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とりあえず、暫定的に『恋人』関係となったわけだけども!
いや、ほぼ確定? 両思いだし?
正直、フォルカスの中に宿る竜における番なるものが、夫婦関係って意味でいいのかって問われると微妙に違うらしいんだな、これが。
とりあえず、まあそう言っても彼は彼で人間の血が強いわけだから何でもかんでも竜に引っ張られるってこともないようなので、恋人関係っていう言葉でいいんだと思う。
とはいえ、今はみんなで行動しているし、ご家族との面談もあるしね。
(……道のりが、遠いな?)
紆余曲折の末、なんだかんだ両片思いだったのが結ばれたんだから私たちらしいっちゃ私たちらしいのか?
なんとなく納得は出来ないが、なるほどなあなんて思ってしまう所もあるのが微妙な気持ちだ。
「しかし、待ち合わせとは誰なのかな」
「さあ。でもご実家関連みたいよ、流石に妹さんが該当者なのか、当事者なのかって問題があるからいきなり直接問いただしたりしない方向みたい」
そう、まあ、一番問題なのは行き過ぎたブラコン(あくまでフォルカス視点)である妹さんが転生者であるかどうかってところなのよね。
私とフォルカスの関係を認める認めないはともかくとして、今回の予言だとか転生者だとかそんなトラブルの渦中にある人物なのかどうかっていうのはとても重要な問題なのだ。
なんせ、各地で妖精族が攫われたり変な儀式の準備をしているっぽい現状に王族が関わっているなんて国際問題になっちゃう!
そんなことになったら、旅行も自由に出来なくなってしまうじゃないか!!
そんなこんなでフォルカスが王都よりも一歩手前で人と待ち合わせするというので私たちはついでに食料だの、足りなくなった暖房用の燃料などを買い出しに来たのだ。
(……意外と、緊張しなかったな)
なんと、オリアクスと私の二人で、だ。
今のところ〝お父さん〟って自然と呼べていないのが問題と言えば問題かもしれないんだけど、タイミングを逃し続けた関係ってこんなもんなんだよなあ!
とはいえ、改めて『受け入れてもいいか』って決めたから変に意識しちゃうかなあとか思ってたんだけど、意外とこれが……なんていうの、とても良い距離感というか。
ちなみにイザベラはお留守番をしてくれている。
あの子ったら気を遣ってくれて、二人で行ってきてくださいとかもう……空気読める上に送り出す際には私にだけ見えるようガッツポーズ見せてくれるとか最高じゃない?
「あ、そこの果物屋でイザベラにお土産買っていってもいい?」
「おお、そうだねえ。あの子は何が好きなのかな? アルマの作る料理はいつだって幸せそうに食べるから私もとても楽しいが、父親としては娘の好みを知りたいところだねえ」
「そうね、……ところでオリアクスはなんでそんなにお金持ってるのか聞いてもいい?」
買い出しに来てから知ったんだけど、オリアクスの財布の中ヤバいんだよね。
貨幣に関しては割とどこの国でもその国発行の硬貨と紙幣って組み合わせの他に証券とかまあ色々ある。
他にも、国単位で換金が面倒な人用に商業ギルドでしか使えない換金用の紙幣ってのが存在するんだけど、そこはまた別の話。
とにかくオリアクスの財布には紙幣がぎっちりでそんな高額どこで使うんだよって町中で絶叫しなかった私を誰か褒めて。
「ふむ、言っていなかったかね?」
「商売っぽいことをしているとかなんとか?」
「そうそう。私だけでなく、知り合いの悪魔が経営する商会で働いていることになっているのだよ」
「待って」
「そこで役員待遇を受けていて」
「待って待って!?」
情報が多いな!
そう思いながらオリアクスと私は会話をしながらお土産の果物を買ってイザベラのところへと戻ったんだけど、そこで視界に入った光景に私は思わず目を瞬かせた。
「おお、なんと美しいのか! 今日貴女に出会えたことはいずこかの神による采配に違いない。猛き騎士に守られし乙女よ、どうか隠れずこの哀れな男の前にその姿を見せて名前を賜る栄誉を……!!」
「いい加減にしろ、コイツが嫌がってんだろうが!」
だって、私たちの馬車で困惑しているだろうイザベラの姿に、そのイザベラを背に庇うような態勢で険しい顔をしているディルムッド、そしてそんな彼らを前に跪いて高らかに愛の告白をしている青年である。
……私たちがいない間、何があったのさ!?




