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No.125 全部水洗い(世界規模)

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽イアイアクトゥルフフタグンッ!




 原初、暴れ狂う炎が空より降り注ぐ。

 大きな影が空を覆う。影は無慈悲に炎の豪雨を齎す。人々はなす術もなく滅ぼされていく。

 抗えぬ大いなる厄災。

 逃げ惑う人々に救い来る。天使が翼を広げ救い賜う。


 荒れ果てた大地、天使は人々を新天地へと導く。

 長き旅の果て。其処は何も有らず、故に自由であった。


 天使の隣には神の使いたる獣(メダルに描かれていた生物?)も控えていた。獣は災いから人々を、富を護った。

 人々は神を、天使を、神の使いを崇め、神より与えられた叡智により長き繁栄と平和を築き上げる。


 然し、突如として人知れず現れた1匹の悪魔が世を掻き乱す。

 天の導きを妨げ、使いを欺き、人々に誤った法を説いた。

 世は乱れ、戦乱が起こり、天の使いは空に吼える。


 天から稲光(恐らく神の怒り)が落ち、人々は逃げ惑う。

 そして大地は再び更地になり、聖別を免れた一部の人のみが新天地へと導かれた。


 

 モデルとなっているのは『ノアの方舟』だろうか。

 穢れた生物を史上最強の癇癪持ちである神が、お気に入りの生物だけ船に避難させて後は全部水洗い(世界規模)をやってしまったというトンデモエピソードである。


 神により恵みが齎され、滅ぼされ、そして再興する。

 若干マッチポンプな感じが否めないがとやかくは言わない。


 あくまでノート達が絵の文様から予想した物語だ。史実かどうかなど知る由も無い。

 もしかしたら大間違いの解釈かもしれないが、現状ではこれが1番正解に近い分析なのではないかと信じるしかないのだ。


 というのも、解釈の都合上幾つか目を瞑っている不自然な点がある。


 まず最初の逃げ惑う人々。

 これに関しては発端となる厄災がなぜ起きたのか描かれてない。

 加えて、逃げ惑う人々の様子も服装が違うというか、色々とよくわからない意匠が施されている。

 言葉を選ばないと、ちょっと近代的な雰囲気なのだ。災厄の前の発展していた文明の暗示か、あるいは隠し絵の都合上なのか、それとも意図した物か、今のノート達には判断できなかった。


 次に、『悪魔』に関して。

 邪悪に描かれた存在だが、一番最初に登場した時の絵は法衣の様な物を纏っている。恐らく人に化けていたのだろうが、天使勢の監視はそこまでザルだったのか。


 それにバルバリッチャやアグラットから度々漏れ聞こえる『悪魔』にしては、中々嫌らしく賢い手を使っている。

 どうにもバルバリッチャを始めとして悪魔勢は脳筋思考が多い。力こそ全てで有り、知恵を軽んじては無いが最終的には力と物量で押しつぶす様なスタイルは何処かのお国ソックリのスタイルなのである。


 また、その災厄の引金となった者の末路も描かれていない。

 ノートが聖女と対峙した時に感じた、機械的な思考と執念深さ。そんな教会が災いを齎した存在を野放しにするのだろうか?

 それとも、『野放しにせざるを得ない理由』があったのか。


 幾つか予想は立てられるが、どれもこれも少し違和感がある。

 

 だが、今は絵の解釈について論じる必要はない。

 正解と思われる順番に、慎重に絵を押し込んでいく。すると、遂にガチッという重い音が聞こえる。


「くるか……?」


 さて、一体何が起こるのか。ワクワクしながら皆で待っていると、ズズズと噴水の模様を形成していた部分が複雑に回転し、新たな模様が浮かび上がる。

 それと同時に、噴水の正面にガチャガチャのコイン投入口の様なコイン1枚が入りそうな小さな縦穴が空いていた。


「うそ……だろ……?」


 とんでもギミックで有名な某バイオでハザードなゲームも匙を投げるほどの難解ギミックをゴリ押しで解き明かす先に待っていたのは、第二の地獄の作業だった。





 最悪な事に、小さな縦穴と広場に集められていたメダルの大きさはほぼ同じ、メダルをちょうど入れるのに良さそうな一回りほど大きめの穴だった。


『頑張ったね、お疲れ様。じゃあもっとハードに行こうね!』


 まるでそう言わんばかりの第二の試練。

 新たに浮かび上がった模様も気になるが、それ以上に面倒な事になった。

 ノートは現実逃避しながら適当にメダルを一つ手に取り、投入口に入れてみる。


 すると、穴は塞がっていないのにメダルが見えない力に押し返されて一向に入らない。


「…………マジかよ」


「まさか、この中から正解を探すって事かしら?」


 思わず顔を見合わせるノートと鎌鼬。

 後ろを振り向けば集中力を完全に失いユリン達が項垂れていた。

 飄々としているトン2まで反応が薄い事からも先程のパズルが如何に面倒だったかよくわかる。

 因みに、敵地にしてはやたら無防備なのはグレゴリが新たに獲得した能力のお陰である。

 非常に有用なので積極的に熟練値を稼がせているが、成長性に大きく欠けているアンデッド型故に通常の使い魔からすれば牛歩の歩み。

 アンデッド型が一点の能力に関して成長を促すには、熟練値を貯めた上で更に魂などを貢ぐ必要があり、いつもは万能に感じる死霊術師の辛い部分にノートは直面していた。

 

 それでも尚、今回の能力ばかりは軽視できない代物だったのだ。


 そんなグレゴリに警戒を任せているのをいいことに、ノートまでもが駄々っ子のようにひっくり返る。

 

「やだー!もう無理だ〜!」


 多分、それだけは無いだろう。

 そんな甘い考えをしているアホを地獄に突き落とすこの所業。開発の求めていたリアクションをノートはしてしまっていた。


 ノート達の考えていた通り、この噴水に纏わる謎は色々な場所でヒントを得て初めて挑むものだ。ゴリ押しでは非常に厳しい戦いとなる。

 無論、無理では無い。開発陣はプレイヤーの自主性を、新しい発想を尊ぶ。誘導に従わないのも尚良しという訳だ。

 ただ、その道のりが異常に厳しいというだけで。


 一見タダのメダルにしか見えない物から正解を引き当てるだけの簡単なお仕事。だがしかし、そもそも何を以て正解なのか、これがわからない。

 1つ1つ試すなどあまりにナンセンス。先程の模様パズルも大概だったが、あれはまだ『絵』から予測ができただけかなりマシだった。


 バルバリッチャに見て貰えば正解がわかる可能性がある。しかし性格的に答えが分かっても相当根気よく交渉し色々と差し出さないと頼み事を聞いてくれる確率は非常に低い。

 タダでさえ新しい悪魔召喚の件で頼み事をしているのだ。自分たちが楽をしたいという理由だけ依頼などしたら、何を求めてくるか分かった物では無い。


 では『鑑定』という観点ではどうだろうか。

 いまいち活用度が高くなく、スレでも割と産廃扱いの『鑑定』だが、一々メダルを穴に差し込んで調査するよりは格段に早く調べられるだろう。

 問題は、その早いというのが相対的な時間という点と面倒なのは変わらないのと、ノートとグレゴリしかできないというだけで。しかも鑑定したところで答えが全く分からない可能性もある。


 試しにメダルを何枚か取り出して鑑定してみる。


『木製のコイン(?)

 なんらかの道具で傷をつけられており、血が付着している。傷の下にあった模様は解読できない。

 木製にしては緻密な模様が彫られている。

【+死霊術師】傷の付け方から非常に強い怨恨があったと予測できる。召喚の生贄としては弱いが、怨恨に纏わる霊には力を与える可能性がある』


 鑑定師が産廃と言われがちなのが、鑑定により閲覧出来るフレーバーテキストのほぼ全てが『よく観察すればわかる』程度の情報しかないからだ。

 しかし死霊術師のランクがSに到達した事でフレーバーテキストに変化が起きていた。


 どうやら、死霊術師の知見から得られる情報も鑑定で出るらしい。


 これに気付いたのは水晶洞窟の女王の貯蔵庫から掻っ払ってきたアイテムを鑑定した時だ。

 対生物寄りとは言いつつも貧乏性でコツコツ鑑定自体はしていた。


 結果、知らずのうちにとある条件を満たした事で鑑定情報が増えていた。


 この現象に関しては検証系の裏スレに情報を流してある。

 基本的にノート達は情報を取集する側だが、偶に餌を与えることで『裏スレを見に来る価値がある』と思わせなければならない。UNKNOWNモードでないと書き込めないノート達からすると、実は裏スレの維持が案外馬鹿にならない。

 ノートの予想通り、鑑定情報の増加に関してスレ民は面白いように食いついてくれた。

 と、同時に、不自然な点も見受けられた。


 というのも、ノート達の予想では『鑑定士(ある程度のランクを確保?)』+『特定の職業(ランクMAX以上)』+αで新たな情報が開示されると予想していた。だが、ノートがそう書き込むと速攻で反論が飛んできたのだ。

 例えば生産職、主に錬金術師をメインとするプレイヤー。彼らは色々な物を取り扱うのでメインの方で本来サブ職業の鑑定士に就いたりして、できるだけ錬金精度を上げているらしい。

 当然、錬金術と鑑定のみに傾倒するプレイヤーもおり、そんなプレイヤーは既に錬金術のランクはとっくにマックス。更なる上位職業を模索している状態。鑑定士もチマチマついでにやってるノートよりはるかにランク自体は高い。

 だというのに、ノート以外に今までその様な事例は報告されていないかった。


 スレでは明かせなかったがノート達が予測できるラインとしては、ノートのメイン職業である『死霊術師』がそもそも『死霊術師・特』という特殊な物であり、更には召喚術師の“上位職業”に該当していることが原因ではないかと予測していた。

 

 ただ、納得できない点もある。

 『死霊術師・特』に関しては、強化はされているものの本質は『死霊術師』と変わらないわけで、わざわざノート専用にテキストを用意するなどあまりに非効率である。つまりノートの死霊術師が特殊なことはあまり関係ないと見ていいだろう。

 では“上位職業”であることが原因なのか。

 これに関しては否定できない。簡単な話、全ての職業ごとに追加のテキストなど用意していたら大変な作業になってしまう。よってテキストが追加される職業を絞ることで、例えば上位職業に限定するなどして作業量を減らす。加えて、追加テキストが表示されるような新たな職業の追及をプレイヤーに促すことができる。

 ただ、リアルさを追求するALLFOからすると首を傾げるポイントがある。

 

 追加テキストが、いわば他の職業を極めたことにより新しく得られた知見だというのならば、物に真摯に向き合っている点では死霊術師よりよほど錬金術士の方が向き合っているし、新たな知見を得そうなものだ。

 特にノート以上に合成や触媒、素材として、錬金術師は数多くのアイテムを見ている。ならば上位職業でなくてもテキストが用意されていてもおかしくはない。むしろ生産関係は多めに用意されていても不自然ではないだろう。


 よって考えるに、一般のプレイヤーに満たせず、ノートだけが満たした条件がある可能性が浮かび上がってくる。


 だがノートは一般のプレイヤーからするとあまりにイレギュラーな点が多過ぎて、何が違うのかが絞り込めない。

 そんな訳で現在は裏スレ経由で検証厨に情報を投げて放置しているが、まだ良い結果は聞こえてこない


 さて、この鑑定情報からノートは思考を深めていく。

 数万枚のメダルの鑑定から逃げる為の全力の現実逃避。頭の中で全ての情報を精査し理屈を捏ねくりまわし始めた。


 

 

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽最近TRPGやりたいなぁって思うけど時間がない今日この頃

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽このパートがっつり世界観補足回になるけどゴメンね

༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽今までの情報を繋ぎ合わせると大体世界観や根底のシステムが解る様になってるけど今の段階で全部わかったら天才よ

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 素朴な疑問なんですが、死んだmobやNPCの魂って“天国と地獄”どっちの管轄なんです? 死霊術士が職業のノートやから目に見える形で観測出来てるけど、そうじゃ無い人からすればエフェクトと…
[一言] >>史上最強の癇癪持ちである神 否定できない。マジで神話を見ると力を持たせちゃダメな奴らが力を持ったって感じがする。 >>どうにもバルバリッチャを始めとして悪魔勢は脳筋思考が多い。力こ…
[一言] 最近初めて読み始めてふと思ってしまった。 ここまでの情報ってことで考えたらもしかしてこれこの世界観ではでは一般的な天使と悪魔のポジション逆? まず悪魔側に獄吏がいるならそれなりの法があるんだ…
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