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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
第二章 守りたい、この平穏生活

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「おう、来たぜー」


「いらっしゃいませ、ディル様」


「ん? 随分ご機嫌じゃねえか、イザベラ」


「ふふ、そうですか?」


 イザベラちゃんはディルムッドが言うとおり、ご機嫌だ。

 その理由を知っている私は鼻高々である。


 だって、髪飾りすっごい喜んでくれたんだよね!


 最初は遠慮していたイザベラちゃんだけど、やっぱりお金のことを気にしていてくれたみたいで……気にしなくていいのに!

 とはいえ、居候気分なのはどうしようもないことだから私はちゃんと言い訳を考えておいたのだ。


『折角姉妹になった記念に、お揃いで何かあったらいいかなって!』


 なんせ私は黒髪の直毛だし、割と青みがかった瞳をしている。

 イザベラちゃんのプラチナブロンドに紫の瞳とは似ても似つかないので、いざ『姉妹だ』と周囲に言ったところで誰も信じやしないだろう。

 でも血の繋がらない家族なんてどこにでもいるのだから、本人たちが良ければそれでいいのだ!


 ってなわけで、私たちは今、お揃いの髪飾りをつけている。

 まあ、私はイザベラちゃんみたいに腰まで長い髪ってわけでもないからね……って言ってもめんどくさくて切ってなかったからロングヘアの部類だけど。


 私は肩甲骨より少し下くらい、イザベラちゃんは腰くらいまであるから二人とも髪型は色々いじれるのが利点かな。

 一人の時はあんまり気にしなかったし、フォルカスに異性アピールってのも今更だから特になにもしなかったけど……あの子のお手入れするついでに自分もするっていう、なんかこういうのいいよね!


「なんだお前ら、同じような髪型して」


「ふっふーん、いいでしょ。お揃いにしてみたの!」


 っていってもかんざしなんだけどね。

 討伐依頼とかがある時には使えないけど、その時にはイザベラちゃんに預かってもらうつもりで買いました。

 普段の、こういう暮らしの時にはつけていたいよねって言ったらイザベラちゃんも賛成してくれたんだよ。


「ほーん。まあ、いいんじゃねえの」


「褒め言葉はどこ行った」


「あー? まあいいじゃねえか。ほらイザベラ、土産だ」


「まあ、水晶葡萄! こんな上物をよろしいんですか?」


「おう」


 水晶葡萄とは奮発してきたな。貴族でもなかなか口にできない逸品だぞ?

 さすがジュエル級冒険者、稼ぎが違うぜ……!


 だが! ピーマンフルコースは変わらない!


 こっそりと調理を続ける私をよそに喜ぶイザベラちゃんを見てディルムッドもまんざらじゃなさそうだ。デレデレしやがって!

 私の妹だぞ……と歯ぎしりしそうなところでフォルカスがひょっこりと遅れて現れた。

「なんだディルムッド、土産をもう渡したのか」


「おう」


「ならば私も渡しておこう、アルマ」


「ん?」


「土産だ」


 カウンターキッチンに置かれたのは巨大なウサギ。

 おおう、血抜きもされているとはいえそんなもんいきなり置かれてびっくりだね!!


 イザベラちゃんが小さく悲鳴を上げかけたけど、ぐっと飲み込んだのが視界の端に見えた。えらいぞ、イザベラちゃん!!


「いやいやいやいや」


 だけど私はそれをフォローできる状況じゃなかった。

 勿論ピーマン料理をディルムッドに見られたくないっていうのもあったけど、このウサギ、とんでもない代物だったのだ。


「どこの世界に討伐ランクの高難易度モンスターを手土産にするやつがいるのよ!?」


「なんだ、気に入らなかったか?」


「嬉しいけども!!」


 そう、このウサギ、ただのウサギじゃナイ。

 見た目に反して凶暴で狡猾、さらに魔法も扱う特殊モンスターの部類である一定の地域にしか存在せず、それでいてその毛皮、肉は最高級品であり額にある角や爪、目玉や骨は錬金術の材料になるという常に依頼が出ているモンスターだ。


 凶暴さもさることながら希少性も高く、なおかつ生息地が危険地域に指定されているので並の冒険者ではなかなか討伐できないことで有名なんだけど……それを夕飯のお土産にするフォルカス。

 さすがジュエル級冒険者。

 私が言うのもなんだけど、非常識な存在だな!


「アルマにはいつも世話になっている。そのくらい妥当だろう」


「そ、そう……? まあ、くれるならありがたくもらっておくよ、ありがとう」

  

 家庭料理の代金代わりでもらっていい代物なのか……?

 そこはちょっと疑問だけど、まあくれるっていうなら断るのも失礼だよね。美味しいし。美味しいものに罪はない!!


 折角だからウサギ肉のソテーも加えよう。


「よーし、それじゃあウサギが焼けるまでに前菜から出していこうかな!」


 ピーマンパーティー、開始だぞ!

 私が運んだ料理の数々にディルムッドの顔が引きつっていく。


 にひひ、やってやったぜ!


「アルマ、てめぇ……!」


「おやおやア? ディルムッドさん、どうかしたぁあ!?」


「くっそ、卑怯な……!!」


 本日のメニューはこちら!


 たことカラーピーマンのマリネ、パプリカサラダ、ピーマンのポタージュ、白身魚のソテー・ピーマン添え、ピーマンの肉詰め。


 どうだ!

 渾身のピーマンメニューだぜ!

 まあ若干可哀想に思えてきたので、ウサギ肉は多めに切り分けてあげようと今思いました。


 本当はオイスター炒めとかしたいんだけどねー、ごま油とかオイスターソースとかが手に入らないから難しい。

 牡蠣は手に入るけど、オイスターソース作るのってどうやるのさ?

 こちとらレシピ知識はあるけど、調味料作るところはちょっとわからないんだよねー、前世の知識は調味料ありきだもの!


 ってことで、まああるもので美味しくいただきましょう。


「それじゃ、いただきまーす!」

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一面ま緑の食卓かと思いきやパプリカも使うのか、アルマさんたら優しいなぁ、甘いよねパプリカ。 品種改良で最近のピーマンは苦味も弱まってますが、異世界もそうだとは限らないですしね。 でもきっと…
[一言] でもあれでしょ?悲しいかななまじ料理が上手なせいでピーマン嫌いでも美味しく食べられる料理が出来てるんてしょう?
[良い点] それぞれの贈り物にこもった愛情。愛されてますなぁ [一言] ディルさん、年上として弱みは見せまいと頑張って完食するのかな?
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