No.123 クズ男のスキル
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽フハハハハハ…………
※作品の感じに合わせて色背景とか試しに変えてみたんですけど、どうでしょうか?見づらいという意見が寄せられているので、他の方も見づらいという場合は元に戻そうと思います。
今まで溜め込んでいた物が噴き出し号泣するネオン。そんなネオンの背をノートが優しく摩ると、その胸の中に崩れ落ちる様に寄りかかったが誰も何も言わなかった。
戦闘がひと段落する度に彼女がメモをしている様子は誰もが見ていた。
口下手なのに、足も震えているのに、何度も何度も自分に改善すべき事はあるか聞きに来ていた。
いつだって必死で、弱いのに決して下を向かなかった。その視線の先がいつも何処にあったかくらいユリン達もよくわかっている。
天才故の共感性の欠如がやや垣間見える彼女達も、今ばかりは余計な口を出さず見守っていた。
それでも慰めなる事に加わらないのは女性としてのプライドがあるが故か。
ノートがネオンに見えない位置で「すまんな」という手振りをすると、皆も「ツケにしとく」「一つ貸しね」とハンドサインで返す。
別にノートが悪い訳でもないのだが、現在の宙ぶらりんで曖昧な状況をノートが維持しているのも事実。故に細かい事にも配慮する。
本人は割と無自覚だが完全にクズ男のスキルである。
しかしそれを咎める事もなく、彼女達も全力で乗っかる。甘えていい時は素直に甘えるのが吉と彼女達はよく知っているのだ。
そんなこんなで暫しネオンの復活を待つ。
途中からはフラリとリビングにやってきたアグラットがネオンの頭を撫でて、あまつさえ自分で抱えていたスナック菓子セットをネオンに食べさせていた。
菓子関係の事となると普段は絶対服従のバルバリッチャ相手でも多少抵抗を見せるアグラットが菓子を譲る。
それがどれだけ凄い事なのか知ってるノートはかなり驚いた。
ネオンはアグラットからも一応なりとも主人としても認められている事の証でもあった。
「皆様、お帰りなさいませ。お疲れの事でしょう、茶菓子は如何でしょうか?」
少ししんみりした空気が漂っていたが、誰一人としてリビングから立ち去らない。
そんな空気をいい意味で壊す様に、パーフェクト執事たるタナトスがサービスワゴンに沢山の茶菓子を乗せてやってきた。
クッキーやフルーツパイ、チーズタルト、シュークリーム、プリンからホットケーキ、ポップコーンなどスイーツ系から、煎餅やポテトチップス、軟骨の揚げ物、かりんとう、たい焼きなど。
取り敢えず今用意できるものは全部持ってきたと言わんばかりの豪華なラインナップだった。
真っ先にそれに飛びついたのはアグラット。
慰められていたネオンもびっくりの変わり身の速さだった。
レパートリーが貧困だったタナトスのレパートリーが大幅に増えたのも、リアルで料理が趣味のネオンが教えたからだ。
ネオンも甘いスイーツを食べて顔を綻ばせ、和気藹々とした空気が流れる。
そうやって皆が盛り上がってると黙っていないのが1人。なぜ我を蚊帳の外に置くのだとバルバリッチャがやってきてスピリタスとワインの樽を開け始める。
そうなるともはや宴会モードだ。
ノートは死霊術師の能力を使いアテナ達も宴会に呼ぶ。
いつもは何か機会がないと集まる事は無いが、時には何もない時にこうして騒ぐのも悪くない。ネオンを側に置いたままノートはアテナ達ともコミュニケーションを取る。
そんな事をしているといつに間に先送りしていたトン2と鎌鼬の歓迎会という形になり、次々と料理が運ばれてくる。
先程の自分がどんな状態だったか自覚したネオンも顔を真っ赤にして厨房に消えたので料理の供給速度が早い。今はそっとしておこうとノートも敢えて追わなかった。
タナトスは言うまでもなく料理人としての実力をメキメキ伸ばし、料理に用いる錬金術の腕も着々と上がっている様だ。最近は調理器具の作成をゴヴニュに依頼しているらしく、出来ることもかなり増えたとのこと。
アテナとゴヴニュは相変わらず絡繰人形の共同製作を続けている様で、誰が入れ知恵してるのか知らないが(聞くまでもないとも言う)いよいよただの自由研究で片付けられないクオリティになってきていた。
オーバーワーク気味で最近は大活躍もしたネモは、進化により処理能力が増したらしく順調に大農園を運営できている様だが、そろそろ増え過ぎて在庫がオーバーしかけているとも報告を受けた。
反船イベントでかなりばら撒いたつもりだった様だが全く足りてないらしい。
むしろ最序盤に生産した物はランク落ちしてるのでアグラットが育ててる蟲()の餌にするにしても微妙なので廃棄しても良いそうだ。
売却も提案してみたが、ネモが育てた作物は大概呪いがかかっているらしく普通に売却しても大した値段にならないらしい。
取り敢えず捨てる事は無いだろうとノートは倉庫の増設を行なって対応する事にした。
因みに同様の報告は糸を生産し続けているアテナからも受けており、進化前の糸は全て破棄しても構わないと強気の提案を受けている。それ程までに進化後の糸のクオリティは違う様だ。
一方、やはり進化しても薬剤の製作の方にはあまり手が回ってないらしく、最近は色々と手が空く事の多いタナトスも手伝っているとの事だった。
やはり薬剤関係専門の悪魔の召喚が急がれる。
これにて普段ミニホームの管理をしてくれる死霊達との面談はひとまず終了。
折角なので取り敢えず長らく名前さえつけてなかったキサラギ馬車とも面談。
今まではあまりコミュニケーションができなかったが、思念伝達が可能なグレゴリが仲介に入ってもらう事でしっかりとコミュニケーションが取れる様になった。
ノートがキサラギ馬車とのコミュニケーションを重視したのは、キサラギ馬車からの好感度が1番低いからだ。
実際問題、一定以上の好感度を達成している時に進化時に得られるギフトをキサラギ馬車から受け取ってない。
無論、序盤に強引に進化させていたからという理由はあるが、それでもコミュニケーション不足は否めないだろう。
知能はそれ程高くは無いが、単語を発する程度はできる様でタナトス経由でもあまり混乱せず話を聞くことができ、キサラギ馬車の持つ技能『占星』に関しては非常に興味深い話を聞くことができた。
というより、キサラギ馬車の運用方法を変える事をノートが考えるくらいに『占星』がとんでもない技能だったのだ。テキスト上の説明では『星を読み、占いができる』としか書かれていなかったゆえに見落としていたが、そんなチンケな能力ではなかったのだ。
会話不可能な存在に渡され、一見重要そうに見えないが故に見落とした要素。そこにとんでもない秘密が秘められていた事はノートも予測できなかった。
次に面談したのはメギド。
グレゴリ経由でも主張はほぼ変わらず、「戦いたい」の一点張りだった。
今回の撤退戦に於いては大金星級の活躍をしたメギドには新しい砥石と大好物の蟲の唐揚げを与えておく事にする。
最後に面談したのはグレゴリ。召喚直後からハイペースで活躍し、最早『祭り拍子』になくてはならない存在である。
本来警戒役の自分が黒騎士の接近を見落とした事にかなり落ち込んでいたが、そこはノートの本領発揮。うまくフォローして元気付けてやる。
そんなグレゴリだったが、非常にユニークな能力を新しく獲得したらしい。
第一線で常に『祭り拍子』と行動を共にするが故か、それともゲーム内でのオンリーワンのギフトを4つも捧げて召喚したリソースお化け故か。
戦術の変更を要するレベルの新能力にはノートも御満悦だった。
因みに、死霊枠からは若干外れているが悪魔勢とも面談は行った。
口いっぱいに幸せそうにスイーツを頬張ってるアグラットは相変わらず。スイーツが有れば幸せな様だ。
蟲牧場も順調。いよいよ魔界化しつつあるエリアだが、繁殖が上手くいきすぎて最近はもう少し手が欲しいかも、などと冗談混じりに言っていたがまだまだ1人で粘るらしい。
どうも他人に任せるとお菓子の取り分が減ると思っている様だ。
最後にアグラットに真面目な表情で『本当にザガンを召喚する気なのか』と逆に問われたが、ノートはYesと回答。
アグラットはやや不満そうだったが、お菓子の供給量を増やす事とザガンの技術はおやつ作りに転用可能かもしれないし、その際は協力させるという事で合意をした。
既に決定済みの事でも細かい部分での好感度調整や擦り合わせは必要だ。なんとなくペットポジが落ち着いているアグラットではあるがノートはしっかりと対等な存在として扱っている。
故にアグラットも主人以外のノートの判断を尊重しているのだ。
バルバリッチャも相変わらず酒とツマミ作りに忙しいそうだ(指示出して味見だけだが)。倉庫を拡張するほどではない様だが日に日にストックは増えてるとのこと。
試しにノートは例の赤月の都について色々と話してみたが、明確な言葉は得られず。しかし何かを知っている素振りも見せた。
具体的には何も教えてくれないが、素振りを見せる事自体が既に彼女なりのヒントなのだろう。
メダルを見せた時は特に皮肉げで馬鹿にしたような、同時に僅かに嫌悪する様に鼻で嗤う反応を見せたのが印象的だった。
いよいよ謎が深まってきたが、バルバリッチャ曰く赤月の都を探索しても危ない事態になる事は無いとのこと。座標的な問題の不安があったが、いきなりフィールドごと消える様な心配はしなくていいらしい。
思わぬ収穫が多い宴会だった。
料理の供給も緩やかになり、少々落ち着きを取り戻したネオンも厨房から戻ってきた。
なんだかやる事も全部ひと段落してるし、今日はこのまま解散するか。
そんな話が持ち上がったところで、ネオンが急に立ち上がり、顔を赤つつもなんとか切り出した。
「あ、あの…………み、みな、さん、に提案……が、あり、ます」
小さくて、か細く、震えていてつっかえつっかえ。
聞き取りずらい声ではあったが、ネオンの珍しい行動にすぐに皆は意識を傾けた。
「どうした?」
代表してノートが優しく問いかけると、ネオンは絞り出す様に答えた。
「も、もう一度、あの、あの赤い月の街を……し、調べて、みま、せんか…………?」
詳しく話を聞くに、メダルが大量に見つかったあの開けた場所でノートが聞いた謎の声、それがネオンにも聞こえていた様だ。
しかも、ノートよりハッキリと。
あの時は言うまいか迷っているうちに敵が押し寄せて言いそびれたが、確かに声が聞こえたらしい。
その内容を聞き、ノート達も確かにネオンがわざわざ声を上げるくらいには気にかける事だと納得する。
「んじゃ、もう少ししっかり準備して再トライといきますか」
『賛成!』
斯くして全員一致で赤月の都の再挑戦が決定した。
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽どの段階で“星”について言及するか迷ってましたが、ここで言及します(本当は職業スレでやりたかった)
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽まあみんな絶対忘れたよねって感じのキサラギ馬車のランダム追加技能『占星』。占い師からの派生職業『占星師』の技能なんですけど、実は全職業屈指の就職難度を誇る職業となっております。
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽実はタナトスの持つ能力『代行』(プレイヤー権限の一部を所有)とタメを張るぶっ壊れ技能だったり…………(テキスト上では『星を読み占いができる』としか書いてないという隠し要素満載の職業です。故にノートも気づくのが遅れました)
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽見返すとわかりますが、幽霊馬車の召喚に利用する生贄の中に違和感のある物がまじってるんですね(No.5参照。というよりキサラギ馬車自体が他の死霊と比べていろいろと特殊。実はとある隠しパラメータ込みで召喚可能になる死霊だったり)
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽コレALLFOの世界観にガッツリ関わってくる要素だし『占星』獲得に関する隠しパラメータにガッツリからんでるよってゲロっておきます(ちょこちょこヒントはだしてた)
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽そしていよいよグレゴリの快進撃が始まるぞよ
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽オンリーワンアイテムを4つ使った死霊がこの程度なんてありえないのです
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽因みに新しい技能というのは、実装前に統括AIがギリギリ割り込んで消したヤツです(その進化版が最初から実装される予定だったのを慌てて取り消した)
༼;´༎ຶ ༎ຶ༽とりあえず統括AIが焦るぐらいにはヤバい能力の原型ってことで期待しててね




