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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三話「新たな生活環境と出会い」

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視線の交差

真理の準備が終わったところで康太たちは電車で移動を開始していた。


これから魔術師として戦うというのに電車で移動というのはなんだか締まらない気がしたが、現代に生きる以上電車という公共の移動手段があるのだ、利用しない手はないだろう。


多くの人に目撃されることになるが、今この場においては康太はただの一般人だ。たとえ誰かに見られたとしてもそれはおかしいことではない。


問題はここから先だ。


康太と小百合と真理は最寄り駅に到着し、学校への道を移動していく間に少し小道に入っていく。


二人がそれぞれ仮面と外套を身に着けているのを確認したうえで康太も同じように自分の仮面と外套を身に着ける。


「いくぞジョア、ビー」


術師名を呼ばれたことで既に自分たちが魔術師として行動しているのだという自覚が湧いてくる。


康太としては初めての魔術師としての行動だ、何が正しいかなどわかるはずもないが可能な限り小百合の後ろについていくつもりだった。


自分はいわば魔術師の中では新人のようなものだ。先輩である二人の挙動を観察してそれを少しずつ修得していく以外に学習法は無い。


師匠が小百合以外であればそのあたりも少しずつ丁寧に教えてくれたのかもしれないが、生憎小百合は放任主義な上に指導が適当だ。自分で少しずつ学んでいく以外に方法がないのである。


「ビー、緊張していますか?」


「はい・・・さすがにこれから戦うってなると・・・」


これまで戦いなどとは無縁の人生を送ってきた。唯一他人と争うような場があったのは体育などであったサッカーやドッジボールくらいのものである。


他人を殴ったことなど当然ない。喧嘩というものもいったい何時行っただろうか。


小学生の頃にそれらしいことをした記憶はあるのだが、ほとんど覚えていないのだ。そんな中でいきなり実戦などという状況になって緊張するなという方が無理である。


「では一つだけいいことを。今回相対する魔術師は私や師匠よりは弱いです。それを頭に入れていると少しは楽になりますよ」


「・・・二人よりは・・・弱い・・・」


魔術師になってから康太は小百合と真理に徹底的に指導されてきた。魔術の指導もそうだがその魔術を実戦でも使えるように実戦に限りなく近い形で訓練を行ってきた。


その日々を思い出せば少しはましになるだろうという真理の気遣いだった。


そう言う意味ではスタートから既にほかの魔術師とは違う道を歩んでいると言ってもいいだろう。なにせ師匠である小百合自体が魔術師として異端の存在なのだから。


毎日のように殺されるのではないかというほどの攻撃をされてきたのだ、それに比べれば同年代の魔術師くらいは何とかなるのではないかと思えてくるから不思議なものである。


「・・・なるほど・・・少し気が楽になりました」


「それはよかった。頑張るんですよ!」


真理からの激励もそこそこに三人は康太の通う三鳥高校に到着した。


校門部分はほんの少しだが解放されている。恐らく先に来ていた魔術師が細工をしたのだろう。すでに戦いの準備はできているという事だろうか。


康太たちが校門をくぐり中に入ると、小百合と真理が校舎の一角に視線を向けた。


康太もその方向に視線を向けると、そこには二人の人物が立っていた。


校舎の三階部分、窓からこちらを見下ろすようにそこにいる仮面をつけた二人の人物。あれのどちらかがこれから自分が相対する魔術師であるというのはすぐに理解できた。


「あれが・・・そうですか?」


「あぁ・・・どうやらこちらと同じく師匠が同伴していたようだな・・・相変わらず趣味の悪い・・・」


どういう意味だと疑問に思っていたが、その答えはすぐに理解した。自分の弟子が小百合の弟子に勝つところをこの目で見たい。恐らくはそう言う意味が含まれているのだろう。


確か相手の師匠は小百合に妙に対抗心を燃やしていると言っていた。こういう場でそういうことを考えられるだけの余裕が相手にあるという事だ。


同じ師匠同伴でも意味が全く違う。自分は未熟であるが故に、相手は個人的にこの戦いを見たいから。


魔術師としての力量の差は、今こうして二人が立っている立ち位置にそのまま反映しているかのようだった。


相手は校舎の三階、対して自分は地面と同じ。天と地ほどの力の差があるというのは理解している。だが他人に、しかも同世代に見下されてそれを素直に受け入れられるほど康太は寛容ではない。


校舎三階でこちらを見下ろしている魔術師の内、一人がその場から離れていくのを確認して小百合は小さく息をつく。


「ビー、私とジョアは席を外す。別の場所で見ているからしっかり叩き潰せ」


「安心してください、万が一の時は私達が助けに入りますから」


「私は助けないがな」


相変わらずの小百合の対応に康太は僅かに笑ってしまう。こういう人を自分は師匠にしたのだ。すでに分かっていたことだとしても笑ってしまう。


「とりあえず頑張ります。ここまでいっしょに来てくれてありがとうございます」


康太の感謝の言葉を受け止めたのか、小百合は鼻を鳴らす。


小百合と真理がこの場から離れていくのを確認した後、康太は校舎三階にいる一人の魔術師と視線を交わしていた。


あれが今日の相手だと、互いに確認しているかのように。


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