No.Ex 戦闘講義Ⅲ
レビューがあればゲリラするって約束だもんね
レビューありがとうございますm(_ _)m
ストック?知らんな(白目)
丁寧にスピリタスがかみ砕いた説明を聞いてエロマもツナも納得がいったようだ。
ツナははぇ~と感心したような顔をする。
一方、エロマは得心が言ったような顔をしたがそれがすぐに疑問の表情になる。
「結局、何をすればいいんだ?と私は考えてしまったのだが」
そう。今更カウンターについて懇切丁寧に説明されても、戦闘能力の向上に繋がるのか、エロマは与えられた知識をどう生かせば良いのかわかりかねた。
「要するにだ、カウンターは攻撃、防御、回避をそれぞれきっちりできるようになったらヤレって事だなっ。本来別々にやるべきことを一まとめにしてやるってことはどこかに無理が生まれている。攻撃、守備、回避は理想を言うなら安全マージンを常に確保しながらやりてぇ。つうのもギリギリで動いてると想定外の事が起きた時に対応が間に合わなくなる。カウンターは攻撃、守備、回避の限界を攻めて成立する。失敗すりゃ取り返しがつかんっ」
カウンターというのは、相手の攻撃が想定通りに行われて初めて成立する。つまり読み違えた瞬間それは敗北の火種になる。
「そんでもって、カウンターによるダメージと普通の攻撃のダメージはあんまり変わんねぇのに、リスクは圧倒的にカウンターの方が高い。だからオレはカウンターを横着って言ってんだっ」
極論、攻撃はしっかり相手の姿勢を崩してから確実に急所に入れられればいいのだ。
スピリタスからすればカウンターとは相手の姿勢がきっちり崩れる前から実行するギャンブルであり、時短になる以外のメリットを感じない。どちらかと言えば魅せプにも近い芸当なのだ。
「まあスピリタスが言いにくい部分をハッキリ言うとだな、エロマやツナはアサイラムメンバーを参考にするせいでどうにも無意識にカウンターを狙う傾向が最近出てきた。新顔のGingerに対抗心が沸くのはわかるが、あんまり参考にするな。ただ、最終目標の一つとしておく分には構わない。今はやるなってだけで、俺は2人にカウンター攻撃ができないとは言っていない。それを踏まえてこっからは応用だ。攻撃に対してカウンターで返すのは今までの通り。ではカウンターされた方がそれを読んでさらにカウンターを返したら?更に更にカウンターをカウンターで返そうとしたら?」
あまりにも机上の空論めいた仮定。
されど全く考えていなかった方向からの質問にツナの頭のCPUは一瞬で100近くまで上がる。
「カウンターにカウンターを……それにカウンター、カウンター?カウン、ター…?」
脳内でなんとかイメージしようとしているのだろう。
エロマも極論系の疑問を投げられているとはわかりつつもついつい考え込む。
「はい。ここでその滅多にない状況を収めた貴重な映像があるのでスローモーションで見てみよう。グレゴリ」
『( ̄▽ ̄)らじゃらじゃ!』
ノートの一言で唐突にノートのすぐ近くに出現するグレゴリ。
グレゴリが能力を使い、ノートの撮影した映像を大画面で描く。
そこに映っていたのは模擬専用の木刀を互いに装備したユリンとGingerだった。
「まずGingerがフェイントを入れながら詰め。切り上げ、突き、どっちも狙える動きだな」
対してユリンが前に出していた右足をさらに半歩先に。変則的回避からカウンター。あるいは足払いか。
このまま突っ込むと面倒な二択にぶつかると察したGingerは前に出てきた足を刈り取るべく下段に刀を動かす。
というフェイント。
ユリンのすり足がフェイントを見てわずかに速度を落とす。フェイントにかかった。否、足に込める力が上がっている。ステップにつなげる気だ。
突っ込まれる。
下段から木刀を少し傾け切り上げ払い狙い。
同時にユリンも木刀を傾け斜め切り上げ、と見せかけあえてステップのチャンスを見送りリズムをずらす。
互いのフェイントとカウンター狙い、カウンターへのカウンター狙いの応酬。
ノートに行動を分析されて説明されているGinger本人ですらも「すごい面倒なこと考えながらこいつら戦ってるなー」と思う高速思考の応酬。Gingerのそれはもはや直感的に行われてるため、戦闘中に自分が何を考えていたかなどあまり覚えていない。例えばボールを投げるとして、では筋肉の動きからボールを投げるプロセスを一々考えて投げている人などいるか。いないのだ。プロとはいわば、理性的に考えずにできる行動の範囲が広い人物の事を指す。
たった1つ。最初の一撃目でこれだけ複雑なやり取りがある。ではこのカウンター合戦の終着点は。
ガツン。ぶつかり合う木刀。
お互いに攻撃のカードを選びなおし続けた結果時間切れになり、攻撃と攻撃のカードがぶつかって相殺された。
「このように、同等の才覚を持つ非常に優れた者達がカウンターを狙いだすとこうして不発する。お互いがお互いのカウンターを破る術を知っているからこそ難しい。しかしこれがツナ達相手なら?」
相手の攻撃に対してカウンターを選択した際、一部の人種はカウンター返しを選択出来る。もしそれに対応できなければただただ相手に隙を与えただけになってしまう。
「カウンターは行動の安全マージンを大きく削る選択肢だ。カウンターする事を読まれたら窮地に陥るのは自分だ。そもそも、ツナとエロマのビルドならカウンターを狙いに行くメリットなんてほぼほぼないからな」
瞬間最大火力ならトップのツナと、首を斬られても耐える生命力を持つエロマなら、変にカウンターを狙うより回避や防御にしっかり専念した方がいい。
ノートはハッキリと結論を伝える。
そこでピッとツナが手を勢いよく挙げた。
どうぞ、とノートが先生よろしく発言を促すとツナは純粋な瞳で問いかける。
「カウンターは難すくて危険ってわがってらばって、なすてスピ姉さんはカウンターするの?」
子供の感性を持ちつけるが故のストレートな疑問。
スピリタスはどう答えるべきか言葉を頭の中で組み立てていたが、ノートが先に直接的な回答とは別の方向から回答する。
「それはだなツナ、近接格闘がカウンターに向いているからなんだ。格闘の最大の利点は一つの行動から次の行動に移るまでの感覚が極めて短い事にある。実際にやってみよう」
ノートはツナを立たせて自分の木刀を立たせる。ツナの正面には盾を構えたメギドが召喚された。
「ではツナ。木刀を使ってメギドを2回出来る限り速く攻撃してくれ」
ノートが何を教えようとしているかまだ理解はできていないが、ツナは言われた通り最初に突きを入れ、盾で弾かれた反動で木刀を戻し、今度は振りかぶって斬り払い。盾でまた弾かれる。
剣術を専門的に納めたことがない為素人らしさはあるが、足腰の動きや力の使い方にはそこらの素人では逆立ちしても敵わないセンスを感じさせる動きだ。
「じゃあツナ。今度は武器を置いてもう少しメギドに近づこう。そんでボクシングの構えをしてくれ。そう。そんで2回出来る限り速く攻撃してくれ」
ツナは言われるがままに盾を殴る。ボクシングでは基本的なワンツーパンチ。左、右とシンプルなジャブを打つ。基本的な動きを知らない初心者でも簡単に出来る攻撃だ。
「2回攻撃するのにどっちの方が速かった?」
「パンチ!」
「だな。じゃあ武器をもって回避するのと何も持たずに回避するの、どっちが楽?」
「なんも持ってね方!」
今までの質問に対してシンプルな問いにツナは元気よく回答する。
「だよな。カウンターというのは安全マージンを削る選択肢だと説明したが、格闘ってのは武器を持ってない分元々マージンが大きい。カウンターは基本的に攻撃と防御、あるいは回避を一括にして行われる攻撃だが、格闘は武装状態に対して防御から攻撃、回避から攻撃、攻撃から攻撃へと次の選択肢を選ぶまでの間隔をかなり短く出来る。その選択肢を選ぶ時間を極限まで削っていくと…………?」




