No.60 英国紳士の皆様ご起立下さい
WRYYYYYYYYYYY!
完 全 復 活 ! !
只今帰還いたしました!!
忘れられても仕方ない期間更新期間が開いてしまって大変申し訳ございません。
これから徐々にペースを戻していこうと思います。
今後ともよろしくお願いいたします!
+シリーズにALLFO発売から20年後の世界を描いた外伝を書き始めました。そちらもご一読いただけると幸いです。
「これが“仕様”の範疇にあるALLFOの凄さに驚けばいいのか、呆れればいいのか、ボクには段々わからなくなってきたよ…………」
「やっぱり、ふ、ふつうでは、ないんですよ、ね…………
?」
「あのねネオン、たぶん他のゲームの事も学習したから出会った時ほど無知じゃないとは思うけど、これは普通におかしいからね?」
ネオンに問われて苦笑いを浮かべるユリン。
スピリタスに自分から話しかけたことが切っ掛けとなりノート以外とも次第にコミュニケーションが取れるようになってきたネオンの目の前には、変な高笑いをしているノートとスピリタス、『秘密兵器』の最終点検を行うヌコォ、ゴヴニュ、アテナが居た。
作成期間ALLFO内時間で丸4日間。リアルで2日も費やして作られた対特殊ダンジョンの『秘密兵器』が遂に稼働しようとしていた。
「ノート兄さん、最終点検が終了した。テスト実験でも運用可能なことは実証されているし、やってみる価値はある」
「ほらこれだよ。平然と、如何にもまともそうな顔して効率主義が偶に変な方に行くんだよ」
ノートの悪乗りに全力でのっかったヌコォに思わず愚痴るユリン。ネオンも思わず苦笑いしてしまう。
「フハハハハハハハ!ようこそ英国面へェ!!ネビル・シュート氏が名付けし20世紀の傑作は22世紀を迎えこの地にて今、完成しせりィィ!」
「あははは!おま、これ本当に使うのかよっ!?アハハハハハハハ!!」
それは車輪というには大きく武骨だった。兵器というには不可思議な見た目をしていた。
それは、第二次世界大戦後期、紅茶のキマッた英国紳士達が生み出した珍兵器『 自走式陸上爆雷』。
直径3mの車輪を持つボビンの様な見た目の兵器。車輪の側面に複数の『ロケット』を張り付け暴力的なまでの推進力を確保。大量の爆薬を積み、その推進力で高速で敵陣まで突撃し敵防衛陣地を木端微塵に吹き飛ばす!!
——————というコンセプトだったのだが、少しの起伏で跳ねます飛びます転びます。その衝撃でロケットは外れ、そのロケットは超強力ねずみ花火に大変身。それによりバランスが崩れ本体は高速スピンを披露。
あまつさえ『お使いに出かけてそれを忘れて帰ってくるようなドジっ子』の如く何かのはずみで途中でUターンして「ただいまー!」と言わんばかりに味方陣地に帰還までしてのける。
当然、危険すぎて実用化はされず幻の珍兵器となってしまった。
しかし、今回のステージは一直線。地面自体は真っ平ら。と言っても大量の高低差高めな段差があるのだが、ノートはアトラクションみたいなもんだと考えれば問題なし!!と妄言を言い放ち、『無限軌道式超魔改造自走式陸上爆雷』の製作に着手したのだ。
結果、コックピットを搭載した全くの別物が完成。これを用いてノート達はあの段差を突破しようとしていた。しかしそこに“原作リスペクト”と称して自爆機能を仕込んだあたりノート達は確実に遊んでいた。
コックピット内には最近ネモが繁殖に成功したファンタジー綿花を使用したクッションを敷き詰めて衝撃吸収に尽力。一番脆いスケルトンを内部に入れて実際の段差以上の場所を落下させてもスケルトンに落下ダメージ無し、という結果を出すことに成功した。
「いざ、出発!!」
◆
「いやーなんだろうな。行き詰って半分ネタでやったのに本当に成功してしまうとは」
「技術力の勝利?」
誰もが見えている大失敗を全力で敢行したノート達…………だったのだが、彼らの予想に反して作戦は大成功。ノート達は鏡の鬼畜ゾーンを被害0で突破することに成功していた。
「仕様としてできる以上は問題なかったんだろうが、少し釈然としない」
と言っても、これは『設計図を書ける』ヌコォ、『その要求に応えられるものを作り出せる』ゴヴニュ、『細かい部分の調整が可能』なアテナ、『クッションなどの素材となる植物を生成できる』ネモが居ることを前提とした、普通は到底実行不可能な作戦だ。
本来は無理ゲーじみた条件なので結果として上手くいってしまったのだが問題があるかと言えば、実はない。むしろ見守っていたVIPさんたちの一部が笑いすぎて過呼吸になってるぐらいである。
ALLFOではガチンコ正面突破だけを求めていない。知略と変態性が勝利する事も想定されたゲームなのだ。やろうと思えば『銃器』も作成可能と事前にアナウンスされているほどにALLFOは自由なのである。
一番下のフロアまで到着したノート達がパンジャンドラムのコックピットから脱出すると、そこはドーム状の空間になっていた。
中心にはそれ自体が発光しているように思える純白の縦5m横5m高さ1.7mの台座。それを取り囲むように正十六角形状に立つ黒曜石を切り出したような高さ7mに達する巨大な分厚いモノリス群。厳かな空気が漂っており、放置されたパンジャンドラムが異常に場違い感満載だった。
「これは…………祭壇、です、か?」
「ああ、確かに。祭壇っぽいよな。鏡の光源はあれか」
祭壇自体が発光しているほど輝いているが、光源は祭壇ではない。その祭壇の上、ドームの頂点の部分に超巨大なルビーを切り出して作られたラフレシアの様な照明がそのぽっかり空いた中心の穴から強い光を放っていたのだ。その強烈な光を受けて祭壇そのものが発光しているように見えるのだ。
「この石板みたいなのは………なんだ?アステカ文明の壁画みたいな」
ノートはモノリスを見上げ、そこに描かれる前衛的なアート作品の様な物に首を傾げる。
「ノート兄、これなんだろう?」
皆も散らばって思い思いにモノリスを眺めていたのだが、ノートはユリンに呼ばれてユリンが眺めていたモノリスを見に行く。
「どれもよくわからない感じなんだけどさ、これは分かりやすくない?このモノリスの一番上の方の右側の絵」
「空から何かが降ってきた、感じか?」
「やっぱり、そう見えるよねぇ」
ユリンが指し示す先には、丘に佇む人間っぽいがところどころ異なる造形の”ナニカ”、それらが見上げる空から多数の彗星のような物が落下してくるような絵があった。
「んで、その絵の左をみて」
「…………その落下してきた星の一つが、丘の上に落ちてきた感じに見えなくもないな」
「元々よくわからない一枚一枚の絵が全部連結しているせいで余計に意味不明な感じになってるけど、これは分かりやすいよね」
ノートとユリンがそのモノリスを眺めていると、ノートはもう一つ分かりやすい部分を見つける。
「これは、巨大な何かを崇めているのか?」
「空から降ってきたナニカがこれだったのかな?」
「(この村、やっぱり…………)」
人間以外の何かがいたと思われる廃村、そしてそれらが崇めていたナニカ。一体何がここで起きたのか、ノートにはその全容がまだ見えてこなかったが、ノートの嫌な予感は徐々に具体的な形となって現れようとしていた。
◆
「というかアレだな。あれ欲しいなぁ」
「天井からとるか」
取り敢えずここで考察していては幾ら時間があっても足りないのでモノリスはユリンが飛んで全てをスクショして記録。作戦上行きだけしか考えておらず、さあどうやって帰ろうか、いや死ぬしかないだろ、という結論が出たところで「なにかやってから死のうか」という頭の悪い論決に着地した。
「では、なにか検証実験をしてみよう」とノートが提案した所、『ALLFOのオブジェクトの破壊はどの程度可能なのか?』という話から『天井の綺麗な照明をどうにかもぎ取れないか?』という話が持ち上がる。
ノート達はここまで来るまでに村を焼き払い、“扉を強引にぶち破ってきた”。本人たちも自覚ある通り、それは正規の突破手段ではない。ここで重要なのは『オブジェクト破壊』。ALLFO内ではそれが如何ほどに自由なのか。ノート達はそれが気になった。
しかし見た感じモノリスも祭壇も持ち帰れそうな雰囲気は0だし、どんな手段を使ってもインベントリにしまえない。といっても天井の照明も本来収納不可能なサイズなのだが、今のノート達ならば問題ないのである。
パンジャンドラムの製作中、ノートがインベントリの収納量限界で扉を持ち帰れなかったことを話したところ、バルバリッチャとアグちゃんの共同制作の『余次元ボックス』なる怪しげな箱をバルバリッチャがくれたのだ。青銅に近い色合いの片手にのるサイズのこの箱は、自慢げに語ってくれたバルバリッチャの言葉を要約すると「『時空魔法』なる魔法を使い、見た目以上の容積を持つ箱」ということであった。
それのお陰でノートはファーストアタック時は放置せざるを得なかった扉を回収する事に成功した。しかし容積自体はまだある。と言っても、万が一ぶっ壊しても祭壇などの使い道はわからない。それならばアンティークとかそれ以外にも使い道ありそうな照明をパクってみるか、という話に纏まった。
「バカの一つ覚えでロープ引っかけてとれるかな?」
「ユリンが飛んで行けばできそうだが、照明の方が強度負けしそうなんだよなぁ。俺としては別の方法を模索したいところだが」
皆で天井を見上げて如何にあの照明を取れないか考えるが、実はこの馬鹿らしい実験も全くのおふざけということでもない。鏡のエリアのトリガーが『一定以上の光量』と仮定したとき、天井の照明をどうにか無効化できれば普通に帰れるのでは?と考えられるのだ。確かにそれは闇雲に死に戻るよりよほど建設的に違いないのだ。
「ネオンが付与魔法でオブジェクトを強化する?」
「いや、エリアの一部になってるときのオブジェクトはカウントが違うらしく付与魔法は原則効かないらしい。デばっかーさん達が検証していたはずだ」
ヌコォの提案に答えるノート。其れを聞いてユリンは苦笑いする。
「あそこって、真面目なことも検証してるんだねぇ…………」
「いや、あそこ打ち上げ花火的一発芸人育成所じゃないからな?」
思わずツッコミを入れるノート。ALLFOの知識を得るためにスレ巡回をしているネオンが「え、そうなんですか!?」みたいな表情をしたので思わずノートは笑ってしまう。
「まあ話を戻そう。確かエリアと一体化しているオブジェクトって魔法とかスキルとか小手先の能力は通用しないはずだ。だから純粋に物理エンジンの中で勝つか、デカい固定ダメージがあればおそらく破壊は可能な筈なんだ。…………固定ダメージ?……あっ」
そこまで言ったところで、ノートはセルフで答えを導き出した。
おおいずみ「あのジャージほしいなぁ…………」
うの「アイツから取るか………」




