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さてソーセージ祭りとなってしまった夜が明けた朝、イザベラには何事もなかった……なんて誤魔化すこともなく私はありのままを話した。
なんとも言えない顔をして聞いていたイザベラだけど、私の言葉を全部聞き終えてからしばらく考えていたかと思うと、ハッとしてから満面の笑みを浮かべた。
「ということは……アルマ姉様とわたくし、悪役令嬢仲間ですわね!」
「うん? ん? そ、そうなるのかな……?」
正直なことをいえば私は悪役令嬢じゃないと思うけどね!?
あの〝始まりの聖女〟が言っていたことが真実であれば、私の前世がそうだったかも知れないんだけどさ……実感はないよね……。
「それで、アルマ姉様はどうなさるおつもりなのですか?」
「うーん、悩むところだよねえ。あっちは今はまだ直接的に手を出してくるつもりもないんだろうってことは確かなんだけど……」
じゃあ追っかけてぶっ潰す!! とまでは考えてないんだよなあ。
そもそもが〝イザベラを追っかけ回すなら潰しておこうか〟くらいのノリだったわけでしょ?
現状ではそこまでイザベラに固執してませんよって言われてる以上、私たちが考えるべきは〝始まりの聖女〟ではなくその周辺にいる連中ってことになる。
……まあ、最終的に私が老衰で死ぬ前には彼女が現れることには違いないんだろうけど。
「であれば、わたくしもお父様の意見に賛成ですわ」
「え?」
「まだまだ先は長いということであれば、結論を急ぐこともないと思いますの。わたくしにもそう仰ってくださったように」
にこりと微笑むその姿は慈母か何かかな?
思わずバブみってのを理解しそうになったね!
危ない危ない……我が妹ながら恐るべし。
「今日の昼頃にはディル様とフォルカス様も合流なさるのでしょう? きっと同じような意見だと思いますが……」
「そうかなあ」
焚き火などの片付けをして、テントを魔法で収納する。
昨晩にはそこに〝始まりの聖女〟がいたという事実があったのに、今じゃああれは夢だったんじゃないかと思う。というか、思いたい。
「それじゃあまあ、今日は湖で食料でも集めてアイツらが来るのを待とうか。二人が言うように焦ってもしょうがなさそうだしねえ」
「では今日はわたくしが昼餉に姉様から習ったアクアパッツァを披露したいです! 一人で作れるようになったので是非!」
「はいはい。じゃあ美味しい魚を捕まえないといけないね」
イザベラの笑顔につられるように、私も笑う。
そうして場所を移動しつつ、私は思わず呟いた。
「悪役令嬢、ねえ……」
マリエッタ王女が聞いたら驚くんじゃないかな?
それとも『やっぱりそうか! お兄様を誑かす悪役令嬢だったなら納得ね!!』とか言い出すんだろうか。
(……絶対にあの子には教えるなってフォルカスには釘を刺しておこう)
面倒事を察知して、私はそんなことを思うのだった。
あともう2~3話かな……




