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悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~  作者: 玉響なつめ
三部 第一章 砂漠の国に咲く花の名前は

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3-5

「姉様の目からご覧になって、あの三人はどうでしょうか?」


「そうねえ、悪くないけど良くもないってところかなあ」


「……? それは、どのような……?」


「世界が広いってことを理解できていないってところかな」


 私の答えに、イザベラが目を丸くする。

 でも結構わかりやすく答えたつもりだったんだけどなあ。


 首をひねって、それでも安易に質問をするのではなく自分でも考えようとするイザベラに私は言葉を続ける。


「イザベラもさ、あの国にいた頃と辺境に来て私と出会ってからとで『世界』の大きさについて考えることってなかった?」


「……せかいの、おおきさ」


「そう、大きさ。子供の頃、私の世界は孤児院とその周辺の町だった。冒険者になったら町の近隣とはいえ外に出るようになって、自分の足だったり馬車だったり……知識で知っているだけじゃない世界があるって感じなかった?」


「感じ、ました」


 生きる中で、それだけに精一杯で自分の周りしか見えないのは当たり前のことだと思う。

 そりゃ自分が生きているのに必要な範囲での生活だ、それが全てだって言ってもなんも不思議じゃないよね。

 だからこそ、旅行やちょっとした遠出の仕事なんかは新鮮に感じるのだ。


 でもそれは、小さな世界でしかないことを忘れちゃいけないと思う。


 世の中はもっと広くて、知らないことに満ちあふれていて、それがいつ自分にとって身近なものになるかは誰にもわからない。

 特に、私たちのような冒険者にとってはね。


 そういう意味であのボウヤたちはまさしく〝井の中の蛙〟なのだ。

 歩き慣れた地元で、味方してくれる古くからの地元の知り合いたちに囲まれて、そうしてようやっと一人前の冒険者でいられるということを〝自分の実力である〟と勘違いしているタイプ。

 別にそれが悪いってワケじゃない。

 実際、シルバーランクに上がるまでそれなりに危険を冒すこともあったろうし、そうしてここまで生き残っているのは彼らの実力だと思う。


(ただ、それはこの町だからでしかないってことを忘れているようじゃだめなんだよなあ)


 外の世界に出てプライドをへし折られて冒険者を辞めてしまう連中もそこそこいるのが現実だ。

 まあ別にそれで辞めるのも辞めないのも自由だ、だって冒険者だしね!


 ただ、偶然とはいえ旅をするくらい実力があると紹介された冒険者……つまり私を前にしても外の話を聞くでなく、いきなり女二人旅だからと侮ったところが彼らの浅さを露呈しているっていうかさ……。


「むしろ女二人で安穏と旅してるってだけで旅慣れているんだから自分らよりも世界を知っていると察するくらいじゃないと今後が心配されちゃうよねえ」


「姉様……」


「まあ、期待しているからこそ簡単に折れてくれるなってことで私にお守り(・・・)を依頼してきたんでしょ」

 

 期待しているのは地元の冒険者ギルドであってアンドラスたち商人じゃないだろうけど。

 とはいえ私を指定して調査とお守りをさせようってんだから、この新しいダンジョンってのが一筋縄じゃいかないんだろう。

 そう思うと正直ため息だって吐きたくなるのが人情ってもんでしょ?


「イザベラ、前に教えたように常時魔力を全身に巡らせておいてね。外に向かって漏れ出さないよう、静かに巡らせるイメージ」


「は、はい!」


 アレンたちが広くない、できたてのダンジョンだから魔物もいないと笑いながらそこらへんにある遺跡の彫刻をしげしげ眺めている姿を見つつ、どうしたもんかと考えを巡らせる。

 イザベラに告げたのは、慣れた冒険者ならダンジョンに入ってすぐ行うこと。


 常時魔法を展開し続けるのはとても疲れることだけれど、魔力を全身に巡らせておくと展開する際の速度が段違いなのだ。

 もし予想外に奇襲なんか受けた際も一瞬でも反応が早ければ、その分、生存確率が上がるからね。だからといって常時魔力を巡らせるのもそれなりに修練が必要だけど……。


 勿論私もこのダンジョンに足を踏み入れた瞬間からやっているし、なんだったら探索魔法だって展開中ですよ!


「イザベラ」


「はい!」


「最初は手を出さない。私が合図するまでは待機。いいね」


「え? は、はい!」


 ゲラゲラと相変わらず笑いあっている『砂漠の荒鷲』の三人組が見つけたらしい文化財を掲げて私に自慢げな表情を見せたかと思うと、何かに気がついてあちこちに視線を揺らした。

 

(あら、いい反応)


 これは鍛えたらそれなりに育つのかしら。

 そんなことを考えながら、私は揺れる地面に態勢を崩す三人に向かって駆け出すのだった。


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[一言] これを越えたら三人は一皮むけるかな
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