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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
最終章

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3-51

 それから、私たちは無事フォルカスたちと合流した。


「よっす! メシくれ、メシ!!」


「久しぶりに会ったのにいきなり要求か!!」


 久しぶりに会ったディルムッドのその言葉に思わず突っ込みつつ、そこそこ大変だったのだろうという労いを込めて私たちは野営の準備をしながら豪勢にバーベキューでもしてやろうと準備を始める。

 ほら〝始まりの聖女〟サマはああ言ったけど?

 なんか一枚岩じゃないっぽいし、いつ襲われて町に被害が及ぶとも限らないでしょ?


 私ってばこれでも気遣いできる女だからね!

 別に町の方で私たちを探す〝砂漠の荒鷲〟たちがいるらしいなんて噂を聞いたからではない。決して顔を合わせたら面倒くさそうだとかそんなことは思っていないのだ。決して。多分。


「そんで、どうだったのよ? 久しぶりの実家は」


「あー……そりゃもう面倒だったぜ?」


 ディルムッドはライリー様に呼ばれてあの国へと戻っていたわけだし、何かしら理由があってこちらになかなか戻って来れなかった……ということは私たちも聞いている。

 フォルカスはもう少し詳しい話を聞いていたのかもしれないけど、本人から話させようと思っていた節があるので我々も待っていたってわけだ。


「ああ、そうそう。ここに来る途中、エドウィンたちに会ったぜ。オウジサマはすっかりショボくれて馬車ん中にいたから姿は見えなかったが、生きちゃあいるようだ」


「そう」


「エドウィンがお前たちには迷惑をかけたって申し訳なさそうにしてた」


「気にしなくていいのに……」


 なんだかんだエドウィンくんはずっと巻き込まれっぱなしだなあ!

 王子の側近じゃなくなったんだから、今回で巻き込まれるのが最後だといいんだけど。


「メシ食いながらで悪いが、あっちの状況を話すわ」


 焼き上がった肉を口に放り込みながら、ディルムッドはそう言った。


 彼に言わせると、国王夫妻が倒れたのは病ではなく単なる心労。

 聖女たちから聖属性の魔力が失われていっているのは本当で、そのことが原因で結界が弱り続けていて、各地で良くないことが起きる度に凶兆だ、王家は何をしているのかと苦情が殺到した結果、病に伏したという言い方で逃げているんだそうだ。


「まあそのたんびに国費でなんとかしちまえってんで国庫もカラになる。残された王子はきっとお前のせいだから金をなんとかしろってんであの町に行った……ってわけさ。あの坊主はどこまで事情を聞かされていたのかはわからんが、国王夫妻は切り捨てる気満々だったぜ?」


 ディルムッドは苦々しく笑いながら、イザベラが差し出したお茶を飲み干した。


 彼いわく、カルライラ辺境伯とその息子を呼び出してさっきのことを説明した国王は、なんと『王子の息子が成人するまで中継ぎの王となってほしい』とディルムッドに言ってきたんだそうだ。

 認知もしてこなかったし、今更されたくないと以前彼自身が拒否したというのにだ。


 これにはライリー様も呆れて、碌に挨拶もしないまま拒絶だけ述べて早々に王城を二人で辞して酒を飲んで帰ったんだってさ!


「……なりふり構わないねえ」


「まあそんなもんだろ。元々あの国は聖女に頼りすぎだった」


 ディルムッドのその言葉に、イザベラがどこか居心地悪そうに視線を逸らす。

 だけどそんなイザベラの頭を撫でながら、ディルムッドは言葉を続けた。


「案外苦情を言いながらも、あの国の人間は『これも神の試練だろう』とかなんとかいって乗り切ってるぜ。民衆ってのは王族なんかにくらべりゃ図太く元気に生きる力がずっとあるんだ、聖女に頼らなくても生きていけるだろうさ」


「で、でもディル様。瘴気が……」


「そもそもその瘴気ってのが俺らのマイナスな感情だってんなら、今後も付き合っていかなきゃならねえもんだろう。〝始まりの聖女〟だって結局ろくなもんじゃねえみたいだし」


「アンタは本当に単純でいいわねー」


「お? やるか?」


 私の言葉にディルムッドが笑うけど、まあ冗談だってわかってるから焼けた肉を渡して終わりだ。

 うん、いい焼け具合。


「そんで? そっちはどうなった?」


「うーん、よくわかんないことが起きてる」


「はア?」


 あの国の出来事も相当よくわかんないことになっているが、まあライリー様がしっかりしていればエドウィン君や辺境地の民は大丈夫だろう。

 いきなり天変地異が起きるっていうよりは、今まで表に出ていなかったことが明るみに出たとかそんな感じのようだしね。


 ヴァネッサ様たちもいることだから、みんなで力を合わせてどうにかするっていうのが見えているから不安もない。

 ただまあ、どっかで差し入れくらいは持って行ってもいいかな。


 そんなことを考えつつも、私は〝始まりの聖女〟に会ったことをすべて話した。


「これからどうすっかなあって悩んでる感じ」


「放置でいいじゃねえか」


「あ、そうなるんだ?」


「だろ、フォルカス」


「……そうだな。アルマ、おかわり」


「はいはい」


 なんだこいつらマイペースだな! もうちょっと悩めよ!!

 人の人生かかってんだぞ!?


 いやまあ、他人事だからしょうがないね!


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