No. 110 さよなら変身バンク
お は よ う
(´・ω・`)出荷よー
「慌てんな!攻撃できる奴はブチかませ!回復必要なやつは回復専念だ!」
さて、明らかに不味い感じの何かが起きようとしていたが、ノート達はそれをボーっと見ているほど間抜けでは無い。
ネオンは純闇属性の破壊魔法をぶっ放し、鎌鼬は大胆にも迷う事なく大技を発動し矢の雨を降らせ、スピリタスとトン2は翼目掛けて武器を投擲。
ヌコォはスキルを使い分析を開始し、ノートもアンデッドの群れを投下する。
唯一攻撃に回らなかったのはユリンだけだが、ユリンはユリンで頑張りすぎたので回復に専念したのだ。
世の悪党はヒーローの変身中は攻撃をしないというお約束が存在しているが、ノート達には知ったこっちゃ無い。
明らかに大変身中の敵に対して容赦なく攻撃を叩き込んで、同時にどの攻撃が通るかまで分析を開始する。
本来ならば黙って見ているものなのかもしれないが、即攻撃が身に染み付いてるノートにとっては反射の様なものなので仕方がない。というか、白い翼の時点でもう嫌な感じしかしなかったのでしょうがない。
これで中から聖人君子の様な妖精が出てきて『実は怪物の中に閉じ込められていただけで争いたくないんです』と泣いて訴えてきたら流石にノートも申し訳ない気持ちになるが、嫌な意味で安心と実績のALLFOである。そんな訳はないとマイナスな意味での信頼をもってして即攻撃に踏み切った。
ただ、そんなノートの指示に対しても即座に反応できる奴などそうそういない。その様な点では、【祭り拍子】はパーティーとして非常に高度に機能していると称賛できるだろう。
変身バンクなどクソ喰らえと言わんばかりの容赦の無い攻撃ラッシュ。
やがてなかなか変身バンクが終わらない事に激おこぷんぷん丸レベルにブチギレたのか、死体から半分ほどその体を見せ完全に羽化しようとしていた何かが絶叫する。
先程よりも甲高い怪音波。前の絶叫が悲鳴ならば、今回は怒りの咆哮といったところか。ノート達は強制的にノックバックを喰らい後退させられ、その隙に強引にソレが蛹から這い出る蛾のようにヌルリと出てきた。
シルエットは非常にスタイルのいい人間といったところだろうか。サイズは3m強。エプロンの様な神官服擬きを着ており、露出した肌は真っ白で程よく引き締まった筋肉質なボディー。背中から生えた純白の翼は美しく、その体全てがまるで出来のいい芸術品だ。
ただ、それを台無しにする要素が3つ。
1つ、この人型の顔は、その美しい身体に見合ったものではなく泣き顔を浮かべた赤子だった。肉体が完全に成熟した女である為、そこだけがバランスが取れておらず非常に不釣り合いなのだ。
2つ、その赤子の顎の部分、厳密には首の部分にも上下逆さまの赤子の顔がついてること。1つ目の時点ではまだ前衛芸術の範囲で済んだが、これでは完全にクリーチャーだ。
因みにこの赤子には何故か歯がきちんと生え揃っており、それが不気味さを異常に増加させている。
3つ、翼の下、背中の部分が丸く大きく肥大しており、その脚の先が鳥の様な足になっているところ。他が高いバランスで均整の取れた肉体なのにこれでは台無しだ。ますますクリーチャーじみており、如何にも前衛芸術家気取りの素人芸術家の行き過ぎた意味不明な作品だ。
そんな不確定名天使、というにはクリーチャー寄りの見た目をした推定天使が2体。その手には僧侶型アラクネと僧侶型ラミアの装備していた鎌と杖を携えているが、2体が装備していた物よりも装飾が華美で、それでいて灰色と青の渋い配色となっていた。
その2体が同時に武器を構えると、戦闘時のユリンの頭部に出現する黒い光輪と対照的な天使然とした光輪が出現し、背後にも地図記号の銀行の様な形の光輪が出現した。
ノートが普段からあまり役に立ってない鑑定技能を使うと、彼等の名前が明らかになる。
『-----の天使:カコードラスウォーム・オーヴン』
肝心の部分がブロックされたが、正体は明白だ。
「確定、ネームドの天使だ。属性的にも双方相性が悪い。短期決戦でケリつけるぞ!」
悪として、神敵として判定された。それでも今までは本格的に対立するまでには至らなかった。だが、遂にノート達は明確な敵として神の代理人と相対する事となった。
◆
異形の赤子天使との戦いは、ノートが身構えていたよりも大苦戦、防戦一方とはならなかった。
異形の赤子天使のスペックは、僧侶型アラクネと僧侶型ラミアを足し合わせて1.7くらいで割った感じだろうか。攻守共にバランス良く、その中でも回復性能と防御性能に長けていて攻撃はカウンターが中心だ。
僧侶型アラクネと僧侶型ラミアのペアを撃破した後に長期戦を強いるボス。ノート達は初戦を反則クラスのイカサマで突破したからリソースには十分余裕があるが、本来ならば絶望しかねない意地の悪いボスだ。
戦っている印象として感じるのは、硬く堅実、隙が無い。魔物というよりは人間を相手に戦っている。その様な感覚だ。
ただ、堅実な分だけ僧侶型アラクネとラミアの様なトリッキーさはなく、此方も堅実に戦えば一度にデカいダメージを負う危険性は低い。
これは【祭り拍子】にとってはかなり楽な相手だ。
ノート達【祭り拍子】は少数精鋭で個々の能力が突出しているパーティーだ。
特に前衛から中衛にかけての層が充実しており、後衛寄りの鎌鼬とて遊撃として動けると考えれば質の高さがわかるだろう。
故に万が一の事態、例え1人かけても十分にカバーをできる。
問題は純後衛の替えが一切効かないところだ。
回復役にグレゴリが増えたので以前ほどネオンにウェイトはかかっていないが、それを抜きにしても付与とメイン火力を担っている。回復性能もグレゴリよりも優っているのでいなくなるとかなり厳しい。
最早ネオン自身さえも忘れがちだが、正直少し前までネットリテラシーさえ危ういピカピカのゲーム初心者だと考えればとんでもない成長である。
確かにその力の根幹は運で引き当てた初期限定特典だ。それでもゲーマーですら持て余しそうになるピーキーな代物を、ユリン達一級品のプレイヤー達から見劣りしない程度に、頼られる程度に使いこなせている。
逆に一般的なゲームでの動きを知らなかった事が功を奏したとは言え、十分異常である。
これがどれほど凄いことなのか、ネオンはかなり無自覚だ。
そしてもう1人、変えの効かない奴。全てのポジションをこなせるオールラウンダー。【祭り拍子】の中心にして精神的な支柱でもあるノートだ。
【祭り拍子】は仲良しこよしだったりガチ攻略勢だったり検証班だったりと何か目的意識やリアルの繋がりがあって形成されたパーティーでは無い。ノート個人のコネクションによって形成された普通からすれば少し歪んだパーティーだ。
そんなパーティーであるが故にノートの身に危険が迫ると全体の動きが悪くなるし、ノートが早々に撃破されれば【祭り拍子】はその性能を目に見えて落とす。
更には立派な戦力として数えられているメギドもグレゴリもノートの力の一つだ。召喚主であるノートが倒されれば一時的に大幅な弱体化を強いられる為、ノート1人がダウンした瞬間に【祭り拍子】は一気に3枚の強力な手札を失うに等しい。
個々の能力が高い分、その中心である後衛が崩壊すると【祭り拍子】は途端に厳しい戦いを強いられる。故に前衛側も慎重に成らざるを得ない。
逆を返すと、後衛が破綻する可能性が低い戦闘の場合【祭り拍子】は驚くほど安定した戦いを展開できる。
僧侶型アラクネと僧侶型ラミアは、アラクネのフィールド全体追尾攻撃とラミアの一撃必殺攻撃の組み合わせでそういったスピード感のある戦闘を苦手とするネオンがかなりピンチだった。
だが異形の赤子天使はどちらかといえば堅実に対応すればしっかり対処できる感じの攻撃しかしてこないので後衛が崩壊する可能性が低い。
一方でそれは相手の隙の無さを示しているのだが、どちらが脅威と考えれば、やはり後衛の破綻の方が【祭り拍子】にとっては厄介な事である。
どちらも隙なしカウンター狙いの膠着状態。
ボスと【祭り拍子】の地道なリソースの削り合いが始まった。
(´・ω・`)天使とは、斯くも美しきものだろう!
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