2-21
フォルカスから衝撃的な話をされた後、私たちは話し合ってとりあえず黒竜帝に相談も含めてやはりフェザレニアを目指すべきだろうということになった。
なぜかオリアクスも一緒に。
いやうん、いいんだけども。
(まあ、最初の目的だったイザベラに精霊を見せるってのは達成しているし……いいのかな?)
精霊村を出立する前に雲羊の谷にも寄ってヴァンデール爺さんから糸を買って、妖精村に寄ってアラクネたちにイザベラの防寒具を編んでもらうことになったし。
それは後ほど鳥便で届けてくれるらしい。
妖精族御用達の宅配便ってヤツである。便利だけど、鳥だけに途中で襲われたりするんじゃ……って思うところだけれど、ところがどっこいその鳥ってのが冒険者たちの中で触れてならない存在に分類される怪鳥だったりするんだよね。
いやあ、『ソイツが行くから攻撃するなよ』ってランバに忠告されたけど、普通ね、そんな怪鳥がお荷物宅配するなんて思わないからね……?
(それにしてもフォルカスの妹が転生者か……)
しかも話を聞いた限り、フォルカスにご執心の模様。
血の繋がった兄妹だから恋愛関係には発展しなかったし、フォルカスが本能強めの先祖返りだったのが良かったのかもしれないけど……問題は私だよなあ。
果たして会ってみたところで、どこの馬の骨ともしれない女に兄を譲る気はないとか小姑とのバトルが始まったり始まらなかったり?
それを考えると若干めんどくさ……いやいや、胃が痛いなあ!
(転生者だから兄妹とかの倫理観が薄かったのか、それとも元々の気質なのか。フェザレニアでは兄妹での結婚は禁止しているはずなんだけど)
国によってはある程度その辺、異性ならオッケーくらいの緩いところもあるからね。
フェザレニアはそうじゃないので、そうなるとフォルカスの妹さんはかなり異色の存在では?
まあ、幼いうちは彼が言っていたように『小さい子供が親族に対して好意を抱く』傾向ってことで済むんだろうけど……今はどうなのかな。
(今もそうだったら絶対面倒なことになるよなあ。妹は妹でも、うちの可愛い妹とは全然違ってとても厄介そうだ……)
人様の妹にそんなことを思ってはいけないと思うんだけども!
私と視線が合った瞬間、にこっと笑ってくれるイザベラにほっこり癒されつつ私はそのイザベラの隣に座るオリアクスに視線を向ける。
今、御者台には私たちが三人、横並びに座っているのだ。
勿論余裕はあるけど……どういう状況だコレ。
「で、オリアクスは何を当然のように私たちの馬車に乗っているのかしら」
「そこはお父さんだろう? アルマ」
「いいではありませんか、姉様。実際のところがまだわからないとはいえ、オリアクス様は少なくとも我々の味方なのでしょう?」
「いやまあ、そりゃそうなんだけども」
「わたくし、もう少し悪魔の世界についてお話を伺いたいと思いましたの。姉様もご一緒にいかがですか?」
「……それじゃあまあ、そうしようか」
可愛い妹にそんなおねだりをされたら断れるはずがない!
私だって悪魔の世界にはちょっと興味があるしね。
そもそもオリアクスが悪魔だってことも、多分私の父親だっていうことも疑っちゃいないのだし。
それに、どうやって今後……協力しているであろう悪魔について探すのかとか、私たちと一緒にいて何のメリットがあるのかとか教えてもらえるとこちらとしても行動がしやすいし。
そんな中、ちょっと小腹が空いたなあと思ってマァオさんが出掛けに持たせてくれたバスケットの中からサンドイッチを取り出したところで、私は首を傾げた。
勿論イザベラにもとってあげたよ!
「そういや、私たちは普通に食事をするわけだけど、オリアクスはどうするの? 契約主もいないなら喜びの感情がどうのってわけにもいかないでしょ?」
「お父さん」
「……オトウサン」
譲らないね!?




