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察知されない最強職《ルール・ブレイカー》  作者: 三上康明
第3章 学術都市と日輪の魔導師

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クロード vs ルダンシャの教官

 まず攻撃を仕掛けたのはキルネンコだった。


「キィエエエェッ!」


 短槍による突き。さすがに教官をやるだけあってその一撃は鋭く、なかなかのスピードだ。

 片手剣と短槍の違いは、やはり長さ、それに「突き」か「斬り」かという「攻撃手法」だろう。

 短槍で突きを繰り出された場合は、片手剣を伸ばしても、先に短槍のほうが届く。

 だからリーチで有利な「突き」を繰り出すというのは理に適っている——はずだが。


「ふっ」


 ヒカルは思わず笑った。

 そんな当たり前なことを仕掛けてくるんじゃないよ——と。


「!?」


 キンッと音が響き、短槍の切っ先は跳ね上げられた。

 まるで短槍に自分の意志があるかのような跳ね方だ。

 驚愕したキルネンコ。

 その隙にクロードは距離を詰めて上段から斬り掛かる。


「くうううっ!」


 さすがにこの一撃くらいでやられてはくれない。

 キルネンコは思い切り横に跳んで攻撃をかわす。だが体勢が崩れて地面を転がった。


「……立ってください、教官。膝をついた者を斬る趣味はありません」

「!!!!」


 クロードの言葉に、顔を真っ赤にするキルネンコ。

 ヒカルの横でイヴァンが口笛を吹いた。


「たかだか一度のッ、まぐれでッ!」


 キルネンコは浅い踏み込みからの連撃を放つ。

 そのすべてを、片手剣の切っ先で触れる——いや、なでるようにして軌道を逸らしていくクロード。


「なんッ、なんでッ、当たらないッ!?」


 ますます顔を真っ赤にするがその攻撃はまったく当たる気配がなかった。


「いやー、アレやられっとマジでムカつくんだよなあ」


 イヴァンがぼやいた。


「っつーかヒカル。なんであんな簡単にクロードはかわせるんだ?」

「剣の扱いがうまくなったからだろ」

「そりゃあ俺にだってわかるけどよぉ、あんな軽〜く触っただけでかわせるっておかしくね?」

「ああ、そこか。キルネンコ教官の武器が長いからだな」

「??」

「長くなればなるほど、先端に力がこもらなくなる。最初の突きがいい例だよ。あんなに身体を伸ばして突きを撃たれても、そりゃ突破力はあるけど横からの力に弱い。だから片手剣でも簡単に跳ね上げることができる」

「ほお……」

「大剣の振り下ろしみたいに両手で力を込めて、なおかつ武器に重量があればかわすのも難しいはずだ」

「あー。だからか。俺と戦ったときは振り下ろしは身を引いて、突きや横薙ぎは剣で叩かれたりしてた」

「そういうこと。まあ、短槍は盾とセットで運用しなければ意味がないと思うけど……なんであの教官は盾を持ってないんだ?」

「なんでも『カッコ悪いから』らしいぜ」

「……は?」

「いやさ、クロードに聞いたんだけど『短槍はそれ1本で戦うことに意味がある』とかなんとか言って講義やってるらしくてよ。よくよく理由を聞いてみると、結局のところ『盾を持つと鈍重そうでイヤ』ってことらしいんだわ」

「…………」


 大丈夫か、ルダンシャ? そんなのを学院に送り出して。

 ヒカルは他人事ながら心配になる。


「くぅっ!」

「——もうこんなところでいいでしょう?」

「ま、まだまだ……」

「もう何度武器を拾えば気が済むんですか」


 クロードはキルネンコの武器を、都合3度、はたき落としたようだ。


「勝負あり、だな」

「くううっ……」


 ミハイルが言うと、キルネンコは荒く息を吐きながらうなだれ、大地に手をついた。


「……チッ、クロードのヤツ。武器落とすんじゃなくて一発ぐらい身体にたたき込めよ……」

「? ヒカル? 今なんか言ったか?」

「いや、なにも」

「なんだかどす黒い感情が見えたような気がしたんだが……」

「なにも言ってない」


 クロードがヒカルたちへ向いて、親指を立てて見せる。


「油断するなよ! クロード!」


 ヒカルの忠告のおかげか、クロードは自分に飛来する矢に気がついた。

 弓を持った教官が撃ち込んできたのだ。それも顔を狙って。

 だがクロードは剣を振り抜き、弾き飛ばした。


「——今のはなんだ!?」


 ミハイルが怒鳴りつけると、矢を撃った教官は、


「これは3本勝負だ。なにを驚くことがある? 私が2番手だからな」

「始めの合図をしていないだろう!」

「模擬戦だぞ、これは。腑抜けたかミハイル教官。戦いに油断は禁物だ」


 矢も、模擬戦用の矢ではある。先端はゴムのような(やじり)になっている。

 それでも顔に——目に当たったりしたら潰れることだってあるだろう。

 それを躊躇なく撃ってきたのだから、ミハイルが怒るのも当然だった。


「模擬戦と、私闘をはき違えるな!」

「そちらこそ、模擬戦をお遊びのように考えているのではないか? これは生意気な学生を指導する——」

「そのとおりですね」


 そうこう言っている間に、クロードは一気に弓の教官との距離を詰めていた。


「あ、えっ!?」

「油断は禁物ですね、教官」

「バカな、まだ始まって——」


 クロードは、今度は容赦なく剣を振り下ろした。

 右肩に叩き込まれた剣が、おそらく鎖骨をへし折った鈍い音が響く。


「ぐげああっ!?」

「おかげで吹っ切れました。手加減も躊躇もする必要がないって。次は——あなたですね」

「くっ」


 長槍を取り出した最後の教官は、クロードの首を狙って突きを繰り出した。

 さすがに長槍の突きは「重い」。片手剣1本で逸らすことはできない。

 クロードは半身を開いてこれをかわす。

 いや、かわしただけではない。

 槍を左手でつかんだ。


「ハッ、手でつかんでどうにかなるようなものでは——」


 力比べか、とばかりに引いた教官。

 すぐにパッと手を離すクロード。


「ぬっ」


 背後に身体がのけぞった教官だったが、踏ん張って耐える。

 そこへ詰め寄るクロードが剣を振りかぶる。

 振り下ろしを予測して槍の手元で受けようとする教官は、


「ふぬっ!?」


 股間に叩き込まれた蹴りに、目を見開いた。

 槍を手放してその場に転げる。


「うごおおおおおお!?」


 見ていたヒカル、イヴァン、ミハイルの3人がサッと顔を青ざめさせるほどに容赦ない蹴りだった。


「これ以上はやる必要ないですよね、ミハイル教官?」

「う、うむ……見事であった。勝者、クロード=ザハード=キリハル!」


 その声に、ふぅ……と息を吐くクロード。

 呆然としているキルネンコ、骨を折られて苦悶の表情を浮かべる弓の教官、そして悶絶している長槍の教官。

 なんとも、勝敗がはっきりとわかる光景だった。


「これくらいのフェイント、ヒカルの指導を受けてればイヤでも身につくんだけどな」


 ちょっと待て、ほとんどイヴァンに教わったことだろ——とヒカルは言いたかったが、


「そうそう。ヒカルの底意地の悪い攻撃はマジで勉強になるぜ」


 とイヴァンがトドメを刺してきた。


学院最強の教官ミハイルが大剣3で、キルネンコが短槍2。

クロードはこれで剣3なので技量的にもキルネンコを超えている感じです。

3で道場の師範代とか上位の騎士レベルですね。

2で一般騎士やその道の上級者という感じ。学生に教えるには十分すぎるレベルではあります。


次回は祝勝会の流れです。

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