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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
ようこそ、気ままなる世界へ

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「黒竜帝って……あれでしょ? フェザレニアの聖なる山に住んでいる竜で、国の危機に際し王女の祈りを聞き届け国を守ってくれたって……国旗もそれを元に作られてるわりかしポピュラーな伝説よね」


 フェザレニアの黒竜帝って絵本にもなってるくらいだし。

 まあ竜帝って言っても別に何かこう……本当に王様だったとかじゃなくて、立派な、尊敬すべき竜って意味で人々がそう呼んだ……とかなんとか孤児院時代にシスターから聞いた気がする。


「そう世間一般では言われているが、それは事実だ」


「え?」


 ひょいっとフォルカスが馬上から御者台に飛び乗ってくるもんだから馬車が揺れる。

 ディルムッドが慌てて放り出された馬の手綱を捕まえて「やるなら先に言え!」って怒っているけどフォルカスはどこ吹く風だ。


 私の隣に座ったフォルカスは珍しくローブのフードを外して、受ける風に心地よさそうな顔をしている。

 なんとなくその表情に見蕩れそうになって私はぎゅっと表情筋を引き締めた。


「黒竜帝は私にとって祖先にあたる」


「はあ!?」


「まあ」

 

 だけど、そんな努力も虚しく彼の発言に私とイザベラは目を丸くした。

 黒竜帝が、実在して、その上フォルカスの祖先……ということは、フェザレニア王家は竜と交わったということだ。


 人と竜、妖精や果ては悪魔まで交わって子を成すというのは別に珍しいことではなく、そこから種として落ち着いた亜人族だって多くいるのは事実だ。

 それは歴史書にも記されているし、珍しい話じゃない。

 なんだったらほら、この国の王家だって天使と交わったとかいう伝説がなくもない。眉唾らしいけども。


「そもそもフェザレニアは建国当初、女王だった。その伴侶こそが黒竜帝だ」


「ええ……」


「まあ、それでですのね」


 イザベラは納得した様子だ。

 いや私が追いつけてないんですけど?

 でもそんな私にイザベラはわかっていると言わんばかりに頷いて、教えてくれた。


 フェザレニアは雪深く、今いる王国からは距離もあって国交が盛んとは言えないが定期的に入る情報で、王族は特に強い魔力を保有しており、数代に一人魔力が強すぎて魔力反転する人間が現れるがその力があまりに強すぎるため放逐されるらしいと伝え聞いていたらしい。


 魔力反転する人間というのはとても稀なので、それが一族で隔世的に出現する理由が竜族の血を引いているのならば納得だということだった。


「まあ、それもあるんだが……魔力反転するほど魔力を受け継いだ子供は、先祖返りの可能性が高いことが問題だ。放逐するのではなく、王族としての責務を果たせなくなる可能性があるから自由にさせるというのが正しい」


「……王族としての責務を、果たせなくなる……?」


「そうだ」


 フォルカスは頷いてディルムッドに視線を向ける。

 二人が視線で何かをやりとりしているのを見て私とイザベラは置いてけぼりを喰らったような気持ちで少し面白くない。

 イザベラも同じようだ。ちょっぴりふくれっ面しているのが可愛いったらないね!


「黒竜は、魔力が強い。そして一途なんだ。……厄介なほどに」


 ディルムッドがため息交じりにそう言った。

 フォルカスは、困ったような顔をして私を見つめているから居心地が悪い。


「え……っと、つまり、それが?」


「だから、番を見つけたらそのために国も何もかもを投げ出してでも伴侶として得ようとする。王としても、臣下としてもそれじゃあ困るだろう」


「……必ず、魔力反転をしたものがそう(・・)だとは限らない。だが、私は竜の血が強いのだろう、と、思う。昔アルマにも見せた奥の手、アレは竜の炎だ。黒竜が吐く、青い炎……アレが出せるということは、私は竜に近しいのだろう」


 フォルカスが苦い顔をしてそう言うのを、私はなんとも言えない気持ちで聞いていた。

 だって、そんなこと言われたって何がじゃあ問題なのかさっぱりわからない。

 いや、わかっている。

 番となるべき相手を見つけたら、猫まっしぐら……じゃなかった、傍らに置きたくて国を犠牲にしたり攻め入ったり攫ったりとまあ良からぬ方向に走り出す可能性があるってことよね?


(だから、特別な相手を作るつもりはないって言ってたってこと?)


 じゃあ、なんで今更私のことを番にしたいだなんて言い出すんだろう。

 私なら壊れないとか、フォルカスの魔力にも恐れず付き合えるとか、そんな理由だったりするんだろうか?


 そんな風に考える私に、呆れたような顔をしたディルムッドが大袈裟なため息を吐いて見せる。


「だーからあ! フォルカス、お前は色々足りないんだ!」


「……だからこそ、こうして言葉を重ねて」


「違うだろ、お前がいつからアルマに惚れてンのかを伝えろっつってんだよ! いや、番に執着する性質の説明も大事だけども!」


 いやまあ、私を間に挟んでする会話ではないな?

 でもディルムッドがまともな助言をしてくれたおかげで、話が進んで……いや待て、これなんて羞恥プレイ?

 イザベラとディルムッドに見守られて告白を聞かされるとか、やばくない? この状況!!


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― 新着の感想 ―
[一言] つまり一目見たときから竜としての本能がハートショットされてそれ以降宝物を抱え込みたくてたまらないってことだな!
[一言] あぁーーー…それ聞いちゃっていたからか…そらアルマからしたら諦めるしかないじゃんって、なるわなー……………言うて愛をどストレートに伝えたら伝えたでアルマの精神削られる気もするような…?
[一言] ある意味、公開羞恥プレイww すごいなぁ… 全部。周りも周知の沙汰になるプロポーズww
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