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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
三部 第一章 砂漠の国に咲く花の名前は

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3-6

 彼らの地面が揺れて(・・・)砂に埋もれた遺跡の下から巨大な手が現れる。

 おお、コレはなかなかのストーンゴーレムじゃないですかー立派だな!

 古代王国の遺跡から生まれた魔物か、なかなか意匠も凝ってるね!


 思わず感心する私だけど、『砂漠の荒鷲』のメンツからしたらそれどころじゃないんだろう。

 ゴーレムが放つ大ぶりの一撃をなんとか避けて、慌てて臨戦態勢をとったが遅い遅い。

 まったく、油断しすぎだよ!

 

 彼らが武器を構えた頃にはゴーレム以外にも蛇が複数現れていて、彼らはもう取り囲まれていた。


「くそっ、リッツ……魔法を使って蛇を蹴散らせ!」


「う、うん! ヒャッ!?」


 アランはさすがにゴールドに近いだけあってそこそこ動きがいい。

 それに対して他の二人は行動が遅い。

 呆気にとられた分、動きがほんの少しでも遅れればそれは致命傷になりかねない。


 事実、アランに声をかけられてハッとしたリッツが慌てて杖を構え魔力を今更練り始めたところで蛇たちの妨害を受ければそれは霧散してしまう。


(本当はそこを盾役がフォローして魔法使いに攻撃させられればいいのにねえ)


 常に警戒をする人がパーティーに誰も居ないってのは困ったもんである。

 確かに上位の冒険者たちともなると、談笑しながらダンジョン攻略……なんてこともあるけど、それでも彼らはいつだって気を抜いちゃいないのだ。


 パッと見、襲われたらそれに瞬時に対応しているかのように見えるかもしれない。

 実際そうだ。

 でもそれは〝いつ襲われても対応できる〟だけの注意を払った上での、不必要な緊張を省いた自然体ってだけの話。


 そこに行き着くまでは結構あれこれ経験するもんだと思うよ、うん。

 何に対してどう精神を研ぎ澄ますべきなのか、なんて口じゃあ説明できないもんね。

 こういう経験をして失敗を踏まえて強くなりたまえ若人よ!


 ……なーんて偉そうなことを思いつつ、私は蛇に手間取るリッツとベックに呆れてしまう。


「そいつら毒もない蛇なんだから盾役が魔法使いを守りなさい! アランはそっちばっか気にしてないでゴーレムの気を引きつけてあげなよ」


「お前も見てないで参戦しろ!」


 あの蛇に毒があるかどうかで彼らも対応に戸惑っている様子だけど、そのくらい予備知識をつけてからおいでって話よねえ。

 大体ダンジョンって地元にいるモンスターなんかの強化版が多いから、土地の生き物を把握するのが大事なんだよ!


 って先輩からのありがたい助言だっていうのにアランは私の言葉に怒鳴り返してくるじゃないか。

 参戦しろってあーた、せめて『手伝え』くらいは言えって思うのは私の心が狭いのかね?


(しかし妙だな)


 蛇も、ゴーレムも、私が近寄っているのは感知しているだろうにこちらへは一切敵意が向いていない。

 それを見て私は歩みを止めて、ジッと彼らを観察した。


「おい、なにしてんだ、早く……うわ!」


「蛇にシャーシャー威嚇されただけで情けない声出しなさんな。……アンタらさっき拾った遺物を懐から出して落としなさい」


「えっ? な、何を……戦果が……」


「いいから早く」


 私が強く言えばベックとリッツは顔を見合わせて懐に入れていたらしい小さな彫像を砂の上に落とした。

 砂はまるで生きているかのようにそれらを飲み込み、蛇もそれと一緒に砂の中へと消えていく。


 その様子にやっぱりなと思いつつアランの方を見ると、彼は私をキツく睨んだかと思うと剣を構え直しゴーレムに立ち向かう素振りを見せるじゃないか。


「要はコイツを倒せばいいんだろう!!」


 あーまあ、そうだけどねえ。

 私たちの目的はダンジョン攻略じゃなくて、調査なんだけど。


 その辺わかってんのかね?


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