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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
最終章

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159/160

3-52

 それからはまあ〝始まりの聖女〟の言葉が本当か嘘かわからないまま割と目立つルートを通って私たちは旅をした。

 フォルカスとディルムッドも一緒にね!


 さすがに秘境って言われるようなところはイザベラにはまだ早いので、どちらかというと観光目的っていうか……当初の目的通りに私たちは旅をしたのだ。

 

 あっちこっちで大きなトカゲの尻尾切り取って焼いてみたり、遺跡の中から綺麗な花を見つけてみたり、迷子の雛を連れて希少種の鳥のところへ届けてお礼に羽をもらったり……結構充実した日々だな?


「本当に何もないね」


「だから言ったであろう?」


 ドヤ顔の父さんに、娘としては複雑な気持ちだな!?

 

 あれからエドウィン君経由であちらの国の情報を得たりもしたんだけど、なんとかやっているらしい。王様たち、もうちょっと頑張れ。


「そういえばアルマに言わなければならないことがある」


「なあにフォルカス」


 夕日が綺麗な場所があるっていうんで見に来たのはヤバいモンスターが出る地域だった。

 まあ私たちが揃っていて恐ろしい目に遭うことの方が少ないと思うので、余裕で到着したんだけどね!


 そこでみんな揃って夕日を眺めつつ夕飯の準備をしていたら、フォルカスが唐突に私の前に跪いたのだ。

 イザベラが頬を押さえてキャアと歓声を上げ、ディルムッドも指笛を吹く。

 いやいやお前ら落ち着け?


「アルマ。(つがい)となってもらうお前に言わねばならないことを忘れていた」


「う、うん?」


「竜の血が色濃く出た先祖返りであることを告げていたと思う。その衝動も、能力も、より竜に近いものだと」


「うん、そうね?」


 えっ、これプロポーズの流れじゃなくてもしや巣作りが必要ですとかそういう……?

 なんだか流れがおかしくて私が戸惑う中、イザベラとディルムッドも『なんか違うな?』っていう怪訝な表情を浮かべている。


 綺麗な夕日をバックに私たちは何をしているんだろうか?

 じゅうじゅうと焼ける肉の匂いがこれまたとてもシュールな状況を生み出している気がする。

 後なんか匂いに釣られて獣が集まってきているんじゃなかろうか?

 イザベラが結界張ってくれているし、父さんが警戒の網を巡らせているから大丈夫って保証してくれているので気にしないでもいいんだろうけど。


「番ったら最後、魂の結びつきが出来るのが竜族だ。私はほぼ人間であるからそこまでではないと思うが……多少寿命が延びると思う。多分百年くらい」


「ひゃくねん」


「黒竜帝と初代もそういうことがあったそうだ。言われただろう、初代女王の墓には志があるだけだと。……黒竜帝と契りを交わした初代女王は、人の世の理を外れ長く生きた。あの山で」


「あ、あー……あれ、そういう意味だったの」


 まあ確かに異種族婚姻をすると不思議なことが起きるとかよく聞く話だ。

 どういう理屈かは解明されていないけれど……黒竜帝の言葉を借りるなら、魂の結びつきってやつになるのだろうからそれが解明されないとわからない話なんだろうね。

 獣人と結婚した人族が匂いや気配に対して敏感になったとか、そういう事例もあるらしい。


 竜族と……ってのは事例がなさすぎてよくわかんなかったけど、そうかあ、竜の堅牢さとか寿命の長さが影響を及ぼすのかあ……。


「え? あれ、それってさあ、私の寿命が延びるってことは〝始まりの聖女〟が言ってた老衰の時期っていつなんだろう?」


「そこか? いや、それも大事かもしれないが……話を戻すぞ。それでも私はお前を手放せない。人より長い人生にはなるが、それを許してほしい」


「なんだろう私が拒否する権利まるでないこの雰囲気!」


 まあ、断らないんですけどね?

 それはそれで面白そうじゃない。


 そう笑えば、フォルカスがほっとした様子を見せる。

 だけどイザベラは複雑そうだった。

 でもすぐに朗らかな笑みを浮かべる。


「フォルカス様、それってつまりプロポーズですのね?」


「うん? まあそうなるか。ああ……指輪がいるんだったか?」


「いらないよ、邪魔になるし」


 私は装飾品をつけるタイプじゃないんだよね!

 戦っている最中に傷がついても嫌だし……特に物にこだわりはないし。


「おやおや、話はまとまったかね? それじゃあ肉も焼けたようだし、食事にしようじゃあないか!」


 我関せずだった父さんが、そう言って笑う。

 ディルムッドが「いい加減俺だけに肉を焼かせるのなんとかしろ」って文句を言っていたが、どうやら私たちのお祝いにスライドしたようなのでこのまま頑張って貰おうじゃないか。


「……なんだかなあ?」


 願ってもない、いつも通りの日々がある。

 私を嫌う〝始まりの聖女〟サマは、これをどこかで見ているんだろうか?


 そう思うとなんだか私が悪いわけじゃないけど、申し訳なくなった。


「姉様! はいどうぞ!」


「ありがとう、イザベラ」


 傍らには可愛い妹、反対側には恋しい相手。

 あれ、なんだろう。

 両手に花ってこのことなのかなあ、そんなことを考えながらソーセージにかぶりつくのであった。


次回最終回になります!

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― 新着の感想 ―
[一言] えっ?ほんとに最終回????
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