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No.49 MONの暴力

(´・ω・`)隔離収容施設に『番外編 霜月家の似た物親子』を収容いたしました





 苦玉ショック後、タナトス作成の飴玉を舐めてなんとか復活したノートとユリン。



 次の日、全員でログインした『祭り拍子』の面々は、タナトスの企画の歓迎会に参加する運びになった。


「歓迎会なんてわざわざやんのか?」


「戦闘ばっかりなのもALLFOでは勿体無いしな。たまにはいいだろ?といってもタナトス達の成果発表会の側面もあったりするんだけどな。一応口頭でも定期的に報告はしてもらえるけどよ」


「百聞は一見に如かず、ってか?」


「そう。それにしても、その見た目でサラッとことわざが出てくるあたりちょっと違和感が、いてててててて、アイアンクローは無しの方向でお願いします」


 今回の歓迎会はミニホームに新しくノートがアクティベートした中庭型の庭園で開くことになった。1番最後にログインしたノートとスピリタスは庭園に出ると感嘆の声を漏らす。


「え、凄ぇなコレ。宮殿の中庭みてえじゃん」


「いや、うん、これは予想以上だな…………」


 ノートがレイアウトを弄って中庭になった庭園は30m×30mとなかなか広く、庭園は綺麗に整備された芝生が敷き詰められ、青々と茂る木々がチラホラと生えており、木造の回廊に囲まれていた。

 目をスーッと奥へ順に向けていくと、回廊から5mの幅を開けてタイル張りの人工の小川が流れており、そこに木の橋がかかっている。中央部には白いタイルが敷かれており、その上に机や椅子などが設置されている。さらに奥へ目を向けると黒い門扉があり、裏口からも出入りできるようになっていることがわかる。

 現在はロの字型を描く様にホームが作られているので本来はそこから出入りはできないのだが、ここもMONの暴力で特殊な出入口を裏口としてノートが設置したのだ。


 今のALLFO環境は夜。中庭は外から隔離されている擬似空間ではあるが、空には満天の星。星空を見えなくしてしまう野暮な人工的な明かりがなく、回廊の柱に等間隔で設置されたランプと、生えている木、タイル、小川の底のタイルから柔らかな光が出ていて明るさはありつつも、夜空の美しさを損なうことはなかった。

 その光景は22世紀現在、相当奥地、いわゆる秘境と呼ばれる場所に行かなければ見れないほどの美しい光景だった。


「これ幾らかかってんの?」


「1000万MONつぎ込んだ甲斐はあった、って言えばどう思う?」


「大した贅沢だが、この光景はオレの実家でも手を尽くしたってなかなか簡単にはみられねえ光景だぞ。むしろ1000万MON、ALLFO内の通貨で体験できるなら儲けものだろ」


 ノートとスピリタスが中央に向かって歩いていくと、それに気づいたユリンが駆け寄ってくる。



「ヤッホー、ノート兄!庭園ってもっと小さいかと思ってたけど、凄いねぇ!スクショいっぱい撮っちゃった!」


「俺も自分で作っておきながら結構びっくりしたわ。かなり綺麗だよな。それで、ヌコォとネオンは?ログインはしてるみたいだけど。あと他の面子は?」


「ヌコォはアテナと最終調整とか言ってなんかやってる。ネオンはタナトスの料理のお手伝い。

 ネオンって料理が趣味らしくて、タナトスに色々アイデア出したりしてたよ。

 ゴヴニュはスピリタスに贈るガントレットの最終チェックで鍛治室かな。

 ネモも色々と準備中、メギドはまだミニホームの外、アグちゃんはタナトス達のパーティー用の料理の味見役という名の摘み食い。

 バルちゃんに至っては自分の部屋で寛いでるから準備できたら呼べだってさ」


「相変わらずだな。悪魔勢はあくまで自由人なスタンスか」


「ノート、シャレとしては落第点だぞ」


「ちげえよ」


 NPCなのにヒエラルキーのトップはバルバリッチャという『祭り拍子』の不思議な現状だが、『祭り拍子』のメンバーは深く考えるだけ無駄だと思考を放棄している。


「開始時刻まであと15分はあるわけだが、ユリンは一体ここで何してんだ?」


「んーっとね、アイテムの整理とか公式ホームページやスレ読んだりとか色々やってた。そろそろイベントの第2弾があって、PvPの大会とアイテムコンテストがあるんだって。なんかグランドシナリオ的には、天使に成長の成果を見せる場、らしいよ。PvPもアイテムコンテストもかなり部門があって、パーティー戦、総合ソロ戦、前衛職系ソロ戦、後衛職ソロ戦、リアルソロバトル戦とか色々あるよ 」


「全員が主役になれるわけか。だが、リアルソロバトル戦ってなんだ?」


「スキルなし魔法なし、参加者ステータスは一定、使用武器も指定されたもののみを使用。ゲームとしてではなくガチで強い人を決定する戦い。いっちゃえばEスポーツとやってることは変わんないけど、武器やスキルで断念してた人も参加できるところがいいんだと思う。ボク達からすれば微妙だけど、報酬もかなり魅力的かな」


「アイテムコンテストは?」


「武器や防具から家具に薬品とあらゆるジャンルがあるよ。各部門にも種類があって、総合系、ビジュアル重視系、性能重視系、ユニーク系って分かれてる。報酬は僕たちから見てもいい感じ。

 あと、このイベント終了の翌日にALLFO第2陣が来るらしいねぇ。師弟システムとか護衛システムとかが実装されるんだって」


「なるほどねー。その護衛システムってのは、オンラインゲームでたまにある師弟システムと何が違ったりするんだ?」


「師弟システムは、第1期勢が師匠、第2期勢が弟子になれるんだけど、師弟組を組んでるプレイヤーにしか受けられない特殊なクエストが冒険者ギルドから発行されるんだって。

 あとスキルや魔法の伝授とかができるようになって、弟子に伝授させることができるとそのスキルや魔法の熟練値がかなり上がって派生先のスキルや魔法が習得しやすくなるっぽい。

 護衛システムは、第1期勢が第2期勢に助太刀した時に性質とかに補正がかかるシステム。勿論、モンスタートレインのマッチポンプや窮地に陥るまで待って助けたりするのはAIがしっかり判定するから無効。むしろ性質が悪くなるんだって」


「まだ1期勢だってそんな成長してないのに師弟システムとか実装するのか。パーティーやクランの勧誘合戦もありそうだな」


「その為のイベントじゃない?凄い宣伝になるから、スレも血気盛んだよ」


 ノートもログイン前にスレを確認してきたのでうんうんと頷く。


「今の日本サーバーは春秋戦国時代らしいな。前までは『DSC』とかって言うクランが一強だったけど、今は『青星の魔導師』『005』『25時間営業』『ぷーサンズ』『ここ掘れ太郎』『どんどこ探検隊』『ブライトメモリー』『November』『冬の魔物』『DSC』の10のクランが横並び。 PvP大会は賭けもできるが、予想は全くつかないらしい」


「ボク達も街に入れれば参加できたのに。エントリーが各ギルドでしか行えないとか悪意を感じる」

「そうだよな、オレPvP大会とかめっちゃでたい!リアルソロバトルで相手をぶちのめしたい!」


 バトルジャンキー共が目をギラギラしながら騒ぎ出すが、ノートは呆れた目で二人をみていた。


「やめとけやめとけ、ただの出来レースじゃねえか。もし俺らが参加できてたらタナトス達のお陰でアイテムコンテストまで制覇しかねないぞ。

 こちとら初期限定特典ありき、公式公認チート持ちなんだ。叩き潰すならもっと大掛かりな舞台を用意して、希望をある程度見せたところで叩き潰さないと。相手の牙を折らない程度に程よく痛めつけるのがいいんだよ。こちらを倒そうと何度でも立ち上がり策を練ってくる相手を、真っ向から叩き潰すんだ。

 目の上のたんこぶになってはダメだ。挑むべきものとしてのスタンスを取るべきだ。倒せると思い、希望に満ち高揚したところで、未知のアイテムやスキル、魔法で無慈悲に押し返し、相手が驚愕の表情を浮かべているところを圧殺する時の興奮と歓喜、最高だ!心が躍る!

 VRのPvPこそ人間の古い闘争の記憶、原始的欲求を刺激する!だからこそ辞められない!狂気の沙汰ほど面白い!人間の行動心理においてあれ程…………おっと、話しすぎた」

 

 目を爛々とさせながら饒舌に語っていたノートは口を噤むが、ユリンとスピリタスは顔を見合わせると肩をすくめる。


「こいつだって大概GBHWから変わってねえよな。えげつないことする時ほど楽しそうなところとか」


「ノート兄はね、GBHWを引退した後も他のゲームやっても基本的にPKしてたから。PKギルドとか作って結構凄かった時もあったんだぁ。他のPKプレイヤーと衝突したりね。

 PKって一歩間違うと過疎の理由だし、初心者狩りも厭わない連中をPKKしたりとか、罠仕掛けて建物ごと大規模に巻き込み自爆したりとか、マナーを守らないプレイヤーなんて大義名分を得たと言わんばかりにフルボッコにしたり、楽しかったなぁ」


「二人きりで面白そうなことしやがって!」


 GBHWに慣れすぎてしまったが故の、スリリングや興奮の足りなさの禁断症状。ノートとユリンもスピリタスが急にログインをしなくなったのでGBHWからは足を洗った。

 だがPvPへの熱は燻り続けていた。多感な時期の少年達に強烈な消えることない影響を与えたGBHWのその業の深さたるや。レーティングZにはきちんと意味があるのだ。


 ノートとユリンとスピリタスが改めて旧交を温めていると、いよいよ準備も整いだしたのかゴヴニュやタナトスが中庭に机を運び込みだしたことにノートが気付く。


「さて、積もる話は一時中断だ。アイツらの設営を手伝うぞ」


 ゴヴニュ達が恐縮する中、ノート達は彼らを手伝い歓迎会の最後の仕上げを行う。

 そして遂に、タナトス主催の『スピリタス歓迎会』がスタートするのだった。





(´・ω・`)ノートの本性がにじみ出るのだぁ

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【謝辞】

読者の皆様、PLネーム応募に参加いただき誠にありがとうございます。


皆様の提案して下さる名前は非常に面白いのですが「これどう考えても裏スレ民系だから[UNKNOWN]表記になってしまうなぁ……」と歯がゆい思いをしているPLネームも多々あります。

ですので、そんなPLネームには『私が設定を付けて隔離収容施設に収容』ということでもよろしいでしょうか?(イメージとしては前回の『100fb』みたいな感じです)

掲示板のPLネームを募集していたのに申し訳ございません。<(_ _)>

名前の感じからどのスレに割り振るかもきちんと考えたうえでの方針なので、誠に申し訳ないのですがご理解して頂けると幸いです。

無論、保証はできませんが収容後も場合によっては本編に登場することもあるかもしれません。


皆様の出してくださったアイデアはできるだけ無駄にしないよう努力させていただきます。


応募自体は5/29まで、一人“何度でもOK”!皆様の応募をお待ちしております。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今のALLFO環境は夜。中庭は外から隔離されている擬似空間ではあるが、空には満天の星。星空を見えなくしてしまう野暮な人工的な明かりがなく、回廊の柱に等間隔で設置されたランプと、生えてい…
[一言] >>VRのPvPこそ人間の古い闘争の記憶、原始的欲求を刺激する!だからこそ辞められない!狂気の沙汰ほど面白い!人間の行動心理においてあれ程…………おっと、話しすぎた でたよ、ノートの本性。…
[一言] 早く悪役ロールして欲しいな
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