No.152 天遥理虚❻
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽イア!イア!ゲリラ!
∧__∧ ゲリラdaー---!
( `Д´ )
(っ▄︻▇〓┳═゜☆
/ )
( / ̄∪
ドゴォォォォン!!
; ' ;
\,,(' ⌒`;;)
ストック!!,' (;; (´・:;⌒)/
∧_∧(;. (´⌒` ,;) ) ’
Σ<#;`Д´>((´:,(’ ,; ;'),`
⊂ヽ ⊂ ) / ̄ ̄ ̄/
 ̄ ̄ ̄\/___/ ̄ ̄ ̄
泥の弾丸と闇の弾丸が飛び交い、死霊達が入り乱れる。
ノートはメギドを使い鎌鼬とヌコォの泥人形にプレッシャーをかけ続け、妨害に特化した中級のゴースト系を使いネオンの泥人形を徹底して妨害し続ける。鎌鼬とヌコォの攻撃は対人では必殺級の威力がある。エイム力もオリジナルには少々劣るが、一般的なプレイヤーよりはしっかり当ててくる。この弾丸を受け止め切れるのは防御型に切り替えたメギドのみ。弾丸に魔法的な付与があったら無理な作戦だったが、流石に弾丸にネオンクラスの魔法は付与されていなかった。
ノート達にとって前衛組が天敵なように、コピー泥人形たちにとっても純前衛特化型のメギドは非常に相性が悪い。オリジナルの動きをある程度トレースする鎌鼬とヌコォはメギドを抑え込むことに専念するしかない。なぜならそれが現状における二人の“生存の最適解”だからだ。
あと警戒すべきなのはネオン。ネオンは2人以上に一発で集団を沈めることが可能な能力を有している。規模、威力共にそこらのボスよりも凶悪だ。だがコピー泥人形のネオンの使う魔法はオリジナルほど凶悪ではなく、オリジナルネオンが余裕で相殺できる程度だった。
そしてノート以外にとってはなにより助かったのが、コピー泥人形のノートの性能の低さ。
ノートの怖さは本人以上にその横に常に寄り添っているユリンたちが良く知っている。
ノートの初期限定特典である死霊術師の能力自体には一撃必殺級の能力はない。無論、自爆特攻を可能とする死霊を使えば似たようなことは再現できる。スピリタス達に匹敵するパラメータを持つデュラハン系の死霊、自爆特攻でネオンに匹敵する魔法を放つゴースト系、ユリンと同様に飛行を可能とする鳥系死霊、ヌコォと同じように相手の能力を奪ったり呪いで封じたりすることに長けた死霊――――魂のストックを消費することでありとあらゆる状況でも行動を可能とする。
だが、ノートの真価は死霊術師としての能力ではない。持ち駒を最高効率で操作し、難解な状況にも即座に対応し、そして我の強すぎる駒同士の間に自分が入ることで連携を可能とさせる指揮能力の高さだ。様々なゲームで指揮役として活動し、多種多様な役割をこなし数々の作戦を成功させてきたこの経験がノートの強さだ。
もし、コピー泥人形が本当のノートと同じ動きを可能とするなら、そもそも自分とヒュディを切り離して動かない。ヒュディを最大限利用して、あるいは自分が死んでもヒュディが生きていれば勝ちだと判断して自爆前提の悪辣な布陣を引いたり、女王蟻戦で使用した外道魔法シリーズを使って耐久戦を強いるだろう。メギドやネモ、最悪のパターンではバルバリッチャを召喚した瞬間にほぼ勝負は決まる。
それに比べたら、周囲に指示を出すわけでもなく、散発的に死霊を召喚するだけのノートのコピーにはさして脅威を感じない。そう、使い手が面倒な奴なだけで、死霊術師は本来器用貧乏な役職。猛威を振るうような存在ではないのだ。
ノートのコピー泥人形が召喚したスケルトン軍団に対して、ノートはチャリオッツ系統の死霊を召喚し突撃させる。スケルトン型はMP効率が図抜けており使い勝手が良い代わりに死霊の中でも全体的なパラメータは低めだ。防御力も高くない。
そのスケルトンに対して物理的な特攻を仕掛けられるチャリオッツはスケルトンを轢き砕きノートに迫るが、コピー泥人形のノートは耐久力の高い大柄なゾンビを召喚してチャリオッツに対応。チャリオッツの突撃を凌ぐ。
「へー、基礎中の基礎は押さえているのか」
チャリオッツの突撃は怖いが、それさえ止めて横転させてしまえばほとんど無力化できる。コピー泥人形のノートが選択した手段は順当な物だ。
続けて女王蟻戦で使用した梟のゴースト系列の死霊を召喚。コピー泥人形のノートも鳥型のゴーストを召喚して対応するが、梟型の死霊は特攻を仕掛けると見せかけて魔法を発動。
鳥型のゴースト諸共ノートのコピー泥人形を魔法の雨が襲うが、ノートのコピー泥人形は拡散型の闇魔法で相殺した。
続いてアテナ系列の死霊を召喚、トラップを設置してヘイトをコントロールしようとするが、コピー泥人形のノートはグレゴリ系列の死霊を召喚して攪乱を画策する。
ネモ系列の死霊で花粉テロを起こすが、コピー泥人形のノートはリッチ系列の死霊を召喚して火属性の魔法で花粉を焼き払う。
対人戦の心得もできている。対処方法はすべて及第点以上。ノートはニヤリと笑いコピー泥人形のノートと向き合う。
「アオさん、あの、その、楽しんでませんか?」
「ん?ああ、悪い悪い」
非常に楽しそうにコピー泥人形のノートと知恵比べをするノート。その様は楽し気で、思わず怪訝そうにネオンはノートに声をかける。
「1対1だと潰すのは難しかっただろうが、とても残念だ。コピーのお前に『仲間を頼る』という事ができたら、数倍は厄介だったろうに。立ち位置の確認と仲間の重要性を認識できていないのがお前の敗因だ…………遊び相手としては良かったぜ」
コピー泥人形のノートはノートとのやり取りで徐々に後ろへ移動していたが、ドンッと別の人物にぶつかる。メギドに徐々に追い込まれたヌコォと鎌鼬のコピー泥人形だ。近くにはゴーストに引き付けられたネオンのコピー泥人形もいる。
その泥人形たちにネオンが魔法を放つ。対人に於いて凄まじい能力を持つ破壊特化の魔法。反船にて習得したユニークマジックである多段火炎魔法〔カラミティハウィツァ〕。一撃目で火炎耐性と呪怨耐性を削り、二撃目で身動きを取れなくし、3、4、5と続けて火玉がその身を焼き尽くす。
コピーと言えど本質は“泥”。創造者である雲泥の遺児ヒュディと同様に火には弱い。コピー泥人形は一気に纏めて火に呑まれて朽ち果てた。
◆
ノートとネオンがコピー泥人形に対処している一方で、ユリン達も暴れまわるヒュディをノート達に接近させないように攻撃を仕掛け続けてヘイトを集め続ける。
「おい、どうすんだ?」
「指示は早めにねー」
ノートが居ない場合、指揮をするのはヌコォの役目だ。相互理解が進み、スピリタスもトン2も直ぐにヌコォに指示を仰ぐ。
「テンにまずヒュディを誘導をしてもらう。レドとキンは並走して誘導援護、ギンと私は温存する」
「も〜!一番面倒なこと押し付けやがってぇ!」
その要望に対して直ぐに応えるヌコォ。
ユリンは文句を言いつつもクールタイムが回復した翼をはためかせてジャンプ。最早何も言わなくても準備していたスピリタスの手に乗ると思い切りぶん投げてもらい高速で飛び立つ。
ユリンは振り回されるヒュディの腕を華麗に掻い潜り、ネオンの魔法が付与された凶悪な投げナイフをばら撒いてヒュディにダメージを与える。
予想外の反撃に悶えるヒュディに突撃して頭から背中までバッサリ斬り裂き、仕上げに一応持たされていた拳銃をブッ放す。
精度は低くとも至近距離なら流石にユリンも当てられる。これがトドメとなりヒュディのヘイトが一気にユリンに集まった。
同時にスタートを切るスピリタスとトン2。ヒュディの横を通り抜ける隙に攻撃を叩き込み、そのままユリンを追いかけて完全にヒュディを引きつけてノート達とは反対方向へ誘導する。
「…………流石」
即席の作戦でありながら前衛3人はヌコォの予定通りヒュディを動かした。簡単なようでいて如何にこれが難しいかよく知っているヌコォは思わず感心する。
まず作戦を理解し、そして周囲の動きを計算する。
非VR時代のオンラインゲームでも同じことはしていたように思えるが、あくまでキャラが取れる行動はコマンドの中で許された動きだけ。
一方でほぼリアルに近いVRでは歩幅も視界も攻撃方法も変わってくる。
この差が如何に大きいかは連携をした際に特に痛感することになる。
相方がAボタンを押したら自分はBボタンを押せばOK、みたいな話ではないのだ。相手の動き、ペース、呼吸に合わせて行動しなければ連携はできない。
それができて漸くスタートライン。連携攻撃をする以上今度は敵の動きにも合わせる必要がある。
それがせいぜい人間サイズなら対応できる人も少なくはない。だが、それ以上のサイズになってくると途端に難易度が変化してくる。
連携を妨げるのは、対象の大きさと人間が本能的に感じる恐怖。
当然のことながら巨大な相手に接近戦を仕掛けると移動できる場所が限られる。足運びを間違えれば圧倒的なリーチでブン殴られて詰みだ。
よって大きさに惑わされず冷静な行動が必要になる。
だが、いざ自分よりも巨大な相手に近づくと発生する恐怖が足を竦ませる。これは生物として当たり前の現象ではあるが、どこかで割り切らなくてはならない。
ヌコォは普段は普通に強いのに、大きな敵だったりすると割り切れずに頭が真っ白になってしまう人を何人も知っている。
その点、『祭り拍子』の面々は全員恐怖で動けなくなることはない。今回は攻撃に参加してないが、ネオンも鍛えたおかげで生存本能からくる恐怖は殺せるようになっている。それがどれほど恵まれているか、指揮をする立場にとってどれほどありがたいかヌコォはよく知っている。
ユリンたちが引きつけに成功したら、次はヌコォと鎌鼬の出番だ。前衛職は火力を出せるし近距離にいることでヘイトを引き付けることに特化しているが、相手が近接攻撃をしてくる場合にはそれ相応のリスクも背負う。無論、今のヒュディの攻撃で後れを取るとは思わないが万が一という事もある。
ヌコォ達はユリンたちの進行方向に回り込んで発砲し、ヒュディに着実にダメージを与える。本来はデメリットである鎌鼬の仮面のヘイト集中の効果も今は非常に役に立つ。
こうしてノート達はヒュディと泥人形の分断に成功。ノート達が泥人形たちを仕留めるまでヒュディの攻撃を軽くしのぎ、合流したところで一斉に攻撃を仕掛けた。
◇
容赦ない発砲と魔法、炎上ダメージ、そしてフィールド破壊の相乗効果。
遂に雲泥の遺児ヒュディから水気が失われ、ボロボロに乾き切った土人形と化して朽ちた。
膝から崩れ落ちたヒュディはバラバラに砕け散り沈黙する。
フィールドに篭る噎せ返るような鉄錆の匂いと気色の悪い熱気。ノートは顔についた泥を拭い荒く息を吐き出す。
対処方法がわかっていると言っても、直撃すれば全て一撃で全員を沈めてくる威力がある。故に気の抜けない戦闘が続いた。ほぼ徹夜明けに加えてリアルでもゲーム内でもドリンクのブーストで動いていたノートの脳はそろそろ限界を訴えていた。
これで終わり。
そのはずだ。
ボスは第二形態が本番。海外勢も手こずったと聞いている。確かにこのクラスの敵は手こずるだろう。
裏を返せば、三段階目は、無い。
しかし、ノートの眼前に映ったのはボスの撃破を祝福する豪華な演出では無かった。
星々が煌めき悲しげに唄う。
BGMが切り替わる。
砕け散りフィールド中に散らばった土の塊から何かが揺らめきながら立ち上り、そしてフィールド中央に集まっていく。
「聞いてねぇぞ、こんなの…………」
「おい、クリアじゃねぇのかっ!?」
「ああ、まだ終わってねぇ」
「アオく〜ん、オリスキ使う〜?」
「いや、待機だ。博打になるが最初から方針変更は無し。各自備えろ」
ノートは試しに魔法を放ってみるが、中央の光の集合体にはまるでダメージを与えられていない。狂気のスムージーをお代わりしながらノートは靄を睨みつける。
「ピン、一応聞くが心当たりとかある?」
「あ、ありません。海外のスレッドでは、2段階目で終わりと書いてあったはずです…………お、恐らく」
「となると、フルメンバー参加による特殊形態か?でもそれで別形態をわざわざ用意するか?」
普通に考えて、VRで1体の敵を実装するのには非常に色々な技術が必要になるので企業側としては出し惜しみなどしたく無いだろう。
ボスの形態一つとってもそうだ。わざわざ別の形態を用意するなんて非常に手間がかかるし、実装するにせよ苦労した分プレイヤー全員と戦ってほしいのがクリエイター側の本望だろう。
それとも、その気持ちを無視できるほどの理由があるというのか。
開発のこだわりには最早狂気すら感じる。
本当に人間の手でこんな物が創り出せるのか?
本当にこの世界は虚構の世界なのか?
冷静に考えれば馬鹿馬鹿しい問いがノートの中で浮かんで消える。しかしそう思う迄に目の前で起きている光景は神秘的で絶望的で、何故か現実よりも真に迫っていた。
空が白く染まる。
星空が呑まれて消える。
靄の塊の上空にスッと大きな黒い線が走った。
何かの切れ目の様な、謎の線。
その線がパクリと開けば巨大な目の様になる。
だがその瞳孔には“宇宙”が満ち、黒目の部分には極彩色の触手が蠢いていた。
それはまるで天使の光輪の様で、その悍ましい輪の下にある靄が遂に形を取り始める。
主な形状は雲泥の遺児ヒュディの第1形態と同じ。
人型の4本腕に結局最後まで使ってなかった2対の翼めいた器官。管が絡まり合った様なボディ。のっぺりとした顔に縦型の口。
けれど既に泣いて蹲る者の姿はなく、背を伸ばし此方を睥睨する。
四つの手を此方へと伸ばし、手で六角形を形作る。
同時に背後に大量の記号が螺旋状に渦巻く光背が出現、消えていたパラメータが現れる。
【真孵醒・±ÀÅ¥¤«¤éÇ礤¾å¤¬¤ë¼Ô】
遂に名前さえバグった存在へと変化したヒュディ。
全くの別物へと変身したボスとノート達の戦闘は激化する。
(# ゜Д゜)クソゲーーー!!(byオルケ○トラオマージュ
ちなオル○ストラ戦でやさぐれてた下までしか読んでないからあと半年くらい寝かせて最初から読みたい(今あんまし余裕がねぇ。年末ってクソ)
あとノートが飲んでたドリンク剤のアイデア募集しとくね(ライオットブラ○ドは禁止カードだぜ)
(自分でやると歯止めが効かない予感がするので敢えて応募式に)




