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No.Ex 戦闘講義Ⅱ

5年あっためたシャンフロを遂に読み始めた

好き過ぎて一気読みしたくて5年待ったぜオレはヨォ………

というゲリラ



「もう一回、ゆっくりやんぞ。ノート、今度は」


「OK、ばっちこい」 


 どんな心変わりのをしたのか、いつの間にかトン2とGingerも膝をお行儀よく抱えて生徒たちの少し後ろで体育座りをしている。 

 一見真面目に見えるが2人の性格的に話を聞くならもっと楽な座り方をするはずだ。妙に真面目ぶった顔をしているのも気になる。どうにも悪ふざけをしているようにしか思えない。


 割とあっちへふらふらこっちへふらふらと生粋の一匹狼気質の強いGingerだが、最終的にトン2に懐くことで落ち着いた。

 二人とも自由人気質で本質的には一匹狼なところが合ったのだろう。

 また、自分より弱い奴の言うことは聞かないGingerだが、トン2は同系統の戦闘スタイルでなおかつ明確な格上だ。上位互換と言っても過言ではない。

 一番の決め手は人には理解できない共感覚を2人とも有していることだろう。

 人は同じ苦労をしてきた人に強い共感を抱く。

 トン2とGingerが一匹狼気質のは、それが楽というのもあるが、一番の理由は人との接触そのものが強いストレスになりがちだからだ。表層の言動と裏の感情の解離を見抜いてしまう人間たちには、嘘にまみれた社会は生きにくいのだ。その点、Gingerはトン2と近い力があるので一緒にいてストレスがない。


 スピリタスにとって少し意外だったのは、懐かれたトン2もなんだかんだGingerを可愛がっていることだった。現に一緒に悪ふざけをしている時点で珍しい。役に立たなかったがトン2がアシスタント枠にいたのもGingerのためだったのだろう。

 しかしこれはトン2をよく理解しているノートからすると意外でもなかった。むしろ落ち着くところに落ち着いたとみている。

 

 トン2は無能が大嫌いだが、逆にトップクラスの才能を持つ人間は大好きだ。

 トン2がノートに接触するきっかけも、元をたどればトン2がユリンの才能に目をつけて粘着気味に絡み始めたことを端とする。実力はユリンと同等で自分の遊び相手になれる時点でトン2からのGingerへの好感度は高い。

 また、トン2は常人とはかけ離れた思考回路や価値観を有しているが、自分を好いてきた人を足蹴にするほど変な性格はしていない。無論、普段表舞台に出る時にかぶっている猫を好いてくるような相手はどうでもいいが、素の自分を見て尚好いてくる人物は非常に少ない。というより、年下からここまで真っ直ぐに好かれるのはトン2にとっては初めての経験だった。

 これでいてトン2は長女なので年下の面倒を見るのも慣れている。トン2からすれば年の離れた新しい妹ができたようでGingerは可愛いのだ。血のつながった弟と妹からも異質な存在として敬遠されているトン2からすると、実際の兄弟姉妹よりも似ている点が多いGingerは余計に可愛がりたくもなる。


 二人でいると悪ノリすると察したスピリタスはトン2達を無視し、改めてノートに向き直る。

 スピリタスがすべてを言わずとも何がやりたいか察したノートは先ほどより攻撃に重視を置いた構えをしている。


 スピリタスは今度はゆっくりと切りかかる。

 ノートは盾受けせず、突きでカウンターをとる動きを行う。ノートはスピリタスに当てる寸前で剣を止めた。


「これが強引にカウンターに狙った時の悪い例だな」 


 ノートはがら空きの腹に攻撃を当てられる状況になっているが、同時にスピリタスの木刀がノートの首に据えられている。


「リアルでいえば、これはほぼ相打ちになる。ただしALLFOの人体はリアルとは違う。オレは腹を掻っ捌かれても生き残るかもしれねぇが、首を落とされたらどんなにランクが高くても即死する」

 

 そこまで説明してスピリタスは構えを解く。


「近接戦ってのはな、あー、しっくりくる説明とは言えねぇが、基本は時間制限付きの後出しじゃんけんなんだ」


 その言葉にイメージが追い付かなかったのか、ツナとエロマはキョトンとする。


「カードゲームって言った方がわかりやすいかもな。スピリタス、ゆっくりめでいいから自由に攻撃してみてくれ」


 ここでノートが説明を引き継ぐ。

 上手く自分の伝えたいことを言語化することを託したスピリタスは、ノートの指示通りノートにゆっくり攻撃を開始する。


 まずは今まで通り上段の振り下ろし。

 それに対し、ノートは上段のガードをする。


「俺たちの選択できる行動をカードゲームの手札みたいに考えてみよう。まず、スピリタスは『上段攻撃』のカードを出した。それに対して、俺は上段攻撃をガードできる『上段守備』のカードを出した。これで攻撃と守備が相殺され、俺は攻撃を受けずに済んだ」


 続いて今度は中段払い。それを盾を側面に構えてノートはガードする。


「『中段攻撃』には、今度は『中段守備』を選んだ。今回も攻撃と守備が相殺されて俺は生き延びた。問題は、今はゆっくりやってるから俺は色々な種類の攻撃に対して正しい守備のカードを選べているが、実際の攻撃は守備側が正しいカードを選ぶまで待ってくれないってことだ。スピリタスが言ってた時間制限ってのはこれの事を言っている。スピリタス、今度は少しずつ速度を上げながら攻撃してくれ」 


 ノートのオーダーに合わせてスピリタスは攻撃の速度を徐々に上げる。

 上段、中段、下段。木刀だけでなく掌底や蹴りなど格闘攻撃もミックスする。

 ゆっくりのうちはノートも余裕をもってガードできているが、スピリタスが速度を上げ始めると少しずつ防御が乱れ始める。

 単純な速度と筋力で大きく劣る後衛職が純粋なプレイヤースキルだけスピリタスの攻撃を凌いでいるだけでも本来は感心すべきなのだが、スピリタスのギアはまだ上がる。


 攻撃の間隔が狭くなり、速度に引っ張られて振るわれる力も強くなる。いよいよノートは縮こまるような姿勢で受けに徹し始めるが、遂にノートの防御が追い付かなくなりスピリタスのトップスピードの突きがバランスを崩してがら空きになったノートの右肩の前で寸止めされる。


「こういう感じで、相手の攻撃のカードを選ぶスピードに追い付けなくなると防御側はダメージを受ける。今回は俺は防御だけ、スピリタスは攻撃を選び続けたが、実際の戦闘だと俺にも攻撃のカードを選ぶ選択肢がある。ただ、さっき俺が強引にカウンターを選んだ時のように、相手が先に攻撃のカードを出そうとしているのに、タイミングを考えずに同じく攻撃のカードを出せば?」 

 

「負けでまる…」

 

「正解だツナ」


 正解といわれたが、ツナの表情は浮かない。


「そうなるど、最初さ防御すた方負げでまるってごど?」

 

「実際だと、防御する方もただ攻撃を受けるだけじゃなくて、攻撃を流して攻撃した方のバランスを崩したり、回避したりフェイントを入れたりって選択ができる。そうやって相手の隙を狙って攻撃を仕掛ければ攻撃のカードを出し合っても一方的に負けない。リアルではって注釈がつくけどな。ALLFOだと防御時にパリィして相手に強引に隙を作らせることもできるな」


「ここでカウンターの話に戻んぜっ。ノートが説明したように、本来攻撃と防御はお互いのタイミングをずらし合って生み出された隙に攻撃を与えた方が勝つようになっている。じゃあカウンターって何なんだっていやぁ、それは攻撃と防御、あるいは回避を一体にした行動って解釈ができる。例えばだ、さっきノートが強引に攻撃を選択したときは不利な相打ちになっちまってたよな?だったら、さっきの振り下ろしを回避しながさっきの攻撃ができたら?それは『カウンター』と言える。つまり回避と攻撃をセットでやってるわけだなっ」


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― 新着の感想 ―
自己採点:ごく1部正解? シャンフロそこまでためられたら読む時のカタルシスエグそうですね。
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 ワイも貯めているやつ消化しないと 色々 ふむ、攻撃と回避一緒にできるのはアドだと思うが、 なんで横着なんだろうか?
相手にやり返せる距離に入ったまま躱してやり返す……たしかに2倍の行動を同じ時間で取るっていうと横着に見える
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