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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三話「新たな生活環境と出会い」

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ライリーベル

「そんな事より今は手紙だ。お前宛なんだからお前が読め」


「あ・・・はい・・・えっと・・・」


康太が手紙を読むとそこには丸みを帯びた字でこう書かれていた。


『同級生の魔術師へ。貴方の再三にわたる魔力放出を私は挑発と受け取りました。明日の二十一時、三鳥高校にて待ちます。どちらが上かはっきりさせましょう。ライリーベルより』


この文面から何を察すればいいのかというのはいくつか思い浮かぶのだが、それよりも何よりもまず戦いの場所と時間が決定してしまったようだった。

明日の二十一時三鳥高校にて。


これはある意味果たし状なのではないかと康太は眉をひそめていた。


「あの姉さん・・・魔力放出ってそんなに挑発的な行動なんですか?」


「・・・魔術師がいるとわかっているような状況でやれば自分が魔術師だと公言しているようなものですから・・・普通魔術師は仮面で顔を隠しますけど・・・今回の場合で言えば『お前にはそれをする必要はねえよ』と言っているようなものですね」


魔術師は本来顔を隠すものだ。それはつまり個人の特定をされないようにするためのものである。


人が大勢いて、なおかつその場に魔術師がいるということがわかっている中で魔力を放出するという事はつまり、隠すつもりがないという事でもある。


相手に特定されれば、いつでも不意打ちを受けることにもなる。だが康太は何も考えず魔力を放出し続けた。自分が魔術師であると気づいてもらうために。


それは相手からすれば『お前程度の相手なら隠すまでもない』と言っているようなもの。実際この手紙の相手はそうとらえたようだった。


「・・・師匠・・・これやばくないですか?」


「何がまずい?しっかりと相手はお前のことを認識したぞ。これでようやく次のステップに進めるな」


ダメだ、この人になにを言っても無駄だ。康太が項垂れていると真理が悲痛な表情をしながら康太の肩をやさしく叩く。


同じ師を持った弟子同士、苦労するなとその瞳が語り掛けている。


確かに早々に見つけてもらえたが、相手は若干怒っているようにも見えるのだ。再三にわたるという文面を見る限り、たぶんどこかで康太に向けて忠告をしていた可能性がある。


無論康太は全く気付かなかったわけだが。


露見するような行為はやめろと忠告してくれている相手に対して全く反応することもなくのうのうと魔力を垂れ流す。


これはいろんな意味で腹が立つ。自分でやっておいてなんだがそんな人間を確認したら確実にグーパンチだろう。


「ちなみにこのライリーベルって・・・術師名ですよね?知ってます?」


「あぁ、私の知り合いの弟子だな。」


知り合い。


もしかしたら三鳥高校に魔術師が康太以外にもう一人入学するということを知ったのはそういう経緯があったからなのだろうかと邪推してしまう。


だが小百合が知り合いと言ってあまりいい人物を紹介された例はない。


知り合い=敵のような関係性を当たり前に築いている可能性だってある。


「師匠・・・一応聞いておきますけど・・・その知り合いってどんな方ですか?」


「ことごとく私に突っかかって来るアホだ。もう何度あしらったことか・・・」


確定だ。その知り合いというのはまず間違いなく小百合のことを敵視している。小百合の反応から考えると恐らく何度も挑んでは負けているのだろう。


小百合に挑み続けるその姿勢は称賛に値するが、無謀なのではないかとさえ思えてしまうから泣けてくる。


そんな時ひとつ思いつく。なぜ小百合がこうまで康太に相手を叩き潰せというのか。


「あのひょっとして・・・やたらと叩き潰せって言ってるのって・・・相手がその知り合いの弟子だからですか?」


「そうだ。弟子同士の戦いとはいえあいつに負けるのは気に食わん。しっかり叩き潰して格の違いを見せつけてこい」


むしろ自分が格の違いを見せつけられそうですと康太は泣きそうになってしまった。


魔術を修得して、魔術師になって、ようやく二つ目の魔術を修得したような素人に毛が生えたような人間に対して相手との格を見せつけろなどと無茶無謀にもほどがある。


しかも戦いに勝てという理由が思い切り自分の私情だ。弟子の為を思ってだとか今後の経験のためにだとかそう言う考えが一切ない。


そう言うところは確かに小百合らしいと言えばらしいのだが、もう少し自分に気を使ってほしいと思うばかりである。


「姉さん、このライリーベルって魔術師の情報なんか知らないですか?なんでもいいです・・・!」


「・・・えーと・・・」


真理は話していいものかと迷っているようだった。


魔術師同士の戦いにおいては相手の魔術の探り合いが必須。これから康太が魔術師として生きていくならこれはある意味最初の関門と言ってもいいだろう。


余計な口を出してそれを簡単なものにするのもどうかと思えてしまうのだ。

もちろん兄弟子としてアドバイスの一つもしたいと思うのは当たり前だ。むしろこんな無理難題を突き付けられて自分が代わってやりたいとさえ思っている。


だが康太の師匠はあくまで小百合だ。自分がその方針に口を出すことはできないのである。


真理が小百合の方を見ると、彼女は無言で首を横に振っていた。


しゃべるべきではない。たとえ知っていても。


小百合の反応からこれは黙っていなければいけないのだなと理解して真理は小さく謝りながら康太に頭を下げていた。


頼みの綱であった真理が教えてくれないとなると、康太には本当にできることがなかった。


はっきり言って出たとこ勝負になってしまうだけにかなりつらいところだ。相手の所有している魔術が少しでもわかればまだ対策のしようがあったのだが、そう上手くはいかないらしい。


分かったのは相手の名前くらいのものだ。ライリーベル。自分の魔術師としての名前がブライトビーであることを考えればはっきり言って名前とその魔術師の実力や特性などはほぼ無視していいだろう。


相手がどのような手段を講じてくるのかも不明、どのような魔術を所有しているのかも不明。圧倒的な格差がある中でどうやって戦えばいいのだろうか。


「あの師匠・・・さすがに可愛そうじゃ・・・何かしらアドバイスしてあげないと・・・」


真理としては見ていられなかったのだろう、さりげなく小百合にそう進言すると彼女も何かしら思うところもあったのか、ふむと小さくつぶやいてから項垂れている康太を眺めていた。


アドバイスといったところで未熟な自分の弟子がそれを実行できるとも思えない。何よりこの康太は魔術師とは名ばかりの素人なのだ。


「そうだな・・・一つだけいえるとすれば、お前は魔術師として戦うな。」


「・・・え?」


魔術師として勝ってこいと言われているのに魔術師として戦うなとはどういう事だろうかと康太は眉をひそめていた。


だがその意味を少しずつだが自分の中で理解していた。


「それは・・・定石通りの戦い方はしない方がいいってことですか?」


「そうだ。まともな魔術師としての戦いをすればお前に勝ち目などないだろう。だからお前は今回魔術師として戦うな」


魔術師としての戦いは小百合や真理との訓練でかなりいろいろと仕込まれてきている。実戦に限りなく近い戦いであったためにそれなりの経験も積んだ。


魔術師とは相手の魔術を自らの魔術で攻略し、相手では防ぐことのできない魔術で攻撃する。その繰り返しのようなものだ。


いわば中距離での魔術の打ち合い。自分の距離を維持しながら魔術を行使し続ける。それが魔術師としての戦いだ。


一般人では決してできないような経験だったのは自分でもよく理解しているしそれなりに力もつけたと理解している。


だがそれはあくまでそれなりでしかないのだ。


野球で言えば普通にキャッチボールとフライ処理ができるようになった程度の実力だ。はっきり言って一試合やろうと思ったらまだまだ実力が足りなすぎる。


だからこそ小百合は魔術師としての戦い方を捨てろと言ってきたのだ。


「でもそれって、相手はそれで納得しますかね・・・?」


「納得するか否かは問題ではない。問題なのはその戦い方をお前がして勝つか否かだ。定石から外れるという事は純粋な力比べをしないという事だ。勝っても負けてもお前の実力のなさは露呈するだろうが、勝つか負けるかでその意味合いは大きく変わる」


正面切っての戦いができないからこそ奇策に走る。普通にやっても勝てないから意表を突く。


地力で勝っている相手なら定石通りの戦いをして勝てるはずなのだ。それがないからこそ康太は定石どおりには戦うなと言われているのである。


「お前はバカじゃない。私が教えた二つの魔術と、戦いの場になる状況を常に頭に入れて行動しろ。相手がどう動くか、何をしてくるか、それを考えて先読みすれば勝てないことはない」


小百合は無茶苦茶を言うが無理なことは言わない。少なくとも康太はそう感じていた。


小百合が教えてくれた二つの魔術、この二つと学校という状況を全力で活かせば勝つことだってできる。


相手だって同い年だ。魔術師としての年齢は負けていたとしても人間としての考え方はほぼ同じはずである。


魔術師となって選択肢が増えただけのただの人間。相手にできることを常に理解して頭にいれながら行動すれば何とかなる。小百合はそう考えているようだった。


「そんなんでうまくいきますかね・・・?」


「それはお前次第だ。最初からあきらめているなら可能性は最初からない。お前は私の弟子だ、できないことはない」


自分の弟子なのだから勝てる。その根拠のない自信は一体どこから来るのだろうかと康太は不思議に思っていたが、何故だろうか、小百合からそう言われると何やら力が湧いてくる。


やってやろうという、半ば投げやりな気持ちになれる。


「・・・ちなみになんか武器みたいなものって貸してくれませんか?なんかあるとありがたいんですけど」


「ん・・・そうだな・・・さすがにあまり殺傷能力の高いものを最初から渡すのは・・・」


「あ・・・師匠ちょっと待っててください」


真理が何か思いついたのか、地下に下りていくと数十秒もしないうちに戻ってくる。その手には何やら棒状のものが握られている。


それが竹刀袋であると気づくのに時間はかからなかった。


「これなら学生同士でもいいんじゃないですか?最低限ダメージは与えられますし」


中に入っているのは木刀だった。シンプルな作りだが柄の部分に何やら紋様が描かれている。それが方陣術の一種であると康太はすぐに理解できた。


「これ、なんか特殊な木刀なんですか?」


「えと・・・そこまで大したものじゃないんだけど・・・」


「これはこいつが昔使っていたものだ、方陣術を組んであるように見えるが、実際は形だけで何の術式も組まれていない」


要するに見かけ倒しだなと小百合が言うと、真理は恥ずかしそうに康太に木刀を差し出した。


それでも丸腰よりはずっとありがたいと、その木刀を手に取って軽く振ってみる。


剣を扱うことなどなかったためにかなり変な振り方になっているかもしれないが、今はそれでいいのだ。未熟者なりに自分で努力していく以外に手はない。


評価者人数が50人突破したので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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