No. 112 仕様殺し
(´・ω・`)ちょっと短め。申し訳ない
『おぎゃああぁああぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁ!』
響き渡るは赤子の絶叫。仰向けに転がった赤子の両目を獰猛な笑みを浮かべたトン2が双槍で貫き、仕上げと言わんばかりにその背後からジャンプしてきたスピリタスがその石突きに綺麗に着地して完全に槍を目の奥まで押し込む。
そんなあまりにも凶悪な連携プレイがトドメとなり、スピリタスによって力を封じられた異形の赤子天使は赤いポリゴン片となって砕け散った。
討伐まで僅か3分。あれだけ手こずった赤子も、障壁さえ剥いでしまえば、闇・呪属性が弱点である存在など『祭り拍子』にとっては柔らかく景気の良いサンドバッグでしかない。
魔法のクールタイムも兼ねてネオンが温存していてもこれだけのスピードである。
もう一方の異形の赤子天使を見れば、それを1人で押さえていたノートはピンピンしており、それどころか障壁の方にもかなりダメージが加算されていた。
「お待たせ!もう一体もやっちゃおう!」
今の【祭り拍子】はノリに乗っている。その中でも1番調子がいい、むしろ絶好調とも言えるユリンがノートの横に着地して威勢のいいことを言うが、ノートは手でそれを制する。
「………………いや、やっぱり天使は天使だな」
異変が起きたのはユリン達がもう一方の赤子を討伐した直後。よくあるゲーム的演出として、ペアで出現するボス個体は相方が討伐されると怒り状態になって暴れ回るか、あるいは強化される事が殆どだ。
だが、片割れが討伐されてもノートが身構えていたようにもう一方の赤子天使が急に攻めに転じることはなかった。
かと言って無変化でもなく、顔が真顔になり後退りをやめた。
その時、ノートは後ろを見て異変に気がついた。
ユリン達は異形の赤子天使がポリゴン片になった事を確認するとすぐに自分達の背後を守っていたノートの方に視線を向けた。だからこそ見逃した。
本来ならば魔物は死ぬと赤いポリゴン片になり、砕け散り、粒子状になって消えていく。だが、ノートが視線を向けた時、消えるはずの粒子が滞留していたのだ。
ノートの視線に気づき皆が振り向けば、赤い粒子がスーッと動いてまだ生きている方の異形の赤子天使に吸い込まれていく。
「叩け!急げ!」
ノートが指示を出すと同時に反射的に攻撃を繰り出すユリン達。ノートがメギドを始めとしたアンデッドで削っていた障壁はすぐに崩され、全ての攻撃が直撃するが、それでも異形の赤子天使は怯む事はない。
鑑定してみればダメージが通っているのは間違い無いが、嫌に堪えた様子が無い。
やがて赤い粒子が全て吸収され、まともに目を向けていられないほどにカッ!と赤子天使は白く発光する。
そしてその白い光が消えると、更に異形と化した天使がそこにはいた。
ビジュアルは異形の赤子天使を縦に3/4切り取って貼り付けて、翼を4つ、腕も4つに増やした感じだ。四面赤子の鳥脚天使、それがこの天使カコードラスウォーム・オーヴンの真の姿だ。
虚旧の守り人ソーラシル・ルーナウラは2体のボスだが、カコードラスウォーム・オーヴンは2つで1つの存在。これはスキルや魔法では無く性質であり、故にスピリタスのオリジナルスキルも影響はなかった。
僧侶型アラクネのソーラシルと僧侶型ラミア、ルーナウラのせいで異形の赤子天使も双子の天使だと思いがちだが、それは製作者のミスリード。一体が倒されると、その時に得たデータを反映し本体を強化する。それがこのボスのコンセプトだ。
ノート達のボス戦は遂に第3段階目まで突入した。
◆
天使がより凶悪な見た目となり、身構えるノート達。
しかし、変身が終わると同時にベシャッと四面赤子の天使は地面に落下した。
「…………あれ?」
何かの特殊モーションかと思ったが様子がおかしい。試しにアンデッドを1匹召喚して攻撃してみれば、あの厄介な障壁に阻まれることもなく普通に攻撃が通った。
本来であれば悪夢のようなボスだが、四面赤子の天使はその性質(仕様)上、予期せぬ事態に陥っていた。
もう一度繰り返そう。この天使カコードラスウォーム・オーヴンはソーラシル・ルーナウラと違って別個体では無く“同一個体”だ。
つまり、厳密にはユリン達は倒し切ったわけでは無く、分離させたものを再吸収したのだ。
死んでないという事は、攻撃されていた異形の赤子天使にかかっていたスキルや呪いも継続される。
本来ならば、引き継がれるのは赤子天使が自分にかけていた色々なバフだ。これが継続される事で完全体となった時に赤子天使は手をつけられない状態になる。
だがそれはスピリタスのオリジナルスキルで妨害され、トン2のオリジナルスキルで更に弱体化していた。
結果、引き継がれたバフは全く機能しておらず、それどころか抱えていたデバフの方が大きく引き継がれた。
察しのいい者なら四面赤子の天使が今どんな状況になっているかもうお分かりだろう。
そう、同一個体という性質により、スピリタスのオリジナルスキルもトン2のオリジナルスキルも発動したままになっている。
それはトン2と鎌鼬の格好が現在も堕天使化している事から明らかだ。
よって四面赤子の天使はスタート時点からその殆どの力を弱体化させられ、更にトン2と鎌鼬のオリジナルスキルによって2段階も性能が落ちている。
四面の赤子天使は強化されるどころか、まさしく赤子の状態まで力を削がれた。
赤子天使は図体はデカいが、近接の攻撃は武器に依存している。だがそれもオリジナルスキルで取り上げられているので何もできない。
『お、おぎゃあぁぁぁぁ……』
どことなく気まずそうな、弱々しく響く赤子の声。スピリタスのオリジナルスキルの持続時間は残り1分。それでもどちらが優位かは言うまでもない。
何が起きているかなんとなく察したノートは『お前それでもカウンセラーかよ』とツッコミたくなるほどニタァと邪悪な笑みを浮かべる。
あれほど手こずった赤子天使は、その背中が肥大している意味も示す事ができずにノート達の音の出るサンドバッグとなってキッチリ1分で殺し切られたのだった。
(´・ω・`)毎回毎回戦闘を長々描くのも芸がないと思いこんな感じで処理された赤子なのでした
(´・ω・`)カワイソス
それはともかく……………
(´・ω・`)予告です
(´・ω・`)感想欄にて欲しいというお声をいただいたので、主任視点シリーズを現在執筆中です
今のところ
①No.Ex それ逝毛!主任マン〜とあるT氏の鬼人動乱〜
② No.Ex それ逝毛!主任マン〜魔法少女きえた⭐︎マジカ〜
の二本立ての予定です。あくまで予定であって増えるかも。
スピリタス加入時や反船イベント、トン2鎌鼬の『祭り拍子』加入までを主任(運営)視点で書いていきます。
テンポが悪くなるのでしばらく自粛してたのですが、後でまとめて間話という形で収録すればいいのだと気づいた今日この頃。
私の好きななろう小説のシリーズの方式を真似てみます。
ヒントは『遺体遺棄〜』




