No.Ex MGチーム活動日誌❶
No.Ex MGチーム活動日誌❶
【2月×日】記入者:Tr0ll
謎の多いアサイラムに移籍する事が決まった。
パーティーの脱退は『街』がないと無理と言うのが通説であったが、どうやら祭祀にも干渉する権限があるようで無事に移籍できた。アサイラムキャプテンは明言こそしなかったが、祭祀の力を使えばチェインテンパーメントの縛りですら解けると思われる。パーティーの脱退ができないというあまりにもゲーム的に支障の多すぎるペナルティは以前より疑問視されていたが、やはり抜け道はあった。
ただ、組織のトップと脱退を望む当事者が双方が脱退に合意しており、祭祀が私的な手続きに応じてくれるほどのメリットを提示をして交渉をするか、或いは好感度を稼いでいる必要があるので、依然として脱退の難易度はかなり高いと思われる。
この件については今後とも詳しい条件を見定めていくとして、アサイラムである。まず問題は原理不明の転移技術。自分達も転移をした当事者だが、実際は影の様なベールに頭から覆われたと思い、慌てて逃げようとしたときには既にベールはなく、謎の街の門のエリアに居た。
そこはアサイラムが根城にしている都市の様で、アサイラムの面々は地下帝国と呼称していた。実際、見た目からして巨大な地下空間に居るようである。
マップを確認してみたが、転移をしたのは間違いないらしくマップがかなりの飛び地状態になっていた。単純に転移の仕様なのか、それとも現在地を私達に割り出させないようにしているのか。
私達は転移門らしきもののある謎の空間から屋敷の地下に案内された。そこには広い地下倉庫があり、ポツンと場違いなログハウスがあった。これがアサイラムのホームらしい。
初日はこのホームの待機部屋で待機をする事になった。同時に加入アンケートの様な物が配られた。面白いことに、どの質問にも解答の義務はないらしい。つまり全て空欄でも良いようだ。ただ、どんな意図があるのかは詳しく見ておきたいので一応答えておくとしよう。
【2月〇日】記入者:Red Beryl
キャップさんと個別面談をすることになりました。トップレベル組織にしては割と自由に動いているように見えていたけど、やっぱりガチガチに組織化されているのかな、と少し不安(仕事みたいにやるのが苦手で生産プレイヤーをしているし)。
昨日渡されたアンケートもかなり個人情報に絡む質問もあったけど、私は個人情報は伏せて基本的に趣味嗜好や要望などを回答してみました。その情報を元に面談をしましたが、キャップさんは特に未記載の部分へ言及はしませんでした。聞くところによると昔とあるゲームで作ったフォーマットを使い回ししているだけみたいです。
要望に関しては基本的にOKとの事で、今後の待遇や活動指針、情報の取り扱いなどの説明を受けました。少しオーバーな要求もあえて盛り込みましたが特に問題がないそうです(資産的にやはりかなり余裕があるのかも?)。
今はまだミニホームの相部屋エリアしか立ち入りはできていませんが、それでも十分広いのが気になります。客間との事ですが、ミニホームに客間…………?
客間なのに私たちの為に作業場らしき場所も設けられていたので生産活動。なんだかクオリティにかなり補正が乗っているような?(気分の問題で片付けるには違いが大きく、私以外にも同じような現象がみんなにも起きてるっぽい)。
個人面談がひと段落したら、今後個人の作業スペースについての間取りを決めたりして最後に『アサイラム全書(検閲済み):第三版』なるデータを渡されました(ちょっとした図鑑?ってくらいページ数が多い。加えて伏せ字の部分もある)。軽く目を通しましたが、かなり色々な情報があるのでなんとか目を通しておこうと思います(そういえば、複数のNPCがミニホームの中で暮らしているけど話しかけていいNPCとダメなNPCに関しては何度も説明を受けた。そもそもミニホームというプレイヤーの個人的なエリアにNPCが入れる事自体が驚きなんだけど、あの口ぶりだと何だかNPCの方が偉いみたいな感じだった。他のゲーム的なアレコレには寛容だけど、そこを守れないなら今すぐ叩き出すと言われたのでキャップさんも相当気を使っていると見える。暫くは様子見ですね。信頼を得られたらもっと詳しい話が聞けるかも?)。
【2月@日】記入者:BRB
ヤバいんだろうなと思ってたけど、思ってたより何倍もアサイラムはヤバかった。人間と同等以上のコミュケーションが取れる仲間NPCユニットがいるし普通に出歩いている。アサイラムの謎の技術力を支えていたのがNPCってのはゲームバランス的に思うところはあるが、逆に納得できる面もある。彼らはプレイヤーに置き換えれば年中無休で全てのリソースを自分の専門分野に費やせる廃人だ。おまけに素材や資産は世界トップクラスの連中が調達してきてくれる環境。生産担当寄りとしては少し嫉妬する環境ではあるが、今度からは自分も同じ環境に居られるのだと思うと気分は良い。
思うに、他のゲームでもあった様なアサイラム専属生産チームになったと思えばいいのだろう。その点、キャップには生産の仕様や重要性に対する理解があるのでかなりやりやすい。
さて問題は俺達の為にわざわざ用意したのだろうと思われるアサイラム全書なるデータだ。勿論しないが、もしこれを公に開示したらそれだけもALLFOでは大騒動が起きるだろう。気になるのはやはり伏字の部分が少なくない事か。現在俺達に開示されている情報だけでもかなり爆弾級の情報なのに、伏字の部分は恐らくもっと問題のある情報なのだろう。
本日は昨日の面談の情報を元に部屋を用意してもらった。この客間スペースをMGチームの共用スペースとし、新たにそれぞれの個室を隣接する形で設けていく。ミニホームの拡張は実は初めて立ち会ったのだが、部屋がリアルタイムで拡張し、扉が増えていくのはまるで古典的なタイプの魔法を見ている様だった。部屋のサイズは約200sq.ft.程度か(キャップは12ジョウと言っていたが何の単位なのか。翻訳すると約200sq.ft.っぽい)。リアルの自室より広いのが泣けるな。
生産や実験の為の設備も投資してくれたが、オーダーしたモノは概ね実装してくれたようだ。リアル資金もかなり投じているようなのだが問題ないらしい。
ミニホームは拡張をするほど指数関数的に費用が増加していくらしい。気になったので具体的な費用の内訳を聞いてみたが、俺達全員の部屋と設備を用意するだけで(客間と個室12部屋で総面積5000sq.ft.か?)30億MONと100$程を使用したようだ。この金額を気軽に使えるようだが、大丈夫なのか。
俺達が気負わないように聞かれるまで具体的な金額は伏せるつもりだったらしいが、キャップは偶にPKチームのトップらしからぬ善良さが見える。いや善良と言うよりこれが日本人の気質なのだろうか?よくわからない。




