No.40 えづけされるまおうちゃん
度々繰り返すようですが、感想頂けると非常に嬉しいです。ゲリラ投稿率上がります。レビュー?即刻レビュー感謝ゲリラ投稿しますよ、もちろん。
…………No.29にて私はこの様な宣誓を致しました。
そして今日、レビューを頂きました。
レビュー感謝ゲリラ投稿じゃああああああもってけどろぼおおおおおお!(スケジュールが火を噴く音)
レビューありがございまああああああああ(昇天する音)
「起きて〜、早く起きて〜」
「ん、んん?あれ、あたしはああああああ!?」
未だ黒縄の刺青が浮かび上がったままの幼女は、頬をペチペチ叩く硬くツルツルした肌触りで目を覚まし、その正体が自分を殺し得るナイフということに気づくと絶叫して飛び起きる。
「はい、黙って。アグちゃん、良かったね、地獄行き回避だよ」
「あ、あれ?あ、あたし、生きてるの?」
「そうそう。ビビらせてごめんね?でもその代わりバルちゃんは許してくれたよ。実はあれは全てアグちゃんを殺さないようにするための演技だったんだ」
「え、えええ!?そうなの!?」
「ほんとにごめんな。許してくれると助かる」
心底申し訳なさそうな顔をして謝るノート。
オリジナルスキルでキャパオーバーした彼らだったが、ユリンとヌコォはテンションが上がりすぎたために一時ログアウト。対照的に落ち着いたノートは考察などは後へぶん投げて、ネオンと共にアグちゃんに対して本格的に引き入れ工作を開始する。
「ほんとに……殺さない…………?」
「殺さなくとも、この後のアグちゃんの行動次第では折角俺が機嫌を直したバルちゃんにぶっ殺される可能性はあるね」
「ひぃ!?」
「だから、取引をしよう」
不安から恐怖に歪んだアグラットの表情。その表情はノートの言葉で一転、戸惑ったようにキョトンとする。
「まず、第一条件としてアグちゃんにはネオンと正式に契約を結んでもらいたい」
悪魔召喚における最も重要なポイント、それは召喚後に存在している。
まず抵抗するようなら戦ってブチのめし、からかってくるなら煽って言いくるめ…………第一段階として召喚した悪魔を交渉のテーブルにつかせる。
この時点で既に途轍もない労力を必要とするのだが、今回はバルちゃん無双で既にアグラットに抵抗権はないので自動スキップとなっている。
ここまで死霊召喚と勝手が違うのは根本的にシステムの一部分が異なっているからだ。
死霊召喚は、既に亡き者を手ずから蘇らせる、つまり自分で制御できない死霊を作り出すこと自体が、『120%の力を出す』みたいに矛盾を孕んだことなので、召喚した死霊は極々一部の例外を除き、当然最初から支配できている。
だが悪魔召喚は、地獄に巣食う『既に確固たる意志を持つ』、すでに完成された個体として悪魔を喚びだす。つまりは自分の制御できる以上の物がポンっと出ることもあるのだ。
なので、悪魔召喚した後は交渉のテーブルに座らせた後にようやく契約の為の交渉になる。
いわば此方は何を差し出し、相手は何を与えるのか、まさしく悪魔との取引というわけだ。
交渉決裂すると核弾頭ぐらいの魔法をポイッと置き土産にして地獄へ戻るなんてことをするのが悪魔であり、下手をすると悪魔召喚に消費したその他諸々は全部無駄になり強烈な呪い付きのデスペナを食らう。そう、リターンは十分にチートくさい死霊召喚のそれを大きく超えるが、その反面死霊召喚が霞むほどの巨大なリスクも悪魔召喚は抱えている。それほどまでに悪魔召喚の技能はイレギュラーな技術なのだ。
しかし思わず交渉決裂を決断するくらいには、リアル討論強者でもない限り悪魔からかなりふっかけられる。
超強力故に簡単には契約させない、と言うALLFO運営側の硬い意志が透けて見える。それに対して噛み付いたら速攻交渉決裂である。しかしノートの本領こそ、この口での交渉である。
「なんでもするって話だったよね?それで此方側で考えた条件なんだけどどうかな?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
要求
・アグラットはネオンの命令を厳守する
対価
・毎日三食おやつ付き+休憩時間+アグラット用の自室+自室の為の家具+バルバリッチャの横暴から出来る限り庇う
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「…………三食おやつ付き?」
「そう、三食おやつ付き。バルちゃんに聞いたけど、悪魔って食事がいらないらしいね?興味もないんだって?」
「必要ないことをする必要がないわ」
「んじゃお口開けて、ほいっと」
ノートがアグラットの口に入れたのは琥珀色の小さな固体。ノートに『口の中で舐めて』と言われ指示に従うと徐々にアグラットの目が見開いていく。
「なに、これ…………」
「鼈甲飴だよ。あ、もしかして味覚自体あやふや?だったら今味わってる感覚は“甘い”と言う感覚だよ」
なんといえばいいのかわからず、もどかしそうな表情のアグラット。その小さな飴をアグラットが舐め終わると、ノートはあらかじめ用意していたものをアグラットの鼻の近くへ持っていく。
「甘い、を味わった後はスッキリしたくない?」
ノートが持つお盆の上にはいくつものマグカップがあり、それぞれ別の飲料が淹れてある。ノートはアグラットの鼻の下を飲料の香りがわかるように通過させていくと、ピクッと反応があった。
「うん…………これは、ベリー系のフルーツティーか。他に飲んでみたいのものは?なんでもいいよ。俺的には苦味と酸味を体験からコーヒーがオススメ」
正規の錬金術はゴヴニュがやってくれる分、タナトスは完全に下位化錬金専門の錬金術師になっていた。
森で採取したものをノート達がジャンジャン貢ぎ、タナトスには自由に下位化錬金をさせているのだ。
そしてこれはまだノート達も気づいていないが、タナトスが下位化錬金で食料品を引き当てているのは料理技能がかなり影響していたりする。
タナトスの錬金術は発酵を進めたり素材の品質をあげたり調合(スパイス・調味料)にと、本来の用途から明後日の方向に全力で進みながら成長しているのである。
強力かつ有用な錬金術を完全に調理器具としか扱っていない事実。だが、お陰でノート達の食糧事情はとても贅沢なものとなっているのだ。
そんなタナトスが下位化錬金で生み出したコーヒー豆。酸味も苦味も強いが、焙煎して淹れてみればちゃんとしたコーヒーとなる。
現在は更に拡張した畑で『禁忌合成生物学者』などと言う物騒な副職業のネオンの手を借り品種改良に勤しんでいる。家庭菜園と料理を趣味にしたお爺さんにしか見えないが、ホームの掃除やログアウト中の装備品の整備などもしてくれるタナトスにはノート達も感謝しており、本人も楽しそうなので全面協力体制である。
閑話休題。
ノートはスプーン(ゴヴニュ作)でコーヒーを一杯掬うとアグラットに近づける。香りは嫌いじゃない、と答えたアグラットにコーヒーをスプーンで飲ませると、アグラットの表情がしわくちゃになり『うへぇ』と苦々しい表情になった。
「あ、あたしをいじめる気なの!?」
「ごめん、ダメだった?」
そう言うと残りのコーヒーをうまそうに啜るノート。アグラットは信じられないものを見る目でノートを見ていた。
「慣れれば癖になるんだけどね。多分、今しがたアグちゃんが味わったのが酸味と苦味。だけどここに牛乳と砂糖を入れます。混ぜます。どうぞ」
濃い黒がキャラメル色に近くなり、ノートがスプーンで近づけるとアグラットは嫌そうな顔をしたが、1回飲んでみて、と言われて渋々飲むと『あれ?なんか違う?』と言う表情になる。
「カフェラテだよ。飲みやすくなったでしょ?はい、それで本命のフルーツティー」
カフェラテの後のもったりとした口に、甘く爽やかな香りがスッと抜けるフルーツティー。アグラットの顔が緩む。
「………うーん、どうもかなり甘党よりなのか?」
その後も用意された数々の物を餌付けして実験してみるノート。
結果、アグラットの味覚は甘党でお子様味覚であると確定した。
「さて、アグちゃん。食の魅力が伝わった?今アグちゃんが味わったのは食というカテゴリーでも本当に極一部。実際バルちゃんとか結構食にハマってるし、悪魔も楽しめると思うんだよね。それが三食おやつ付きで毎日タナトスが振舞ってくれます。それと休憩時間も用意するよ。その休憩の為の自室や、家具もセットに付いてる。どうかな?」
「も、もっと奴隷のようにこき使われるかと思ってたわ…………」
「それは違うなアグちゃん。誰だってモチベーションが上がることがあった方が仕事のパフォーマンスも上がるってもんだ。さて、まだ要求するなら、話は別だけど」
「う、うん………………」
登場時のキャラは死んだと言わんばかりのしおらしい姿。ノートはアグラットの視線の先を追い、自分で書いた契約条項をなぞる。
「『命令の遵守』、いったいなにを命令されるかわからないけど、さっきアグちゃんはなんでもすると言った手前、言いづらい…………そうでしょ?」
そういうとノートは条件を書き足す。
「『アグラットが本当に嫌がることは無理強いしない』でどうかな?」
悪魔との契約は、もし人間側が破ればそれ相応の報いを受ける。
要するに、悪魔に裏をかかれるような契約を結んでしまえば悪魔はそこに速攻で付け入ってくる。だからこそ、ノートの書き込んだ条件にアグラットは思わず息をのむ。
「言いたいことはわかるよ。この条件はアグちゃんの主観の判断だから、幾らでも契約破棄ができることはわかってるよ。だけど俺はアグちゃんとは仲良くしたい。なのでこう書き足す」
『アグラットは契約破棄決定の前にノートに相談する。不満点の解消はそこで交渉の上に行われる』
契約破棄そのものに枷をつけることでネオンのリスクヘッジを分散。ネオンは最初は『自分だけがリスクを負えばいい』と言ったが予想以上に大事になったのでそれをノートは許さなかった。
故に更に不確かな条件を盛り込む。
「俺、悪魔とは仲良くしたいんだよね。だけど第一印象がアレだったし、アグちゃんには俺達が信頼に足るものとして欲しいから、この条件を入れた。どう?」
「こ、こんなの……………「俺は是非ともアグちゃんに仲間になって欲しい。一期一会な悪魔で魔王に会えるなんてもう二度とないかもしれない。だからこそ、こうして条件を提示している」…………本気で、言ってるの?」
「個人的にアグちゃんが気に入った、だと理由としては弱いかな?」
ALLFOは途轍もない自由性があり、AIの作り出すNPCの感情模倣精度の高さでは思わず相手がAIと忘れる程高い。それもそのはず、第7世代VR機器は言うなれば人間の備える機能全てを掌握しコントロールできる技術であるとも言える。
どのようなシチュエーションでどのように脳は働き、どんな行動を取り得るのか。AIと言う物が本格的に登場してから早一世紀、ビッグデータは情報を蓄積し続けている。そして一部の天才は、人間の行動を完全チャート化してみせた。
そう、100年かけて蓄積された人そのもののビッグデータと人類行動学なども元に、このシチュエーションではこのように行動し、このようなシチュエーションではこう動くだろう、と言うある種の高次元なプログラムをAIの作り出したNPC一人一人にALLFOは搭載したのだ。
人間の行動や思考形態をトレースし、反映し、自己学習を重ねる。そしてALLFOのAIは“今現在もなお数百万人のプレイヤーの情報を集め現在進行形で更なる進化をしている”のだ。
だが、突き詰めていけば人間も原理としては変わりない。殴られれば痛みや怒りを感じ、美味しいものを食べれば気分が良くなる。外的な要因に対し即した行動を取っていくのは人間だって変わらない。
とどのつまり、ALLFOのAIの作り出したNPCはまさしく“哲学的ゾンビ”と呼べる存在となっている。ざっくり説明すれば、中身に感情があるか無いか、それだけしか違いがない。
喜怒哀楽もあるように見せることも、感情や趣味嗜好に明確な理由付けを行いチャート化して“一人の人間を創る”ことも可能なのだ。
閑話休題。
つまるところ、ALLFOのNPCは人間と同じように思考し、感情を表す。それを完璧に『模倣している』ものであり、NPCを相手すると言うことは好感度非表示RT形式選択肢無限のギャルゲーをしているのと変わりない。
故に『どうNPCを口説き落とすのか』が重要になる。
ノートはバルバリッチャと交渉ができた時点で、NPCの凄さと本質を理解していた。そしてさりげない会話ややり取りの中で、相手がどう言う“人物”なのかをノートは静かに見定めていた。それほどまでにNPCに明確な自我があることを見抜き、“人間として”分析しようとしていた。
それはある種の職業病ではなく、ノートの昔からの悪癖でもある。
そしてノートはもう一つの事実に気づく。
ALLFOがゲームである以上、作られたNPCには設定がある。
そうであるが故に、人格トレースが若干甘い部分が“意図的に作られている”と言うことに。
具体的に言えば、嗜好や性格がかなりわかりやすいのだ。トレースされた思考よりも設定の方がそのNPCを構成する要素として上位に位置しているのである。
バルバリッチャの露骨な好感度の上昇や、メギドの食とバトルジャンキー、アテナの罠ジャンキーさなど、わかりやすい攻略ポイントのようなものがちゃんと用意してあるのだ。
それを確信しつつあるノートがアグラットに下した評価は『見た目通りの性格(ただし痴女スタイルは考慮しない)』である。
お子様味覚でバルバリッチャよりも捻くれずもっとシンプルな思考形態。
バルバリッチャが“悪意”と言うことに並々ならぬこだわりを持ち、“大悪魔”としてのプライドが高い人物なら、アグラットは“魔王”と言うことがステータスなガキンチョである。
もっと噛み砕くなら姉貴分にとても弱いガキ大将である。
アグちゃん「どう、あたし強いんだから!」
バルちゃん「ほぅ〜」
アグちゃん「嘘ですごめんなさい」
という図式である。
自分より上がいると途端に借りた猫のように縮こまるタイプはたまにリアルでもいる。アグラッドはまさにその典型的なタイプだった。
そして子供っぽい故に変な拘りがない。ならば「変な心理戦を仕掛けずストレートな言葉こそ有効である」とノートは判断した。
恐怖心をとことん植えつけた後から、謝罪に加えて餌を与え、甘々の条件を提示。
ヤンキー傘さし理論のように、最初の印象が下がっているからこそ上がる時は一気に上昇する………………そこにオリジナルスキル〔汝、我の奴隷なりや〕とネオンの『パンドラの箱』の幸運・極大が作用し交渉におけるクリティカルを叩き出す。
「あ、あたし…………みんなのことうじ虫未満って言って…………バルバリッチャ様すごい怒ってて、もうダメだと思ったのに…………」
「ま、アグちゃんからすれば、今の俺達ってそうなのかもしれない。だけど、俺たちは成長することにかけては、アグちゃんより上だと思ってる。
アグちゃんは生まれた時から魔王で強さしか知らないかもしれないけど、弱者から強者へ成り上がっていくのもなかなか乙なもんだよ。その様を、アグちゃんに見守ってほしい。今まで知らなかった楽しみを知ってほしい。
うじ虫未満だと思っていた存在が駆け上がっていく様を驚きと共に楽しむ。悪魔的に刺激的だと思わない、魔王ちゃん?」
ノートが楽し気に問いかけると、アグラッドもノートにしっかり目を合わせ頷く。
「バルバリッチャ様が貴方を認めている理由が……ちょっとわかった気がするわ」
「そうか?じゃあ…………」
ノートが脳内で念じるとバルバリッチャからの笑い声が脳内に聞こえ、アグラットから黒縄の刺青が消える。
身動きができるようになったアグラットは体をほぐすように動かすと、スッと立ち上がりネオンに向けて手を前に突き出す。
「《最上級契約・ピストポイティコ》」
闇の雲のような物が手から出てくると、それは収縮してやがて板になる。
それはお互いで受理した事項が明記されて契約書だ。
「さあ、名前を書いて頂戴。それで契約成立よ」
ネオンは言われるままに契約書に「Neon」とサイン。
契約書が突如として発光し、その光がアグラットとネオンに吸い込まれる。
下準備が多かった割には安っぽい演出だな、とノートは心の中で思ったが、次の瞬間、アグラットとネオンの脚元に魔法陣が出現する。
「《最上級契約を魔王アグラット・バット・マハラトの名においてネオンとの間に締結す》」
ネオンとアグラットの足元の魔法陣から別の魔法陣が数多く等間隔で浮かび上がっていき、まるでネオンとアグラットをそれぞれ支柱にした塔のようになる。
そして魔法陣がその中心であるネオンとアグラットに向かって次々と収束していく。
上から次々と収束し、足元の魔法陣も収束。その度に黒い光のエフェクトがキラキラと舞い上がる。
「《最上級契約・成立》」
最後はジャラジャラと黒い鎖の幻影がネオンに巻きつき、鎖の幻影がカッと光を放つと鎖の先をアグラットが掴み、幻影は霧散する。
「…………これで契約は成立よ」
「特に、変わったことは、ないですね?」
「そうなの?」
ネオンは呆気なく終わった召喚に首を傾げるが、アグラットは首を横に振る。
「強化は契約条件にないもの。命令するなら別だけど」
そのくらいならどうと言うことはない、という顔のアグラット。ネオンは暫し考えた後、命令をした。
「べ、べべ、別の命令でもいいですか?」
「別?」
「わ、私の命令権をノートさんに譲渡しますから、ノートさんに、絶対服従してくださいっ」
シーン…………っと静まり返る室内。
今まで積み上げたジェンガを達磨落としのハンマーで横から思い切りぶん殴るかのようなネオンの発言に、ノートの思考が一瞬飛ぶ。
「………いいわよ」
「ちょ、ネオンっ……っていいのかよ!?」
ネオンに詰め寄ろうとするノートはギュンと方向転換しアグラットに詰め寄る。
「だって、結局は貴方がここのトップでしょ?力関係くらい見てれば馬鹿でもわかるわよ。
それに、バルバリッチャ様が1番信頼し、認めているのも貴方に違いないし、となれば貴方に従う方がバルバリッチャ様も好意的に捉えてくれると思うの、たぶん」
「あっ、思ったよりすごくマトモな返答。でもネオン、頼むから心臓に悪いことは…………」
「わ、わたしが誰かと会話するに加えて、め、命令なんて、無理です!今のでいっぱいいっぱいっ…………!!すみませんっ…………!」
「あっ、うん、ごめんね。それは元の性格でも苦手そうだから、結果オーライでいいか…………」
とりあえずアグラットが受諾したので契約は履行され、アグラットの指揮権が完全にノートに移る。そしてノートは改めてバルバリッチャたちにアグラットを引き合わせたが、アグラットの選択は正しかった。
明らかにNPC達がわかってるなコイツ、みたいな生暖かい目でアグラットを見たからだ。
「そうだ、アグラットよ、お前にはこれをやろう」
だがバルバリッチャはホッとしたようなアグラットを絶望のどん底へ突き落とす。
ガチャっとアグラットの細い首に嵌められた漆黒のチョーカー。金具までついたかなり立派なチョーカーだが、のたうち回る亡者や髑髏の意匠までされているのはどういうことか。
「最高級の呪具だ。もし主人らに逆らったら…………どうなるか。地獄行きを選んだ方が良かったと思うかもしれんな」
孫悟空の頭にはめられた金の輪より悪意1000万倍ぐらいのチョーカーにサーッとアグラットの顔から血の気が引くが、これだと契約内容が意味なくなるとバルバリッチャを取りなし、チョーカーの凶悪さを下げてもらいちゃっかりアグラットの好感度と忠誠値を稼いでいるノートがいたりするのだった。
◆
「さてアグちゃん、君の仕事はすでに決定してます」
「そうなの?」
熱烈(意味深)なバルバリッチャ達の歓迎を受けたアグラット。約束通りアグラットの為の自室を作り、ノートはアグラットの自室で仕事内容の取り決めを始めた。
「そうそう、やって貰いたいのは主に虫の飼育。後は悪魔の定期生産。
施設は今から作るし必要な道具もアテナとゴヴニュが急ピッチで用意してるんだけど、食を豊かにしメギドのモチベーションを維持するにはやはり飼育した方が手っ取り早いから。
最近わかってきたんだが、タランチュラは蟹の味するし、ゴキブリは何故か海老の味する。蟻はりんご酢、甲虫は鶏肉…イナゴ、蜂の子、カエル、タガメ、芋虫、蠍、百足、カタツムリ……………うん、特殊な調理すると虫も大概美味いことが判明してる。てかすげえ美味い。
ゴキブリはユリンとヌコォは喰わないけど、森林のゴキブリは東南アジアでも貴重なタンパク源として………………ま、それはさておき、アグちゃんのおやつ充実計画に必要なんだよ。
必要な餌はタナトスが錬金したものとか育てた植物とかあるから、病気になっていないかとか気をつけてくれればいい」
アイテムボックスで繁殖の為にストックされた昆虫系、その飼育の為にノート達がかっ飛ばした金額はRM1万円分(ユリンから譲ってもらいユリンに固く断られたがリアルマネーを支払い済み)。食用の為に昆虫育てようぜ!というノートの前々からの提案が今なされたのだ。
その為だけに作られた昆虫飼育室は、ジャングルと昆虫博物館の悪魔合体したような部屋。各ブロックで湿度や環境まで全部操作できてしまう課金部屋である。
こうして定期的に昆虫飼育をしてくれる人員が増え、『祭り拍子』の昆虫食はやたらと発展していくのだった。
グロ注意。あれ?遅かったですかね?
ノートさんポジティブシンキングだからやたらチャレンジャーな部分が多めです。




