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察知されない最強職《ルール・ブレイカー》  作者: 三上康明
第3章 学術都市と日輪の魔導師

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学生連合会議・集合前

「しかしなんでまた会合の開催場所はここなんだろうな……」


 リーグの招集した7カ国の学生による初めての会合。

 その開催場所に指定されたのは「酒万歳」だった。

 今日は本来「酒万歳」も休日となっていたが、ダメ元でヒカルが聞いてみるとマスターが店の鍵を貸してくれた。「なんなら営業しててくれていいぞ」とまで言った。


「——それはもちろん、酒場はもともと人が集まる場所であり、また学生がこのような店にいるとは誰も思わないだろうことから、最も適切な場所だと考えたのですよ」


 ヒカルのぼやきに答えたのは、店の前ですでに待っていたリーグだった。


「ヒカルさんがなかなか来ないのでハラハラしましたよ。あまり人気のない場所ではありますが万が一誰かに会うということもありますし」


 周囲を見ると、他には人気はない。「魔力探知」にも街路に人はいないのがわかる。

 ひとりで来るように——というのはリーグが言い出したことだった。

 無用な警戒心をお互いかきたてないようにという配慮だ。


「僕だって店を開けるために早めに来たのに、それより早いっていうのはずいぶんまた張り切っているな」

「私は今日という日に賭けているんですよ」


 大げさだな、と思ったが、リーグは真剣そのものだった。いや、そもそもふざけたことをあまり言う男ではなかったけれども。


 店に入るとヒカルは冷蔵庫をチェックし、湯を沸かし始めた。

 ラヴィアはお茶を淹れる手伝いをし、リーグはカウンターに座る。


「……ヒカルさん、ほんとうにありがとうございました」

「どうした、急に」

「いえ、ここまで早く、すべての国の学生と接点を持てるとは思っていませんでしたから」

「みんなそれなりにクセがあると言ったはずだぞ。楽観視できない」


 すでにリーグにはヒカルが声をかけた人間については話してある。


「それでもです。ありがとうございます」

「そういうフラグを立てるのは止めてくれ」

「フラグ……?」

「ああ、フラグっていうのは——」


 言いかけたところで、店のドアが開いた。


「おお! この店でいいようだな。リーグ殿、このたびはお声がけいただき感謝申し上げる。それに——ヒカル、久しぶりだなあ!」


 入ってきたのはシルベスターだった。

 相変わらず明朗とした男だ。こういう男がツブラの次期王というのなら期待できそうな気もする。

 常に表情を崩さないリーグとは対照的だった。


「シルベスター様……いえ、シルベスターさん、ここでは敬称は止めましょう」

「ああ、そうであったな」


 リーグの横にどっかと腰を下ろすシルベスター。

 彼にはリーグから連絡を取っていた。学院長を通じて、である。

 思いのほか前向きにシルベスターはこの会合に参加すると言ったらしい。


「ヒカル、お前のような者がほんとうに学院生だったとはな……」

「それってどういう意味? 僕は十分若いだろ」

「レッサーワイバーンを単独で仕留められるほどに腕が立つではないか。そうか、魔法の修練か?」

「ちょっと待ってください。ヒカルがレッサーワイバーンを単独で仕留めたと?」


 横から口を挟んだのはリーグだ。


「その話はしただろ?」

「聞いていませんよ……何人かでパーティーを組んだのだと思っていました」

「ふたりで行ったよ。ラヴィアと」


 こくん、とラヴィアはうなずくと、シルベスターがようやく気がついたように、


「そちらの美しい女性は?」

「ああ……まあ、あの場にいたんだ。レッサーワイバーンを倒した場所に」

「そうか。聖魔法で支援をしたということか」


 信仰を深めると得られる「聖魔法」には「回復魔法」の他に「支援魔法」というものがある。


「まあ、そんなところ——」

「いえ。ヒカルはわたしを下がらせてひとりで倒しに行きました」

「……ラヴィア」

「事実は事実よ?」


 涼しい顔でラヴィアは茶葉をポットに入れる。


「ヒカルさん、どういうことですか」

「どうもこうもないし、特に話も広がらないよ。それにもうおしゃべりは終わりだ——次のお客さんだ」


 店の扉が開かれる——入ってきたのは、クロードだった。

 がらんとし、薄暗い店内に驚いた顔をしながらも、カウンターの向こうにヒカルを見つけてホッとしたようだ。


「クロード=ザハード=キリハルです。その……ヒカルに呼ばれて来ました」

「リーグ=緑鬼=ルマニアです。私がヒカルにお願いしたのです。今日はお越しくださってありがとうございます」

「シルベスター=ギィ=ツブラだ。一度社交パーティーで挨拶しているよね? ここでは堅苦しい挨拶は不要だよ」


 気安い口調でシルベスターが言ったが、シルベスターがツブラの次期王だということは知っているのだろう、緊張していいのかフランクに振る舞っていいのかわからないようで、カウンターまでやってきたが座らずにまごついている。


「クロードさん、冷たいお茶でもどうですか」

「あ、ああ……ありがとうヒカル」

「どうぞおかけください」


 ヒカルに勧められてスツールに腰を下ろす。そして出された茶を一気に飲み干すと、ほぅ、とクロードは息を吐いた。


「……リーグ、ヒカルが敬語を使っているぞ」

「……ええ、貴重な光景ですね」

「聞こえてるからな」


 リーグとシルベスターがひそひそやり出したところへ釘を刺す。


「おかしいではないか。クロードと我らは連合国内ではほぼ同じ立場だが、クロードには敬語、我らには雑」

「ええ。奇妙ではあります」

「リーグ……お前まで乗っかるなよ。大体な、僕はお前に頼まれたんだぞ。成功率を上げるためには丁寧な態度くらい心がける。あとリーグ、シルベスター、最初に会ったときのことを覚えているか?」


 リーグは、ローイエが冒険者ギルドで絡んできたときに同行していた。

 シルベスターは、レッサーワイバーンとの戦闘中だ。


「まともな出会いじゃなかった。それに僕は、ふたりと何度も会うことになるだなんて思っていなかったんだ」

「それが今や最大の協力者ですから、わからないものですね」

「まったくだな。ヒカルを得たのは大きい」

「だから! 得てないし! 今日までだっての、手伝いは!」


 ヒカルが言い返していると、きょとんとした顔でクロードが言う。


「その……ヒカルはポーンソニアの人間なんだろう? それなのにだいぶ……ふたりと打ち解けているんだな」

「いやこれは打ち解けているというより——」

「俺にもそういうふうに接してくれないか? もっと乱暴な言葉でいい」


 ヒカルは半歩退いた。


「え? クロードさんって、乱暴な言葉を使われて興奮する性質が……?」

「ち、違う! なにをバカなことを!」

「シルベスターさん。これはキリハルの人選を間違えましたかね」

「うむ。由々しきことだ」

「違うから! ほんとうに!」


 あわてて否定するクロードのタンブラーにラヴィアがお代わりの冷茶を注ぐ。


「クロードさんの緊張もほぐれたようでなによりですね」


 あ……と口を開けて、腰を浮かせていたクロードは座り直した。


「そういうことだったか……ありがとう。確かに、緊張していたみたいだ。喉だってカラカラだよ」


 冷茶をクロードが飲んだところで、ヒカルは複数の人間が近づいているのを「魔力探知」で確認した。


「さて……残りのお客さんもお見えのようだ。テーブルに席を移そうか」


 次に到着したのはリュカだった。

 時間を置かずしてジャラザックの大剣講義に出席していた学生、イヴァンがやってくる。

 その次は、ラヴィアが声をかけていたというユーラバの女子学生がやってきた。名前をエカテリーナと言い、青みがかった黒髪を三つ編みにして左右にたらしている。紫色の目は大人しい、というより、どこか陰がある。肌はユーラバの特徴で青が差したような肌色だった。


「これで6人ですか。後は……」


 リーグがこちらを向いてきたのでヒカルは答える。


「コトビだな。魔導具講義のケイティ先生に紹介してもらった。ケイティ先生の妹って話だよ」

「……そのことで、ヒカルさん。ちょっと調べたのですがケイティ先生には妹はおられないということです」

「え?」

「場所の連絡などはどうしていましたか?」

「ケイティ先生に直接話したよ。——こう言うのも変だけど、ケイティ先生は僕にウソはつかないと思う」

「そうですか?」


 という話をしていたときだった。


「——道に迷ってしまった。ちょっと遅れたようで、申し訳ない」


 店に現れた——女性。

 炎の入れ墨が顔に入っている、冷たい感じの美人。


「……ケイティ先生ですよね?」


 ヒカルが聞くと、


「ケイティの妹、ケイティーナだ」

「いや、ケイティ先生ですよね?」

「ケイティーナだ」


 ソウルボードを確認する。ケイティである。


「……先生、そういうおふざけをするとこちらにも考えがありますよ」


 服をまくってリヴォルヴァーをちらつかせる。


「ちょ、ちょっと待ってくれ、ヒカル!」


 さささと近寄ってきてケイティがヒカルの肩に腕を回す。


(なんだか面白そうな話だから私が参加したいんだよ!)

(用があるのは「学生」だと、僕は言いましたよね?)

(いいじゃないか。意見交換だろう? 講師の意見だってあっていい。きっと役に立つ。立ってみせるよ)

(……まさかとは思いますが、僕が人を集めているから「聖魔」がらみだと考えて参加希望しているんじゃないでしょうね?)

(そそそんなことあるわけないじゃないか! ないよ、ないない!)


「ヒカルさん」


 見かねたリーグが言葉を発する。


「この際、ケイティ先生でもいいと思います。学生でない方の意見が入るのもまた、有意義だと思いますから」

「ほら!」


 勝ち誇ったようにケイティがリーグを指差した。「残念美人」というワードがちらりとヒカルの脳裏をかすめた。


「……はあ、仕方ないですね」


 ヒカルはため息をつく。

 こうして6人の学生+1人の講師という構成で会合は始まった。



【参加者】(国力順)

 リーグ=緑鬼=ルマニア……ルマニア筆頭氏族の嫡男。

 クロード=ザハード=キリハル……女王マルケドのいるミラルカ家と対立するザハード家の男子

 リュカ=ロードグラード=ルダンシャ……ルダンシャ第三王女

 イヴァン=ジャラザック……武を誇るジャラザックでもトップクラスの剣士の息子

 エカテリーナ=ユーラバ……連合政府に多くの官僚を送り込んでいる一族の娘

 ケイティ=コトビ……コトビでも有数の鉱山を押さえている一家のひとりにして学院講師

 シルベスター=ギィ=ツブラ……ツブラ王太子

 ※ヒカル……オブザーバー

 ※ラヴィア……給仕担当


私もラヴィアにお茶を淹れてもらいたいです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ? 酒万歳は76話ではこうある それから、ヒカルは「止めておいたほうが」と言ったもののラヴィアが「どうしても」と言うので「酒万歳」(年中無休)でランチとなった。 76話の年中無…
[良い点] クロードの緊張をほぐす絡み。 ケイティ先生…。
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