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No.Ex 戦闘講義Ⅵ





―――――――――――――――――――――――――――――――――

PL: ▇▇▇▇▇▇より決闘申請がありました

承諾しますか?

Yes/No

―――――――――――――――――――――――――――――――――

[Error:不正規のシステム干渉が発生しました]

[Warning:システム破損]

【決闘申請を受理しました】

【特殊ルールの採用】

『この決闘は強制です』


 決闘申請のシステムメッセージ。

 それを破壊するアラート。

 ノート達がボタンを押すよりも先に勝手に決闘申請が受理される。


「バルちゃんさぁ、割とシステムにも手を出せる力があるって隠す気無くなってきてるでしょ」


「クハハハハハハ、何を今更」


 尊大に笑うバルバリッチャ。

 そう。バルバリッチャがシステムへ干渉できる事はだいぶ前から知っていた。バルバリッチャの力を借りた時にバルバリッチャソード、当時はナイフだったそれを鑑定しようとした時、ノートのメニュー画面にバルバリッチャは直接介入し警告文を送りつけてきていた。

 

 メニュー画面とは、言わばゲームという非現実とリアルの境界線である。

 どんなに電子の世界がリアルに近くとも、メニュー画面を表示すればこの世界がゲームであると一瞬でわかる。


 他のプレイヤーが介入できない、どんなゲームにも存在する絶対的なシステム。

 ましてやゲームのキャラにはメニュー画面を認識する事すらできない。

 襲われればプレイヤーが即死するしかないホラーゲームの怪物に追われている途中だろうが、銃弾飛び交う戦場だろうが、メニュー画面を開けばそこには現実がある。言わば現実との窓口とも言える。


 そのシステムにバルバリッチャは介入した。

 つまりバルバリッチャは『メニュー画面』の存在を認識している。いや認識しているどころか、介入する事が出来る。


 しかし不思議な話ではない。

 ツッキー、その本体であるカオナシもノート達のリアルに言及した。

 この世界の一部のNPCは明確にプレイヤーのリアルを認識している。

 

 教会勢力もそうだ。

 プレイヤー達は異界より召喚される『使徒』である。

 あの様な大規模な召喚をあれだけ大きな組織が行き当たりばったりでするだろうか。

 するはずがない。


 あまりにもリアルなNPC達。

 そのNPC達にロールプレイなんか知った事かと自分のリアルの話をしないプレイヤーが誰もいないなんて事はあり得るのか。

 この世界はただのゲームで、お前はただのゲームのキャラだと空気の読めない発言をNPC相手にするプレイヤーが0なわけがない。


 なのにNPC達に大きな混乱が起きていないのは何故か。

 それはNPC達もある程度プレイヤーがどの様な存在か知っていると仮定すると、ある程説明がいく。


 天使側がプレイヤーはどんな存在なのか把握していてるのに、その対抗勢力である悪魔がプレイヤーの存在に対して無知であると考えるのは少し頭がおめでた過ぎる。


 そこでノートの思考が別の事象とパッと結びついた。


「システム権限……召喚…………プレイヤーも悪魔も同じ…………?」

 

 プレイヤーは他の世界、つまりリアルから召喚されている、という事になっている。

 では悪魔は?

 悪魔も『他の世界から召喚されて現れる』という流れは同じだ。


 まるでそれは、プレイヤーの様でもある。


「(……名前は空欄に出来ない)」

 

 ALLFOはスタート時、自分で色々な事を決められる。

 職業を一つも選ばずに無職で始めることだってできる。

 しかし、プレイヤーの名前だけは絶対に記入する必要がある。無記名は受理されない。


 一方で悪魔は召喚されただけではこの世界に居座れない。

 召喚者と契約を行い、“名前を与えられて”初めてこの世界に完全に出現する。

 悪魔の中でも魔王が特別なのは、名前が元々あるからだ。


「(だからなのか?)」

 

 悪魔が大悪魔に絶対服従なのは。

 バルバリッチャは確かに強くなった。しかし完全体なのかと考えるとノート的には首を捻る。おそらく単純な強さのスペックだけを言うなら、今の魔王達の方が強い。エンドコンテンツは伊達ではない。

 強くなれどまだ死霊の枠に入っているうちは完全復活ではないのだ。


 なのにアグラットもザガンもバルバリッチャに決して逆らわないのは。

 悪魔と大悪魔が決定的に違うと言う根拠は。


「(システム権限、なのか?)」


 ゲームの中でどれだけ鍛えて俺Tueeeee!しても、ラスボスをワンパン撃破できる様になっても、システムからキャラクターデリートをされただけでどんな無敵のキャラも一瞬で消える。

 システムとはつまり世界の法則に近い。勝てる勝てないとかの次元では無いのだ。

 技術と身体を鍛えてより速く走ることを目指したり、ボールを遠くへ投げられるようになる事を目指す事はあっても、重力に逆らって肉体だけで空を飛ぶ事を目指す人間はいない。


 大悪魔が悪魔に対してシステム的介入(事象法則操作)が可能な存在なのだとしたら、悪魔がどれほど強かろうが関係ないのだ。

 

 アグラットを召喚した際、バルバリッチャは言った。


――――――――死者として地獄に戻った悪魔は、さて、どうなるのだろうな?今まで貴様はたいそう死者どもを甚振ってきただろう。だが死者になれば悪魔はその力を失い身分も剥奪される。今まで貴様がいたぶってきた死者ども同様、自分がいたぶられるのはさぞ愉快だろうな?


 悪魔は殺しても死なない。

 地獄に死者として戻るだけ。

 冷静に考えると「死者として戻る」と言うのは意味不明だが、その文言はつまり悪魔にとって「死」が生命の終わりを意味していない事を示している。

 まるで“死んでも蘇るプレイヤーの様に”。


「(悪魔もシステム上プレイヤーと同じ括りだってのか?)」


 例えば、そう。

 先程のバルバリッチャの文言をゲーム的に言い換えるなら。


「(悪魔にとってこの世界での死は、キャラクターリセットくらう感じなのか?)」


 所謂他のゲームで言うところの「ハードコア」。

 死んだら1から全部やり直し。

 それに耐えられるゲーマーはそう多くない。

 例え蘇るとしても。


「(ん?だったら天使はどうなるんだ?)」


 ゲームの展開の都合上、ノートは無意識で天使を運営側と見ていた。

 実際プレイヤーを召喚し、管理しているのは教会勢力だ。


 しかし悪魔勢がプレイヤーに近い立ち位置なら、天使も同じでないと違和感がある。

 されど天使がもし運営に近い立ち位置なら、厄介なプレイヤーである悪魔達を何故追放しないのか。


「(恐らく、しないんじゃなくて、出来ない)」

 

 本当に運営としての権限があるなら、ノート達のプレイヤーネームを晒せばいい。

 なのにバウンティハンターギルドで表示される賞金首の名前はプライバシーモードにしていれば[NO NAME]表示のままで。

 あれだけ何度もノートが暴れても、教会はあくまでゲーム的にノートを排除しようとしてきた。


 違和感はあった。

 盗賊団をまとめて討伐した時の報酬はどこから支払われているのか。

 文字化けを倒した時の莫大なMONは一体誰が支払ったのか。

 文字化けからのドロップにも思えるが、この世界の生物はMONを直接ドロップしない。

 では一体誰が?

 それこそALLFO運営がその役割、のはずなのだが最初のサービス開始時、挨拶は天使の姿をした運営チームが行なっていた。

 では運営側が天使チームなら、誰が自分達に報酬を渡しているのか。明確に悪魔側に付いているノートにMONを渡すなど利敵行為でしかない。


「(…………GMは他に存在する?)」


 天使でもない。ゲーム的な運営でもない。

 悪魔でもない。

 この世界を運営する完全な中立の第三者(・・・・・・・・・)


【ワールドシナリオΩが進行しました】


 そのアナウンスは唐突に起きた。

天使が本当にGMやってるなら慈悲深すぎるか無能か他に狙いがあるかの3択しかねぇんだよなぁ!

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― 新着の感想 ―
最初読んだ時は気づかなかったけど、「バルバリッチャ」という名前も誰かから名付けられた可能性あるな。聖女の場合、教会側から名前をつけられることで聖女に転職できる、つまり聖女という職業が力の源。祭祀の場合…
つまり魔王はプレイヤーで、悪魔はNPC、大悪魔は運営? いや、でもそれにしてはバルちゃん自由すぎるな 教会の天使や運営は敵対的なノート達にもゲーム的な干渉しかしてきてないイメージあるし…ってあれ? よ…
((^ω^≡^ω<ギャアアアアアアア(突然の設定開示により許容量を超えた脳が破壊) オレコレスキ
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