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No.Ex 女帝と狂女戦士と▇▇▇とⅡ

このご時世にまたダクソを1からやってキャッキャしてるのは私です


 

「貴方は致命的な思い違いをずっとずっとしてる。才能という点で見れば貴方の持つ才能は彼から足切りを食うようなレベルではない。そもそも才能はあくまで判断材料の一要素だけ。彼が周囲に置く女を才能だけで選んでるとでも?」


 才能。

 言葉にすれば簡単な事だが、才能の方向は多岐にわたる。

 例えば「容姿の良さ」も才能の一つだ。

 反射神経などと同じくこの世に生を受けた段階で性能差が現れる。

 そして反射神経などの才能は容姿の様に視覚的に捉えられない分わかりにくいが、加齢と共に容姿の良さと同様に劣化する。


 では女の容姿が悪くなったから、才能がピークよりも陰り始めたら女を捨てるのか?

 答えはNOだ。


 勿論才能は惚れるキッカケにはなれど、あくまでキッカケに過ぎない。ゴールテープを切るにはスタートダッシュだけを上手くやればいいという話ではない。


「じゃあ何でアサネちゃんを周囲に置くと決めたのか考えたことある?」


 まだ想い人の思考を理解できてないキアラの様子を見て女帝は別の角度で攻め始める。

 

 ネオンの才能は「記憶力」と「努力」。

 キアラはその様に認識していた。

 されどそれが答えには思えなかった。


「彼の好んでいる才能の方向からすると少し型落ちする感じした?」


 まるで心を読んだような女帝の笑みにキアラが微かに目を見開く。


 そうだ。

 本音を言えばネオンの存在はキアラにとって謎だった。

 今までノートに言い寄った女の中にはネオンよりも華々しい結果を出す奴は何人も居た。

 言葉を選ばなければ、ユリン達と比べるとネオンのソレは全体的に何だか地味な感じが否めない。凄いのは認めるが、ユリン達のような人外領域に片足どころか両足入れてるような化け物感が一切ない。オンリーワンな才能でもない。

 何も知らなければ非常に育ちのいい純朴な女性にしか見えない。

 ユリン達のような天賦の才を持つ者が纏う独特のオーラみたいなものがネオンには全くないのだ。

 

「どっちかというと、そこを評価したんだろうね」

    

 なのに、女帝のツレのコミュニティの中でネオンは確かに存在できている。ゲームを飛び越えてリアル側のコミュニティにも深々と食い込んでいる。


 一体なぜ、排他的で才能至上主義の空気が強いこのコミュニティにネオンは平気な顔で過ごせるのか。

 それはネオンのとある特性による。

 ネオンはユリン達の才能は認めつつも、尊敬しつつも、あくまで皆同じ“人間”と見ることができる。

 女帝のツレや女帝自身でもユリン達を自分とは違う人種だと無意識領域では認識している。むしろ同じ人間扱いすると人類のほぼ100%がそのスペック差に絶望しかねないから、宇宙人とかその括りにしておいた方がお互い身のためだ。理屈で言えば馬と足の速さを競って負けても悔しがる人はそうそう居ないだろうというのと同じ。

 統計から外れ値を外すように、人の範疇から外れたものを無理に人と同じ括りで見て比較しても双方あまり幸せにはなれない。


 だが、ネオンはある種ここまで真っ直ぐに直視出来るのは一周回って狂気的だと感じるまでにユリン達に対し色眼鏡なしで真っ直ぐに向き合える。

 凄いと認めつつ、嫉妬しない。

 純粋にその才を讃えられる、その心の清らかさ。

 怪物相手に何の打算も無しに手を差し伸べられる人間が果たして何人いるか。

 怪物が怪物達なりに苦労し、苦しんでいると察して人間のまま寄り添う事が常人で可能なのか。

 その怪物の中には、ツレや女帝自身も含まれている。

 怪物達と共に歩み、導く者も化物側に立たなければいつかはついていけなくなってしまうから。

 ツレと女帝ですら逃れられなかったその宿命に、ネオンは打ち勝った。


 この姿勢こそ、生来の才能と言える。


 故に、ユリン達はネオンを拒むことができなかった。

 惚れた男への愛こそあれ、それはそれとして親切心100パーセントの子羊を殴るほど化物達も人の心を棄てていなかった。むしろその手の非道を行えるのはツレや女帝の方だ。

 

「アレでいてさ、彼は割と冷静に女性陣のパワーバランスとか考えてる節があるんだよね」


 ヌコォと女帝陣営を長らく接触させなかったのはツレの強い意向があってこそ。

 女帝をはじめとした固定化されたメンバーの中にスピリタスが加わった。これはツレにとって予想外の出来事だったが、ツレはスピリタスを遠ざけるなんて出来なかった。

 はてさて女帝達は元よりリアル側で繋がりがあったが、ヌコォとスピリタスは新参者という扱いになる。


 そのどちらもユリンだけは既に接点を持っていたが、ユリンは仲を取り持つタイプではない。

 かと言って、スピリタスもヌコォも女帝に簡単に丸め込まれるような可愛らしい性格ではない。微妙にして絶妙なパワーバランス。そこに上手い事収まることができる人物などどこを探せば。


 いやいるじゃないか。

 現在進行形でこの怪物の群れに羊の姿をしたまましれっと紛れ込んでいる変なのが。


「アサネちゃんはある種中立なんだよね。女性陣の全員と大体同じくらい仲が良い。彼の言った事は基本的に聞くけど、ホントにダメだと思った事はあれでいてちゃんと嗜めることは出来る。それは彼以外に対しても。正しく相手の為の思って注意を出来る子なんだよね。自分で言うのも何だけどさ、彼も私も含めてウチらってちょっと頭のネジ飛んだり歪んでるしてる時からさ、あの子みたいなまともな感性してる子がいるとどこまでズレてるかを認識しやすくなって助かるんだよね」


 最初こそ自分を助けてくれた事により、キアラの様に崇拝的な感情を女帝のツレに向けていた。

 しかしネオンは彼が白馬の王子様ではなく、あくまで人間、一応人間であると理解した。むしろ白馬の王子様に討伐されそうな悪魔のような奴と把握した。自分を助けてくれた人が悪人だと認めるのはかなり難しい。それでも彼女は色眼鏡を壊して客観的に彼がどんな人物かを理解した。


 理解した上で、この悍ましい怪物と、周囲にいる怪物がどんな存在か理解しながらも同じ人として扱い、好きだと本心から言った。

 真の狂信者とはファンタジーで描かれるような妄信的で過剰な自己犠牲を伴うことで信仰を示す存在ではない。信仰対象を正しく認識して、まっすぐに見据えたうえで、その隣を共に歩ける者なのだ。

 理由などない。それが日が東から登り西に沈むくらい当たり前の物だと疑わない。

 理由なき狂気と同じくらい理由なき善意は理屈を容易く捻じ曲げてくる。


 善意は人間という生物が社会を構築する上で獲得せざるを得なかった後天的な武器だ。

 善意というのはある種その先にある自分へのメリットがあってこそだ。感謝、承認欲求、評判向上、あるいは自己満足、メリットがあるから人は無意識的に善行を成そうとする。

 例え目に見えるメリットのない善行でも、自分が自分を『良い人』と肯定できる材料となっているのならそれは間違いなく自分の為だ。

 人は無意識のうちに自分を守り肯定する為の行動を選ぶ。

 とある行動をするか否か自分の価値観で天秤にかけて、最終的には重い方を取る。一見軽い方を取ったような選択でもその人の価値観の天秤ではそちらの行動の方がメリットがあると判断したからその行動を取るのだ。


 その選択システムと強い関連性を持つ『善』の根っこにあるのは種の存続の為の本能ではあるのだが、社会システムが発展した今では善の定義は生存という尺度だけでは測れない。故にこそその善行には何かしら自分でも気づかない原理がある。

 ――――のはずなのだが、極稀に本当の本当に一切自分に見返りを求めずに善行をナチュラルに成す精神的怪物みたいなのが生まれたりする。

 天秤の傾きを無視して生きられる真の善性の体現者が。


「リンちゃんも私もジャッジは出来ても完全なバランサーにはなれない。彼でさえもね。その点、我をナチュラルに捨てられるあの子は良いバランサーだよ。羊故に誰からも攻撃されない永世中立国みたいな扱いなのかな。なんだろうね。彼のその彼女にするかどうか云々のボーダーってさ、好きだからってのもあるんだろうけど、自分にとってプラスになるから好きになるみたいな……目的と手段が入れ替わってるみたいな?普通の女なら絶縁モノの思考回路だよねアレ」


 好きだから彼女にする為にアプローチする、ではない。

 彼女や恋人にしたらメリットがあると判断したので、好きになっても良いと判断し、実際にアプローチして囲い続けている。

 ある種感情(ホンノウ)より先に合理(リセイ)が来てしまっている愛。

 かと言ってその愛が造花の如く無機質な偽物かと言えばそうではない。愛すると決めれば愛はしっかり与える。むしろ好意の芯が明確化している為にブレがない。


 ネオンの場合であれば、『自分達のコミュニティにおいてバランサーなり得る特異な才能を持つ女性』という符号を見て、彼女にすればした時の軋轢以上にハーレムを成立させるに明確に必要なピースとして機能すると判断したから、彼女にするかしないかのツレのジャッジを通過した。

 

 どこまでも利己的でも歪で悍ましい非人間的な愛。

 ツレがJK相手に彼女のそれぞれに求めているものが違うと述べたのは事実だ。各々に駒として別々の役割を求めている。そして役割に応じて愛し方も愛する点も異なるのは至極当然の事である。

 愛の熱量は同じでも、色や形は違うのだから。


 むしろ、全ての女を型にはまっただけの愛し方をせず、各々にとってのベストになる付き合いをしようとするからこのハーレムは成立していると言っても過言ではない。


「じゃあもうこれは言っちゃおうか。高校の時の貴方はアサネちゃんと真反対だった。既にあった駒に対して強い敵意があり過ぎた。レンカとかロナ、そして何よりに私に対してね。大駒3つと大駒級1つじゃどちらを取るかは自明の理だよね。でもこれでさえフラれた決定的なポイントではない。リアルじゃ1年も経過してないのに彼女になるまでこぎつけたアサネちゃんと、自分は何が違うのか。よーく考えて?今まで言い寄った女と何が違うかよく考えて?」






ノートの本性が1番怪物的とも言える

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― 新着の感想 ―
( `・ω・) ウーム… 理解出来るけど、やっぱすげぇなぁとしか言えない…
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 プレイヤーネームに親しみすぎて、リアルネームが誰を示しているのか分からなくなった どうしよう 女帝様のゴールが見えないよぉ
ノートの恋愛感って、戦国武将の政略結婚とかに近いかな。
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