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No.Ex 外伝/それ逝毛!主任マン~エンジェル・プリズン~ De


 

 T君たちも大騒動が起きるまでボーっとしていたわけではない。AIを使って対処を急いでいた。しかしそれ以上にノート達の行動は早かった。

 T君並びに運営勢が戦々恐々とする中、戦艦は静かに潜航していた。

 唐突に現れたデカブツに魔物達が反応し襲い掛かるが、エインの展開した結界に弾かれ、迎撃機能に殲滅され、戦艦を足止めするどころか戦艦の燃料としてその魂を捧げてしまう。


 運営達は知っている。ALLFOの海はプレイヤー達が考えている以上に遥かに魔境だ。どのサーバーでも第二章前後に海のエリアを隣接させているのは偶然ではなく意図的なモノ。プレイヤー達が必ず海に近づくようにルートが設計されている。

 そして一度海に繰り出せば、ALLFOの海がリアルのソレとは比較にならない程危険だと理解する。小舟程度など話にならない。総合パラメータでは地上にいる魔物と変わらなくとも海と言う地の利は強大で、プレイヤー達は海に落ちた途端面白いように一方的に殴られて死ぬ。そこでプレイヤー達は船の作成に取り掛かり、NPCの関係や生産関係の重要性に付いて知るという仕組みなのだが、問題はこの海の魔物の強さ。


 そう。こいつらはランク差が10くらいあってもひっくり返してくる程度には強い。陸に生きる者が海の生物たちに競り合うにはそのぐらいのハンデがある。代わりに、海の魔物のドロップは地上の魔物より割と美味しい。素材としても優秀な物が数多く眠っている。これらをコツコツ集めて、いつかは乱獲を、とプレイヤー達は夢見るのだ。

 そんな夢を強引に、しかも海の魔物のフィールドで一方的に行えてしまうのがイザナミ戦艦の怖さである。


 イザナミ戦艦に潜水能力があるのは何も身を隠す為だけではない。潜水し周囲の水面下の魔物に存在をアピールする事でヘイトを搔き集め、襲い掛かってきた魔物を殺して燃料にする為だ。攻性結界に守られたイザナミ戦艦にタックルするだけで魔物は自爆するように死亡し、その時発生するドロップも漁師の能力で余さず回収。ただでさえ物資的なアドバンテージを持っているロストモラルに更なる強力な物資が物凄い勢いで収集されていく。


「(どーすんだこれ。このままいきなり限界深度まで潜らないでくれよ…………)」 


 海の中を猛烈な勢いで荒らしアイテムを貯蓄するロストモラルに運営陣はざわめいていたが、ロストモラルが海に繰り出した時点でALLFOの海について改めて情報を漁っていたT君は別の事を危惧していた。

 というのも、ALLFOの海はあまりにも要素が多いうえに厄ネタがかなり転がっていた。深海領域に至ってはエンドコンテンツの一画である。そもそもプレイヤーが到達できるのか怪しい環境だが、イザナミ戦艦級のモノがあればにわかに現実味を帯びてくる。

 また、早期の段階で裏シナリオボスが顕現した事もT君は問題視していた。アレらのボスは普通のボスではない。顕現しただけで周囲の環境を大きく変えたように存在するだけ色々な効果を引き起こす。それが封印から解き放たれて野放しになっている。あの調子だといつ討伐されるかもわからない。それを言い出すとノート達がかなり前に封印から意図せず解き放ち放置したままの廃村地下の化物も順調に支配領域を広げてとんでもない事になっているのだが、プレイヤー達があの領域に到達できるのか現状見通しが立たず放置するしかない状態になっている。


「(シナリオボスとは派閥が異なる上に“深度”も深い存在。アレのせいで教会全体の動きが不安定化してる。設定上仕方がないとはいえ、どうするんだ?)」


 ゆっくりと、確実に、プレイヤーの目の届かないところで終焉の引き金を引く怪物たちが蠢ている。

 あの怪物たちの強さはテストプレイで戦ったT君も良く知っている。自分達もテストプレイの為にチート状態での戦闘だったのにもかかわらず、一方的に殲滅された。勝てる勝てないの領域ではなかった。設定ミスを疑う強さ。シナリオボスなど瞬殺できる連中だ。 

 特に、廃村地下のアレだけは解き放ってはダメな奴だった。悪意を煮詰めたような存在。ノート達が直接戦闘を避けて自爆で逃げたのはまさにファインプレイ。あのまま下手に接触していたらどうなっていたか。バルバリッチャがわざわざ反応する程度には、強力なボスなのだ。


 何か異常が起きても最終的にAIが帳尻を合わせる。そうは理解していても、何か騒動が起きれば運営も矢面に立たなければならない。あの怪物達の異常性を正しく理解している者が運営側で何人いるのか。T君も情報開示クリアランスが上がったことでようやく閲覧出来た情報には頭を抱えるしかなかった。


 対プレイヤーだけでなく、世界単位でも薄氷を踏む様にギリギリな事をし続けるのがロストモラルだ。一般的な運営チームはロストモラルを対プレイヤー目線で恐れていたが、世界の実態を深く理解し始めた今となってはロストモラルの恐れるべきはそこではないとT君は感じていた。   


 幸い、深海に潜る気はないらしい。そのまま戦艦は海の中を進み、大規模演習中の沿岸へと舵を取る。

 狙いは間違いなくプレイヤー。魂の確保の為か。憂さ晴らしか。戦艦の性能チェックか。一方的ではあるが、T君からしたらロストモラルはそこそこの付き合い。だんだん考えている事も見えてくる。

 

 運営チームが悲鳴をあげ、いよいよ主任が本格的な脱出を画策し始める。

 戦艦がゆっくりと浮上を開始し始めたのだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 文字化けが解放されて変異を引き起こし続けてるけど、文字化けを封じた存在は何も対策を講じないんすか? それとも時間が経てばテコ入れが入る感じですか? オルタバース的に言えばどのバースで…
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 支配領域広げているのかぁ ヤバイなぁ まぁ、ナニモデキナイケドネ! 明らかに殺されたら何かありますってやつでしたし、自爆は…
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