No.Ex 戦闘講義Ⅺ
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(´∀` ) ) ) ゲリラサンタだオラぁ!!
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つまり、ALLFOの性質における『極悪』とは。
初期限定特典のせいでノート達は感覚が麻痺しがちだが、まず極悪になろうとしても滅多になれない。
リアルの日本のソレに照らし合わせれば、BANが死刑宣告なら、極悪は無期懲役。
因みに無期懲役と聞くと一生刑務所から出られないように聞こえるが、実際は服役中の態度などで刑務所から出れることもある。そこも極悪は本来の無期懲役に近い。
ただ、そこに至るのが難しい。
日本で無期懲役刑になりがちなのは複数の殺人を行なった時だが、この世界では殺人の価値が軽い。
もちろん復活するプレイヤー相手ではなく悪くもなんともない知性のあるNPC相手に相手に殺人をやれば罪の重さは重いが、それでも大量殺戮なんてやらかさない限り一気に極悪まで行くことはない。
では言動などは。例えば、プレイヤーのリアルの情報を意図的に流布する。これは悪い事には悪いが、ゲーム的に悪いというよりは普通に規約違反だ。BAN対象になる。
ゲーム的な意味で極悪まで到達するまで悪いことをするのは案外難しいのだ。
それこそ、極悪とは本来取り返しのつかない追放刑に直結する状態なのだから。
この世界に於ける追放処分の重さは非常に重い。なんせ教会系列の全てのシティから追放されるのだ。いや地下帝国みたいな街だってあるし、大丈夫じゃない?と思うかもしれないだろう。しかしギルドなどの公的な施設は全てシティにしかない。教会もシティにしかない。ゲームの基本的な要素の大部分を占める場所から追放されるペナルティは非常に重いのだ。
地下帝国における教会的な役割は祭祀であるヤーキッマ達が担っているが、非営利団体の教会と違って祭祀は究極の個人経営だ。祭祀個人から嫌われたら何もしてもらえない。
一方で教会は多少悪いことをしたプレイヤーだろうが、神官NPCから個人的に嫌われようが、それは別としてちゃんとサービスの利用を認めてくれている。
つまり非教会都市に逃げ込んだとしても、祭祀個人の好感度を上げないといよいよゲーム的な要素を享受する機会が大きく減るということだ。
実際にアメリカでの抗争に終止符を打てたのは祭祀であるルイゼ・ドーヘルが北西勢力を見放したから、厳密にはそうする様にノートが祭祀の説得することに成功したからだ。それほどまでに、祭祀は一つのエリアの実質的なゲームマスターに近い存在でありながら、私情や独自の判断で行動をする。
加えて、非教会都市のNPC達の好感度は、性質に左右されない代わりにその長である祭祀の影響を強く受ける。
地下帝国民がノート達に全幅の信頼を置いているのは、無論今までの成果が認められているというのもあるが、祭祀であるヤーキッマとテルットゥの好感度が極めて高いからだ。祭祀が信頼しているからこそ、地下帝国民も憂いなくノート達を応援できる。
祭祀個人の好感度で大きく扱いが左右されるからこそ、逆にプラスに傾ければ爆弾の増産に協力してもらったり、ほかのプレイヤーに見つからないように拠点であるミニホームを祭祀の屋敷の地下に隠してもらうなどというとんでもない無茶すら受理される。
今後プレイヤーたちが地下帝国にたどり着いても、地下帝国の民はノート達の肩を持つだろう。
プレイヤー間の争いなど極論地下帝国民にとってはどうでもいいことなのだ。
とどのつまり、性質に左右されないという事は、逆にプレイヤーの素の人から好かれる力が問われるという事でもある。
そこでノート達のような特例でもないのに極悪判定を受けるようなレベルのプレイヤーが祭祀から果たして好かれるだろうか。
故にこそ、ALLFOの性質システムは一定のレベルよりもどちらかに振り切ろうとするとキャラクターではなく時にプレイヤー本人の善悪を問うてくる。
中立からどちらかに傾けることができても、その先まで到達するのは非常に難しいのだ。
だからこそ、極善と極悪に至るのはシステム上極めて困難なのだ。
本来カルマ値など「キャラクター」の善悪を問うゲーム的なシステムを、「キャラクター」だけでなく「プレイヤー」本人の善悪も一緒に問うシステムにしたからこそ、ALLFOの性質システムには従来のゲームにはなかった複雑さがあるのだ。別々で本来計測すべきものを一緒くたにして測ったら、どんな計算も狂ってしまうのは当たり前である。
その点でいえば、初期限定特典を取得したプレイヤーはある意味、ゲームとしての「キャラクター」の性質が極悪に傾いているといえる。そこにプレイヤー個人の善悪は介在しない。ネオンなんて性格だけで見れば確実に善寄りに該当するし、ケバプなどネオン以上にゲームの世界でもPKなどを避けているために善判定でもいいはずなのに、性質はずっと極悪で固定されている。
「(悪魔もそうだってのか?)」
キャラクター的に「悪」だから、悪。そこに悪魔個人の人格は関係ないのだとしたら。
例えば、バルバリッチャ達にとって、悪魔というのはイコール悪人であるという意味ではなく、あくまで『悪魔勢力』という括りでしかないのだとしたら。
運動会の赤組、白組のように。私は赤組だよ、と宣言しているだけなら?
「(いや、待てよ)」
ザガンは『悪魔』という定義は非常に雑なのだと言った。
人間とカビを指さして、同じ『生物』と括るぐらい雑なまとめ方だと。
「(だとしたら、どこか基準だ?)」
そこでノートはハッとする。自分が思索に脳を傾け始めたとき思ったことを。
―――――――――そもそも悪魔ってなんなの?地獄在住の方々?
「(出身地?)」
例えば、日本出身の選手がオリンピックで「日本代表です」と名乗るようなノリだとしたら?
出身と性格はイコールでつながらないように見えて、国ごとに大まかな性格の違いはある。
地獄生まれ、あるいは地獄関係の生物を『悪魔』と定義としているなら?
地獄出身は性格が悪いというかヤンキー寄りな感じみたいな傾向がある。だから悪魔という言葉を当てはめたとしたら?
日本人は人種の傾向的におとなしく勤勉で真面目という評価を受けがちだ。しかしそれはあくまで傾向なだけだ。ALLFOの悪魔もそのノリに近い分け方なのではないか。
だとすれば。
であれば文字化け共は。
【ワールドシナ「いい加減に――――」
そこまでノートの思考が至った時、再び起きたアナウンスに割り込むようにいつの間にか眼前にバルバリッチャが居た。
「っ!?」
詠唱が間に合わない。
死霊を選択している場合も、差し込む隙間もない。
ザガンたちの魔法で守られている。だが、バルバリッチャの握り拳の纏う漆黒の稲妻を見てノートは本能的にこれは無理だと悟った。バルバリッチャソードに近い雰囲気。全てを破壊するような通常の物とは異なる気配。
「――――止めよ」
繰り出される拳。
反応もできないレベルのスピードで行われた攻撃なのに、バルバリッチャの警告だけはハッキリと聞き取れた。
次の瞬間、空間が砕けるような異様な轟音が響くと同時にノートの視界は黒に呑まれ、視界がグンと一瞬で切り替わり、気づけば壁に叩きつけられていた。
『『無事ですか?マスター』』
「ありがとう。助かった」
だが、ダメージはほとんど受けていない。バルバリッチャがザガンたちの方に殴り飛ばした為にザガンたちがカットインしてノートを守っていたのだ。
同時に眼前に広がった黒い壁が砕けてサラサラと砂に戻りノートのローブの中に戻っていった。
「(セトがガードしたのか?)」
アメリカで大暴れした文字化けに受けた呪い。
その呪いは意思を持っていて、遂にはノートを能動的に守った。
バルバリッチャの追撃はない。
拳から稲妻を散らし、深紅の瞳でノートを見ていた。
今までからかったりしても本気で怒りをにじませるようなことのなかったバルバリッチャ。
そのバルバリッチャの目に怒りが微かにある様にノートは見えた。
「忠告したぞ、我は」
しかしそれは自分の言う事を聞かない子供を叱るというより、その身を案じるような声音で。
まだ早い。バルバリッチャはもう一度そう言った。
「まずは自分を如何に強くするか。それだけを考えておればいい。道を逸れるな。修練は終わりだ」
[Error:決闘が強制終了しました]
バルバリッチャの唐突な打ち切り宣言。
だが伝えるべきことは既に言ったと言わんばかりにバルバリッチャは闘技場からそのまま出て行った。
同時に歪む空間。罅が入り、元の闘技場に戻っている。
いつの間にか通常の空間から隔離されていたのだろう。
ザガンたちの姿も消えていた。
皆は先ほどまでの戦闘にまるで気づいた様子がなかった。
「何だったのかしら?」
「ノート兄さん、何かした?」
ヌコォも鎌鼬も今何が起きたのかよくわからなかったのだろう。
釈然としない空気でノートに問うてくる。
「ま、難しく考えんなってことだな。基礎だけできてたらあとは得意分野を伸ばせってことなんだろう」
絶対にそれだけのやり取りではなかったことはヌコォも鎌鼬もわかっている。
ノートの真意を測る様にジッと目を見ている。
「わかった。そう言うことにする」
「貴方の言葉、信じるわよ」
そして敢えてノートが話さない、あるいは話せないのだと理解したヌコォ達は座り込んだノートに手を貸して立たせる。
「まあ確かに、ちょっと難しいこと最近考えすぎてたかもな」
ゲームなんだから、もっと好きにやればいい。
ノートはバルバリッチャにそう言われた気がした。
「考えは纏まったかしら?」
「大体は」
考えることは多いが、自分を信頼して付いてきてくれる仲間がいる。
自分一人が先走っても意味がない。
だってオンラインゲームは皆で遊ぶものだから。
ノートはその大事な事を改めて思い出し、少しスッキリした表情を浮かべるのだった。
積みゲー消化でストックが死んでる
BioShockリマスターたのしい




