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勇者の影響

 傷を負った日から、1週間が経過した。


 チラリと上着の裾を捲れば、ほんの少しだけ残った傷跡が見える。


 流血量から考えれば、異常な回復スピードだろう。

 だがもちろん、俺の力じゃない。


 サラが言うには、ノアが魔法で作り出した布に治癒の効果があったらしい。

 どうやら俺は、ノアのおかげで助かったようだ。


 仲間のピンチに新たな力に目覚めて、魔法の布を作り出したノアと、ニワトリに殺されかけた俺。


 どう考えても、ノアの方が勇者だった。


(さすがにこのままじゃまずいよな。勇者の称号剥奪で追い出される……)


 今更ながらにそう思った俺は、傷が癒えるのを待って戦闘力の強化に乗り出すことにした。


(剣と盾じゃ無理だ。訓練に時間がかかりすぎる。なにか強力な武器を……)


 そんな思いで作り上げた設計図と模型を片手に、ノアとミリアを訪ねてみた。


「突然で悪いな。これなんだけどさ、作れるか??」


 彼女たちの部屋に入るなり机の上に設計図を広げれば、2人が面白そうに身を乗り出してくれる。


 ゆっくりと図面を眺めたミリアが、不思議そうに首を傾げた。


「これはなにかしらー? 説明してくれるー?」


「あぁ、もちろんだ。これは銃っていう武器でな……」


 そうして俺の武器作りが始まった。


 当初はノアに頼もうと思っていたのだが、話しを聞けばミリアも製造系の魔法に目覚めたらしい。

 何でも、妹に負ける訳にはいかないと、俺が寝込んでいる間に特訓したとのこと。


「私は柔らかいものが得意で、お姉ちゃんは硬いものが得意なんですよ」


「へぇー、ってことは、ミリアがメインで良いのか?」


「そうですね。お姉ちゃんにお任せです」


「はーい。任せといてー」


 そういうことになった。


 魔玉を机の上に並べて、ミリアと共に手を重ねる。


「作るわねー」


 ミリアがのどを震わせれば、魔玉から淡い光りが漏れ出した。


 そして現れたのは、鉄の筒と小さな持ち手。


「……びみょー」


 銃とは似て非なる物体だった。


 持ち手を握って、ひょいと持ち上げてみれば、予想よりもかなり軽い。

 

「うーん。悪くはないんだけど、なんか違うな。安っぽい?」


 水道管の片側を閉じて、下に持ち手をつけた。

 そんな見た目だった。


「そぉ? ハルくんのイメージを尊重して作ったつもりなんだけどー」


「そうなんだけどさ……。まぁ、試し打ちは出来そうだし、試作品なら十分か」


 強度はある。最低限の形にはなった。

 大丈夫だとおもう。

  

「すこしだけ離れててくれ」


「はーい」


 離れていく2人の姿を流し見ながら、ふぅー……、と息を整える。

 そして、筒の中に2つの魔玉を押し込んだ。


「始めるぞー」


 2人に声をかけた後で、銃全体に魔力を流し込んでいく。


(片方を強化して、片方を爆発させて……)


 ただそれだけで頭をいっぱいにしていると、突然、周囲に爆発音が響いた。


「わっ!」「きゃっ!!」


 耳がキーンと痛む。

 覚悟はしていたつもりだったが、予想以上にうるさかった。


「兄様!! 無事なの!?」


「あぁ、問題ないよ。驚かせて悪かった」


 近寄ってくるノアに手をひらひらと振りながら、銃口の先を見詰める。


 石の床に、小さな穴が開いているのが見えた。

 きっとその奥には、飛び出した魔玉が埋まっていることだろう。


「実験も成功だな」


 そう言って、2人に微笑んで見せた。


「これでクロエに対抗できるようになった。アリスにも勝てるな」


 そう思っていた時期がありました。



 試作品の銃を持って、意気揚々とクロエにお披露目をする。


「ねぇ、お兄ちゃん。直線の攻撃じゃ防がれちゃうよ?」


 返ってきたのがそんな言葉。


「え?? ……飛んでいく玉、見えたのか??」


「んゅ?? うん」


「どうやって防ぐんだ??」


「普通にナイフで弾くか、避けるかするよね??」


「…………」


 当然だよね? といわんばかりの顔で、クロエが首をかしげた。

 冗談を言っているようには、到底見えない。


(え? あれ? 銃弾ってナイフで防げんの? 飛んでった玉が見えた? マジで??)


「クロエ。そんなこと出来んの?」


「んゅ? お兄ちゃんは出来ないの?」


「…………え、あ、うん。出来る、うん。出来るよ。もちろんじゃないかー」


「でしょでしょー。まっすぐにしか飛んでこないもん簡単だよね」


「そうだよなー。はははー」


 後日試したのだが、スライムのナイフで弾かれました。


 前世の知識でチートしてやるぜ!!


 なんて思ってた時期もありましたが、どうやら魔法世界にはこえられない壁があるようです。


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