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733/880

No.477 いつも通り


【規定条件の達成を確認】

【Jail Breaker/Hypnopompia Protostar/»à¤»¤ëº½¤ÎਹԲ¦が出現しました】

[Warning:特殊災害(スペシャルハザード)が発生します]

【ワールドシナリオβが進行しました。ワールドの『¿¼¤­Èù¿ç¤Ë¤¢¤ë¿À¡¹』の 活性率が変化します。一部フィールドの変異を開始します。

『Jail Breaker』との邂逅により特殊称号『邂逅者:Jail Breaker』が与えられます

『Hypnopompia Protostar』との邂逅により特殊称号『邂逅者:Hypnopompia Protostar』が与えられます

特殊災害(スペシャルハザード)を発生させたので『特殊災害(スペシャルハザード)の引金』の称号が与えられます】  


[Warning:特殊エリアの強制介入が発生します]

[Warning:イレギュラーイベント『都市防衛軍・異章決戦休火山要塞』を開始します。

【特殊環境:強制参加】

『このクエストは強制参加です』


【緊急クエスト:休火山都市の岐路】

『『戦闘』か『逃走』を選択可能です。選択によりイベントのクリア条件と報酬が変化します。

セーブポイントが変異します。

戦闘:一定時間内の»à¤»¤ëº½¤ÎਹԲ¦の撃退

逃走:一定時間以上の»à¤»¤ëº½¤ÎਹԲ¦からの逃走』

[Warning:強制カウントダウン執行 0:59:59]

 

 一部は祭祀と今後についての話を進め、一部はラブロマンスっぽい事をして、一部は北西勢力の残党を殲滅し全員を遠くの教会傘下の街に死に戻りならぬ死に送りさせ勝鬨の咆哮を天に捧げていると、赤いフラッシュがそのエリアにいたプレイヤー全員を目潰しした。


「なん!?」

「キャッ!?」


 お頭は目を抑え、Cethlennは思わずお頭に抱き着く。そして慌てて離れて真っ赤な顔を隠すようにフードを被り直す。すると思考が現実に追いついてくる。初めて見るアナウンス。これはなんだ、と思考が高速で回転し始める。


『全員、聞いてください』


 すると、皆の混乱を鎮めるようにその男の声が再び響き渡った。






「ですので、The Doom Divisionの駐屯に関しては―――――ッ!?」

「―――――――!」


 多くのプレイヤーが不意打ちアナウンスの目潰しに驚いて蹲る中、ノートだけは違った。何故ならアナウンス発生のほんの少し前に祭祀が言葉を切り上げて目を見開いて山の上の方を見たからだ。まるで、なにかとんでもない物が近づいてきた事を察知したように。


「(なんじゃこりゃ………いつもの文字化けアナウンスと少し違う?Jail breaker、脱獄はまだしも、Hypnopompia Protostarってなんだ?緊急クエストはルリエフ島の時と同じか。だが防衛戦の形式は地下帝国。防衛戦だと………?)」


「な、なぁ。これ…………」 

 

 VM$の声で深くに沈んでいた思考をノートは引き戻す。こちらを見つめる祭祀と目が合った。   

  

「単独で防衛は?」

「私が力を使えば、退けることはできますがこの都市の護りも…………」


 UIに目をやり、ノートはステータスを見て沈黙する。


「(あまりにもタイミングが良すぎる)」


 一体何が引き金だったのか。爆発で山を崩した事か。結界にそれを突撃させたことか。多くのプレイヤーが争ったことか。それとも何かの称号が干渉してきたか。

 戦闘は終わっているのに、ノートのオリジナルスキルで発生したと思われる[逃走禁止]の行動強制執行は続いている。つまりこの戦闘は、逃走の選択肢こそあるが実質一択だ。そう何度も逃がしてやるかと言わんばかりに、このタイミングで発生したイレギュラー。こればかりはノートも全く予想していない。

 しかし、選択肢が一択なら迷う事はない。やるしかないのだ。多くの苦労をして手に入れたこの安住の地を守りたければ、死ぬ気で戦うしかないのだ。

 

 暗かった空が急に赤みがさした。山の向こうで何かが光っている。

 グレゴリの視界を見る。そこにいるのは休火山の中から何かが噴き出すように出てきている姿。今まで遭遇した文字化け共の様なバカみたいなサイズではない。しかし小さいわけでもない。ちょうどノートが第二ギガスピで召喚してしまった化物のような奴が、数百m級のナニカが這うように非常にゆっくりとこちらに向かっている。

 身体は溶岩の様で、四足に尻尾を使って這う様は上から見ると爬虫類の動きに類似している。全体的なモデルもやはり爬虫類だろう。けれどどこか人間らしさもある。特に頭部や、肩周りの筋肉や骨格は人間に近い。その肩の部分からしおれた翅の様なものが生えている。しおれきって力がなく、翅を地面に引きずるように動いている。

 同時に感じる強い嫌悪感と微かな既視感。見るだけ正気を削ってくるような悍ましき存在である事を本能的に理解させてくる。ノートが特に感じたのは何とも言えない痛々しさ。まるで胎児の状態で引きずり出されたような、卵の中で赤子に変わろうとしている途中のモノを強引に引っ張り出してしまったような生物としての不完全さ。体は自己の熱で融解しては再生を繰り返し、動きは全体的に不格好だ、重要なパーツが何もかも足りてないように。特に目の部分はマグマの様に煮立っており見えているのかすら定かではない。

 壊れた体から血の様にマグマが飛び散り、休火山の地面に落ちる。すると灰交じりの土が変異してこの悍ましい獣の様に変化していく。ドロドロに溶けた犬とトカゲの相の子のようなクリーチャーが生まれ、その体を壊しながら駆り立てられるようにこの都市に向けて走り始めている。その非生物的な動きはどことなくアンデッド達を連想させた。


「結界の展開に尽力を。民はこの先のThe Doom Divisonの要塞に避難を。我々が出撃します」

「…………ご武運を」


 誰が原因だ。どれが原因だ。それとも犯人は居ないのか。

 ノートは祭祀がそう騒ぎ立てる事も覚悟していたが、祭祀は全てを飲み込み決意を瞳に宿らせる。この話はあとでもいい。今は守る事に全ての力を注ぐべきだと。


 そしてノートはレクイエムに呼びかける。再度俺の声を届けてくれと。 

 

「全員、聞いてください」


 どうすべきかは話ながら頭の中で組み立てる。とにかく今は話す。皆が散り散りになる前に意思を統一する。


「巨大な怪物の接近を確認しました。原因はわかりませんが、北西勢力が追い出された直前に何か腹いせにしていったのでしょう」


 さりげなく罪を押し付ける。欠席裁判だ。被告人、北西勢力。被告人及び弁護人不在の為に反論は無し。判決は有罪。今はそれでいい。


「我々はこの都市を何としても防衛しなくてはなりません。この地はDDにとっての安住の地です。ここを死ぬ気で守らなければまた第二第三の北西勢力が現れる事でしょう。ここが正念場です。北西勢力にしてやったと思わせてやってはいけません。奴らのプライドを粉砕してやりましょう。罠を仕掛けてきたのなら食い破ってやりましょう。恐れるな。決して恐れるな。歴史を作るには先ほどは少し温すぎた戦闘だったことだろう。真に歴史を刻む死闘を始めましょう。物資や装備に関してはアサイラムが全て補填します。今ある全てを使い戦ってください」


 敵は北西勢力とする。DDに戦う意義を与える。そうでもなければ、これより姿を現す化物はあまりに恐ろしいから。グレゴリに指示を出して今視界に映っている化物の姿を空に投影する。


「さぁシナリオボスを超えるレギオン級の化物が来るぞ!戦闘可能な者達は都市南東を抜けて“山頂へ”!真の勝鬨はお預けだ!完全勝利を以てして勝利を叫ぶぞ!」


 再度檄を。オリジナルスキルが発動する。

 逃走禁止の強制執行が残っている様に、他のオリジナルスキルもまだ効果を残している。


大即興劇(ジオン・エチュード)ノ主敵役(・アンタゴニスト)

虜蒙ノ喊呪声バディル・バトルクライ


 加護が皆に与えられる。


「アサイラム!全制限を解除!全ての手札を使え!アサイラムで最終防衛ラインを作る!」

 

 そして今までずっと我慢させていたアサイラムの枷を完全に解き放つ。

 カウントダウンを見るに溶岩の化物が到達するまでに約1時間の猶予がある。

 

VM$(ヴァイオ)、行くぞ」

「やーっとおもろなってきたな~?」

「この状況でそれが言えたら上出来だ!」


 祭祀の力を使い都市全体に避難勧告をし始めた祭祀を他所に騎乗用アンデッドを召喚してノートはVM$をコードネームで呼ぶと後ろに乗せて移動を開始する。

 最初にいた位置の都合上、ノートが真っ先に都市南東に到着。FUUUMAによって開門されている門から出る。キサラギ馬車を召喚して最高速度でぶっ飛ばして山頂までいくとイザナミ戦艦を山頂に拠点モードで召喚する。

 山を越えたことで遂にその化物を目視する。


「アンデッド各位、超常存在がお出ましだ。これより防衛戦を行う。最終防衛ラインはイザナミだ。ダゴン、ヒュドラ、制限を解除する。海はまた用意してもらうからフル出力でイザナミを運用しろ。エイン、結界を展開。絶対に攻撃を都市に通すな。それとDDと共闘するからDDの乗り込みも許可するように」


 イザナミ戦艦に乗り込んだノートはインベントリからツッキーを取り出しつつ矢継ぎ早に指示を出していく。


「VM$はオリジナルスキルの準備。装備もフルで」

「OK~」 


 負けられない戦いというのはゲームに於いてそう多くない。なぜなら大体は取り返しがつくからだ。

 しかしことALLFOでは、もしこの防衛を失敗すれば、拠点は容赦なく滅びる。ご都合主義で復活したりしない。NPCの命は基本的に一度きりで、壊されたら蘇らない。エインなど例外中の例外だ。

 が、ノートの思考はクリアだった。心は煮立っているが、反比例するように頭が冷えていく。追いつめられるほど頭が動く変人の頭脳は今かつてない勢いで回転していた。


「ツッキー、やるぞ」

『あ~~やだやだ~~~~この所有者(オーナー)~~~いつもろくでもないことしでかしてる~~~~』

     

 取り出されたツッキーは不平不満を叫んでもちっとも堪えない所有者に対してアプローチを変えた。調子はずれの変な歌を歌って精神攻撃をしてきた。しかし、ノートの様子がおかしいことに気づいたのか歌をやめ、顔を覗き込むように旗が動く。


『…………なんかいつもと雰囲気ちげぇでごぜぇますね?』

「ミスったら万単位の人間が死ぬからなぁ」

『珍しく殊勝な――――』

「というのはぶっちゃけ別にいいんだけどさ、ここで勝てたら熱くね?って。恩を最大限売るチャンスだし、毎回逃げてるのも芸がないしな。いつも足りてない頭数も十分にある。つまりツッキーの能力をフルで生かすチャンスってことだ。それに文字化けから何がドロップするか、倒せば研究も大きく進みそうだ。こんな状態で戦えるなんて最高だよな?」

『―――――こともなかったですね。いつも通り頭がおかしいし人の心がなくて安心したでごぜぇます』


 漫才みたいなやり取りをしつつも、ツッキーが光を放ち始める。

 イザナミの甲板で、山の頂上で、ここが目印だと示すように。


「アメリカスタンプラリーで貯めたシナリオボスの魂を4つくれてやる。フル出力だ」

『…………いいんですね?』


 珍しくツッキーが真面目な声で問う。ノートは頷いた。ここで負ける様なら俺はここまでだと言わんばかりに。賭ける時は派手に。それがノートのモットーだ。

 赤い月がイザナミ戦艦の上に顕現した。ノートの力が強化されエインが張り始めた結界が分厚く大きく展開していく。


ノート兄(キャップ)!どうする!?」


 一番最初にイザナミに辿り着いたのは空から飛んできたユリンだった。


「アサイラムは待機だ。まだ時間はある。スピリタス(レド)トン2(キン)鎌鼬(ギン)ゴロワーズ(パープル)カるタ(グレー)VM$(ヴァイオ)全員のオリジナルスキルを使う。トドメの刺し方はなんとなく思い浮かんでるからオリスキでガチガチに強化ができたら突撃だ」


 続いてお頭とCethlennが来た。背負ったCethlennを鎖で自分に固定したお頭は、使い魔である巨狼の騎獣を使い山を一瞬で登り切った。


「ヤバい事になってんな」

「ええ、かなり。けど負け戦ではありません」

「ああ。それとだな………どうせ戦うしかねぇしもう言っちまうが、俺はオリジナルスキルって奴が使える。何がとかは聞くなっていうかアンタらなら習得してんじゃねぇかって思うが、兎に角全体に対してぶっ飛んだパワーの強化のバフを撃てる。けどこの夜じゃ闇が足りねぇ。どうにかして闇を増やせねぇか?新月、しかも星一つ見えない様な暗さがいるんだ」

「……………………なるほど、わかりました」

 

 ノートはツッキーのバフ比率をグレゴリに傾ける。続いてグレゴリに指示。上空に影で「屋根」を作るように指示。

   

VM$(ヴァイオ)、例のアイテム使ってください」

「ええで~」 

 

 上空に非常に大きな影が伸びていく。光を遮るように、天を覆うように。同時にVM$がインベントリから取り出した真っ黒なランタンに魔法で火を灯す。すると空間の光が消えて闇に塗りつぶされていく。まるで光の代わりに闇がランタンから放たれている様に。 

  

「マジか。なんでもアリだな、アンタら」


 もし出来たら、其れぐらいの気持ちだったのにあっさりと条件を整えてしまったノート達にお頭はもはや対抗心すら起きなかった。 

 

「Cethlennさん、貴方の知恵と力を借りたい。ダグザの大鍋を使って全員のスタミナが続く状態を維持して欲しい。お頭には前線に出てもらい『グレイプニル』で足止めをしてもらいます。代わりにDDに指示を出すのは貴方だ」 

  

「…………わかった」

 

 続いて大波を操って戦闘員を全員一気に波で運びながらNEPTが到着する。


「なるほど、凄い使い方だ」

「お世辞は要らねぇんだよ。さっさと指示出せや。どうすりゃいい」


 予想外の大きな時間短縮。かなり滅茶苦茶な操作をしたのか波に運ばれてきたメンバーはもれなく咳き込んだりぐったりしているが、それでもノートが予想していたより遥かに早く多くのメンバーが最終防衛ラインに揃った。特にアサイラムのメンバーが全員揃っているのは大きい。  

 ノートは再びレクイエムにマイク代わりになってもらい指示を出す。

     

「ウチのタンク、JK(ヨロイ)を使って大規模攻撃は凌ぎ、お頭にはとにかくグレイプニルで奴の動きを妨害を。骨格が不完全なのか転倒はかなり狙いやすい奴だ。FUUUMAやアサイラムのメンバーも基本的には関節に攻撃を与え続けて進軍を止めることに注力。他メンバーは化物が生み出し続けている小物を殺し続けてください。アレを放置するのは危険な予感がする。この後来る後続メンバーの一部は補給係になってもらい物資を供給し続ける。ダグザ産の食べ物を食べてスタミナを決して切らさないように。それとNEPTは海水を呼び出してこの戦艦の強化をお願いしたい。この防衛ラインが崩れるかどうかで勝敗が大きく変わる。余裕があれば地震を発生させて侵攻を止めるように。最前線の現場指揮は私が。最終防衛ラインの指揮はCethlennに一任する。総指揮官はCethlennです。前線に出れば私も全てを管理するのは無理だ。とりあえず、もう少し詳しい話を詰めるのでDD幹部とアサイラムは全員残って。あとはまだ奴が歩いている間に装備やステータスの状態を確認して各自いつでも出撃できるように準備を。では、行動開始」


『デンゴン、ドクリョクデカイケツセヨ。マスクノシヨウハミトメナイ』


 一通りの指示を終えて全員が動き始めると、ノートの背後から唐突に囁き声が聞こえる。今回の遠征に同伴しているイツリスの声だ。姿は無いがノートの背中には何かが肩を掴んでいる感覚がある。そしてその言葉の意味を理解する。要するに、今回はバルバリッチャは手を出さないしピエロマスクの使用も認めないという事だ。


 上等だ。端から頼る気はなかった。

 ノートはむしろいよいよ追いつめられたとも思うが、そうとは思えないほど楽し気に笑いながら策を練り始める。


 

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[気になる点] Jail Breaker Hypnopompia Protostar »à¤»¤ëº½¤ÎਹԲ¦ うち2つは邂逅…も1つの文字化けはなんなんだ…
[一言] ああやっぱり波って事はトリアイナモチーフか…… んでもってお頭のオリジナルスキルに闇が必要というのは、 スコルとハティがソールとマーニをラグナロクの際に吞み込むからか?
[一言] え、文字化けと戦うん?ガチで?...がんばれ~ 選択可能とか言ってますけど、これって例えば逃走を選んでから火力のごり押しやらで撃退したり、その逆をしたり、何も選ばなかったりするとどうなるん…
2024/01/06 22:12 わたしはたわし
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