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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
三部 第二章 『悪役令嬢』

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3-13

 町の酒場は大賑わいだった。

 とはいえ、今回はイザベラも一緒だからね、そこそこお上品と呼べる感じの酒場をチョイスしたよ!

 それなりのお値段取られるけど、安全と味が保障されるってのはいいもんだよね。

 このクラスになれば中級の商人とか冒険者が多く利用するからお店側でも用心棒を置いたり料理に気を遣ったりするから利用しやすいっちゃ利用しやすいのだ。


 私としては何が出てくるかわかんないくらいボロい店で大発見! みたいなのも好きだけどね。


「美味しい……!」


「うん、この煮込み美味しいねえー」


 ガヤガヤと賑わう店内で私たちが頼んだのは、野菜と肉の煮込みに蒸しパン。

 それから串焼き肉だの豆コロッケだの、お店のお勧めをそのまんま頼んでみたんだけどこれが美味しいのなんの。


 砂漠の土地だから水が貴重とはいえ、この町はオアシス近くにあるからその辺余裕なのだ。

 水の魔法を使って出すことも可能だし術士は重宝されるけど、そちらには限界があるからね……。


「こちらの揚げ物も美味しいですわ」


「火傷に気をつけてね」


 うーん、これは揚げ餃子みたいなもんかな? アラブ料理のサンブーサにも似てるけど……真似て作るには油が必要だなあ。

 味付けにスパイスがちょいちょい要りそうだけど、イザベラも気に入ったんなら今後作ることも考えて買っていくのもいいかもなあ。


 お店レベルを再現できるかどうかなんてのは問題じゃない、可愛い妹のために何をできるかが大事なんです。


 カウンターに座って料理を楽しむ私たち。

 全然情報収集してないじゃないかって?

 いやまあ、ほらほら焦らない。腹が減っては戦ができぬって言うでしょう。


「ねえさんたちいい食いっぷりだなあ。この町は初めてかい?」


 私の隣に座る商人の用心棒らしき男が赤ら顔で話しかけてくる。

 その片手にはジョッキがあるので飲んでいるのだろうが、酔っ払っている訳じゃあなさそうだ。


「この店に来るのは初めてね。美味しくって妹とはしゃいじゃったわ。うるさかったかしら?」


「いいや、楽しげで何よりだよ。なあ大将!」


「あら店主と顔なじみなの?」


 男の声に軽く手を振って料理人が反応した所を見ると、常連客なのだろうか。

 イザベラはどうしていいのかわからないらしく、サラダを食べながらチラチラとこちらを見ている。可愛いなあ!

 

「いんや。俺はこっちの商人の護衛。こう見えてコイツ、やり手なんだぜ?」


「お、おいおい。よしてくれよ……!!」


「あら、そうなの。はじめまして」


「……すみません、ツレが不躾で……。申し遅れました、ボクは食品業を営んでおりますカイゼルと申します。この店に食品を卸している関係でして……ハイ」


 なるほど、食品業か。

 それなら店主と顔なじみでも納得だけど……ホイホイ話していいのかな?

 いや、何かあるから声をかけてきたと思うべきだろう。こういう場所で誰かと話す時はただ談笑したいだけか、それともメリットを見出してのことなのか。

 なにせそれなり(・・・・)の稼ぎがある連中がわんさといる店なのだ、商売に発展するかどうか……運を見出して縁を繋げるか。

 そこんとこの見極めが大事だろうね。


「私は冒険者をしているアルマよ。こっちは妹のイザベラ。食品業を営むってことは珍しい食材やスパイスも扱っているのかしら?」


「ボクは行商を生業としておりますので、それなりに珍しいものはあるにはありますが……」


「ふうん? それじゃあマネルネ岩塩とかあったりする?」


「マネルネ岩塩ですか! よくご存じですね……!!」


 マネルネ岩塩ってのは知る人ぞ知る岩塩だ。

 といっても、私は愛用してるんだけど……。


 マネルネ山脈の奥、とある遺跡の奥でしか今のところ採取されない岩塩で、ふんだんに魔力が宿った岩塩なのだ。

 取り扱いには少々難しいところがあるけど、私からして見るとあれで焼く丸鳥が美味しくってさあ、野営には絶対持っていたいのよね!!


 あれば助かるし、なければないで会話のつなぎにちょうどいい。

 商人と顔見知りってのも悪くない。

 父さんとアンドラス? あれは商人カウントしちゃだめだ。


「少量でしたらございます。値が張りますが、……大体このくらいで」


「あら良心的ね」


「……良いお付き合いを今後期待してと申し上げては失礼にあたりますか?」


「おいおい、そこんとこは強気でいけっていつも言ってるだろ?」


「うるさいな! ……すみません、コイツはマルセルと言ってボクらは幼馴染なもので。でも今後とも贔屓にしていただけたら嬉しいのは本当です!」


「……うん。じゃあ他にもスパイスとかほしいと思っていたところだから、そっちもみせてもらえるかしら。ここじゃあなんだから、個室に移動しようか?」


「え?」


「個室空いてるなら移動させてもらっていいかしら?」


 私が厨房に向かってそう言えば、店主はじろりとこちらを値踏みするかのような視線を向けて手のひらを差しだしてきた。

 ほぉほぉ、その態度は好きじゃないがわかりやすくって嫌いじゃないよ。


 私はポケットを探って店主に向かってわざと見せつけるようにして一枚の金貨を取り出した。

 それを見て、カイゼル君たちが目を丸くするのを横目にウィンクを一つ。


「カイゼル君の目は確かよ、私はとんでもなく上客だからサービスよろしくね」


「ぷふっ」


「……イザベラぁ?」


「す、すみません姉様! つい!!」

 

 私の言葉に隣でイザベラが堪えられないと言った様子で吹き出す。

 心外だな! 私はこれでも結構なお金持ちだぞう!!


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[一言] いい仕事してますねぇ
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