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察知されない最強職《ルール・ブレイカー》  作者: 三上康明
第3章 学術都市と日輪の魔導師

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クロード vs ミハイル教官(?)

 翌日、訓練場で顔を合わせたミハイルとクロード。

 ヒカルにイヴァン、それにリュカも立ち会いのためにやってきているが、ここにいるのは5人だけだった。


「うーん……ザハード家はキリハルの名門ではあるんだが、剣の使い手として有名なわけではないよなあ」


 ぽりぽりと首筋をかいているミハイル。クロードを前にしても、なかなかこの青年が「強い」とは思えないのだろう。


「……確かに、教官の言うとおりだ。でも俺は強くなった。ヒカルの指導で」

「ほお〜?」


 クロードが余計なことを言うので、ミハイルが興味津々という視線をヒカルに向けてくる。


「前置きは要らないだろ。さっさと始めよう。ルールは特に設定しないから好きに立ち回ればいい。命に関わりそうなことがあれば僕やイヴァンが介入するかもしれないけど」

「おお。イヴァンがねえ? イヴァンよ、とっさのタイミングで俺を止めるんならお前も命懸けてやれよ?」

「は、はいっ」


 ミハイルには頭が上がらないのか、イヴァンが直立不動で答える。今に敬礼までしそうだ。


(ま、ミハイル教官の言うとおりではあるんだけどな。生半可な力じゃ戦いを止められない。僕にはこれがあるけど)


 ヒカルは手で小石をもてあそぶ。

 なにかあれば投げつける。武器さえ取り落とさせられれば最悪の危険は回避できる。


(にしてもいちいち危険なんだよなあ……もうちょっと安全な模擬戦はないのかね)


 そんなことをヒカルが考えていると、ミハイルとクロードが10メートルほどの距離を取って向かい合う。

 ミハイルは大剣、クロードは片手剣だ。もちろん両方とも訓練用の模擬剣ではある。


「ふうーむ……片手剣ねえ?」

「よろしくお願いします」


 いまいち信用していない感じのミハイルだったが、クロードは礼儀正しく礼を取ると剣を構えた。

 ヒカルの横でリュカがぎゅうと自分の手を握りしめている。


「両者用意。では、始め——」

「おおっと? これはこれはミハイル教官。こんなところでなにをしておられるのかな?」


 始まる直前、こちらにやってくる人物があった。

 短槍教官、キルネンコ=ルダンシャ。

 その後ろに2人の教官が付き従っている。


「なにって……見りゃあわかるだろ? 模擬戦だよ」


 戦闘直前で水を差されたことに苛立っているのか、腹立たしそうにミハイルが答える。


「そうですか、模擬戦ね? ですがそれは認められませんな。今すぐ取りやめてください」

「……はあ? お前さんなに言ってる? 学生と教官が模擬戦をやるのは自由だろうに」

「ですがクロード=ザハード=キリハルは私の講義を受講している学生です」

「ぬっ……そうなのか?」


 神妙な顔でクロードがうなずく。


「最近講義に顔を出さないからなにをしているのかと思えば、片手剣か。そんな役に立たない武器は止めて短槍講義にまた出るように」

「いえ、教官。私はもう短槍講義を——」

「止めると言いたいのかね?」


 キルネンコの瞳がスッと細められた。


「バカにするのもいい加減にしろッ!!」

「!?」


 頭ごなしに怒鳴りつけられ、クロードがびくりとした。


「お前のような薄汚いキリハルの人間を、寛大にも受け入れてやった私の恩を忘れたのかね? 事のついでのように『講義を止める』などと……通るはずもない!」

「……それは、またいずれ正式に辞退の届け出を出すつもりでした」

「では今すぐ学院を退学なさい」

「は……?」

「このまますぐに出て行くというなら、これ以上はなにも言わない。だがね、私の短槍講義を止めてなお学院に留まると言うのなら——」


 キルネンコの左右に教官が並ぶ。

 長槍と弓の教官らしい。キルネンコと同じルダンシャの出身なのだろう。


「私の顔に泥を塗ってただで済むとは思っていないだろうね?」

「——くっ」


 クロードが歯噛みする。

 それをハラハラと見ていたリュカへとキルネンコが視線を投げる。


「リュカ王女」

「は……はい」

「どうぞこちらへいらしてください。キリハルやジャラザックの人間のそばにいると、王女に悪いウワサが立ちます」

「わ、私は——」


 突然現れたキルネンコに、どうしていいかわからないでいるクロード、それにリュカ。


「……くっくくく」


 しかしヒカルは、笑った。


「あはははは! 愉快な人だな、アンタ」

「——お前は、ヒカルとかいう学生か」

「昨日、僕がミハイル教官と話をしていたのを聞いてたろ? それでどんな出方をするのかと思っていたんだけど——なにこれ。難癖付けに来ただけ? 笑っちゃうでしょ。ぷっ」

「お前のその態度はなんだ! お前の腐った性根を、まず真っ先に直さなければならんようだな!」

「ああ、それ、いいかもしれないな」


 ふー、と笑い終わったヒカルは、ミハイルに向き直る。


「ミハイル教官。学生と教官が模擬戦をするのに特別な許可は要らないんだよな?」

「ああ……それはそうだが、担当教官が禁止したらダメだ」

「じゃあこうしよう。僕とクロード、イヴァンの3人がこちらのルダンシャの教官3人とそれぞれ戦う。勝ち抜き方式で、僕らが勝てば今日の予定どおりミハイル教官にクロードが習う。ルダンシャの教官が勝てば、僕ら3人は退学しよう」

「なっ!?」

「おいおいヒカル。俺まで勝手に混ぜんなよ」


 驚いたクロードとは裏腹に、イヴァンは文句を言いつつも口元がにやけている。


「学生風情が……舐めた口を利いて」


 ぴきぴきとキルネンコの額に青筋が立つ。


「その条件で構わん! 学院の害虫をたたき出してやる!!」


 こうして、ミハイルとクロードの模擬戦が一転して、ルダンシャの教官たちとの模擬戦になったのだった。




「で、とーぜん勝算はあるんだろうな、ヒカル?」


 模擬戦開始の前に、イヴァンが聞いてくる。


「そうだぞ、ヒカル! なにを勝手に話を進めてしまったんだ!?」


 荒れるクロードを両手でヒカルがなだめる。


「まあ、焦るなよクロード。ミハイル教官にだってそもそも勝つつもりだったんだ。ミハイル教官より弱いキルネンコに負けてどうするんだ」

「し、しかし、勝負に絶対はない……」

「あーそういうことか」


 イヴァンがうんうんとうなずいた。

 ヒカルはイヴァンと付き合うようになってから気がついたが、イヴァンもただの戦闘バカではない。なかなか鋭いところがある。


「な、なにがわかったというんだ、イヴァン! ヒカルがむちゃくちゃやったってだけだろ」

「違う。あのなあ、クロード。お前がうちのボスに戦いを挑むときだって一発勝負なんだ。そこで負けたら、終わりなんだよ」

「っ!? それは……」

「ヒカルはその崖っぷちを経験させようとしてんだよ。なっ、ヒカル。俺の言ってることアタリだろ?」

「まあね。もちろんそれだけじゃなく、大剣以外との戦闘も経験したほうがためになるということもあるけど」

「…………」


 クロードがイヴァンを見て、それからヒカルを見る。


「……すべては、俺のためか」

「ちげーよ。バカ。だからそんなふうに抱え込むんじゃねーっての。学生連合なんだ。『連合』なんだよ。俺たちゃ互いに助け合っていいんだ」

「ありがとう、イヴァン」


 イヴァンが拳を差し出し、そこにクロードが拳をぶつけている。

 なんだかいい話になってきている。


(僕のいちばんの目的は、合法的にあのキルネンコをたたき伏せられるってことなんだけど……これは言わないほうがよさそうだな)


 勝ち抜き戦の順番は、クロードがトップバッターで、次にイヴァン、最後にヒカルという形になった。


「ほう? お前が最初の犠牲者か。仲間を使ってこちらを疲労させ、最後に出てくるのかと思っていたがね」

「…………」


 向こうの一番手はキルネンコだった。

 いきなりこの対戦カードか、とヒカルは思うものの、


(落ち着いてるな、クロード)


 挑発されても冷静だ。いい傾向だ。

 むしろ、審判を務めるミハイルの隣にいるリュカのほうが挙動不審になっている。


「キルネンコ教官。今までありがとうございました」

「もう勝った気でいるとは……とことん不愉快な男だな君は」


 視線が火花を散らす。


「よし、双方向き合え。準備はいいな? では——」


 始め、というミハイルの声が響き渡った。


ミハイル「……俺も戦いてぇなぁ」


——


「異世界釣り暮らし」のほうが日間9位まで上がっていました。

「察知〜」を読んでくださってる方も見に行っていただけたのでしょうか。ありがとうございます。並行して進めていきたいなぁと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] そっかキルネンコかーそっちだったかー分からんかったわー(棒)
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