら、神様よりかは現実的に殺せる。
そう思考が帰結した時、なるほどと腑に落ちた。
何故ここにいるメンツがこんなにも楽しそうなのか。
自分達の先頭を走っていた一等頭のおかしい奴がチートにも近い最強キャラを容赦なく使用してさぁ遊ぼうと殴りかかってくるのだ。こんなにも面白い敵がいるだろうか。
ゲームの強敵達は結局突き詰めるなら最終的にプレイヤーに倒せる様に出来ている。これは批判ではない。むしろ倒せない敵をストーリーやギミックなど関係なく出す製作者はただのアホだ。
俺Tueeeeを自キャラにさせて、他人を使って自慰をやるなという話ですね。
けれどプレイヤーは違う。自分を意図して倒せる様になんてしない。むしろ全力で負けを潰しに来る存在。全員が主人公であり、PC1であり、モブでもあるオンラインゲームであるが故に成立する最高のシチュエーション。
この敵を倒せたらどんなに面白いだろう、ゲーマーならそう考えても不思議ではない。
そこでまた熱の入りかけた思考がふと止まる。
箇条書きの様に良いところを並べればまるで高尚なソレに聞こえるが、それこそオンラインゲームのPKなんて手前の自慰に他人を強引に巻き込む勝手な行動の代表格。少し当てられたのでしょうか、彼の演説に。
VR内の映像データは二次元で映し出されるものだけではない。カメラを自在に動かして好きに見えることも適うが、金さえかければその全てをデータに落とし込んで自分をその過去の舞台に立たせる事も出来る。
映像として見るだけでなく、実際その場にいたプレイヤーの1人の様に過去の映像から編まれた世界に立って直接聞く彼の異質さたるや。
悪ガキどもに手品の様に仕入れてきた上等な銃器を握らせ、その安全装置を外し引き金に指をかけさせる語りは。
あんなものを浴び続けたらマトモな人間でも道を踏み外す。
演説の力を侮る者は第二次世界大戦をよく勉強し直すべきだ。
演説で一国全体が狂気に走った歴史がその力を何よりも証明しているのだから。
ハイパーインフレーションはいいぞ
あとシュタゲがsteamで300円以下だからぜひとも買ってほしい
あとうちの読者ならThisコミュニケーションは絶対に好きだと思うので読んで♡




