「天」の意味するもの
まずは「魂の位階」についてだ。あの巨人も「倒した」扱いになっており、ヒカルの魂の位階は上がっている。ラヴィアも上がったようだが、数値を見る限り、ヒカルのほうに偏っているように感じられた。
【ソウルボード】ヒカル
年齢15 位階41
【ソウルボード】ラヴィア
年齢14 位階29
位階は40を超えていた。ラヴィアのほうが位階が低かったので上がりやすかったはずだが、差が詰まっていないのでやはりヒカルのほうに多くの「経験値」的なものが入ったのだろう。
それに、王を含めデッドノーブルたちを大量に倒したぶんも含まれている。
「とりあえず……新しく出てきたスキルだよな」
【ソウルボード】ヒカル
年齢15 位階41
9
【生命力】
【魔力】
【筋力】
【筋力量】1
【武装習熟】
【投擲】10(MAX)
【天射】0
【敏捷性】
【瞬発力】2
【隠密】
【生命遮断】4
【魔力遮断】4
【知覚遮断】5(MAX)
【暗殺】3(MAX)
【狙撃】0
【集団遮断】4
【直感】
【直感】1
【探知】
【生命探知】1
【魔力探知】3
【探知拡張】1
新しく派生した「0」のスキルも載せると、ヒカルのソウルボードはこのようになっている。
気になるのはやはり「天射」だ。
【天射】……摂理を管理する神の領域に至る技術。ヒトをヒトたらしめる一部を失う。最大で5。
「…………読み返してもよくわからん」
まず他のスキルと比べて。なんだか不穏な内容だ。「神の領域」とか「失う」なんていう言葉が入っている。
「いきなり出てきたよな、『神』とか。まあギルドカードとソウルボードは関係がありそうなシステムなのに今まで『神』がなかったほうがおかしいのかもしれないな。……で、これを『5』にしたらどうなるんだ?」
これまでに「天」のつくスキルを持っていたのは騎士団長ローレンスだけだ。考えてみると、あの剣技は確かに神の領域に片足を突っ込んでいるような気もする。
「ローレンスはなにかを『失って』いたのか……?」
直接ローレンスに聞いてみたい気もする。
「わからないのは気持ち悪いし……気にくわないな」
「天射」の「射」も気になる。「弓」をMAXにしたらどうなるのか?「天弓」なのか?
ローレンスは「大剣」6で「天剣」1だった。「剣」は3だったので「天剣」の派生条件は「大剣」で満たしたのだろう。
となれば「剣」も「大剣」も「小剣」も、同じ「天剣」になるのではないかと考えられる。
すると、「短槍」「長槍」で「天槍」だろうか?
「投擲」「弓」で「天射」。
「盾」「鎧」は「天守」とか?
「ポイントはあと9あるから、確認しようと思えば1つはできるけど……あまり気は進まないな。字義の通りだとすると僕はヒトでなくなるようだし」
とりあえず「天」のスキルは封印しよう、と思った。
「あとは『投擲』関係」
ちなみにMAXまで上げた「投擲」はこんな内容だ。
【投擲】……肉体より放たれし物体の命中精度を向上させる。最大で10。
そのまんまである。
ただ他の「武装習熟」とはちょっと違う内容ではある。
【剣】……剣の扱いに補正が加わる。最大で10。
他のものは「扱い」に関するもので、「投擲」は「命中精度」だ。
結果的には同じようなものかもしれないが。
その他の派生項目でまだ上げていない「狙撃」は、
【狙撃】……相手に気づかれず飛来物によって攻撃を行った場合、攻撃が致死性を持つよう補正が加わる。最大で3。
「暗殺」と同じく「相手に気づかれず」という内容が入る。「暗殺」を上げて「投擲」した場合「致死性」は入らないのか? とか気になる点はある。
ヒカルとしては、「筋力量」を上げまくって「投擲」していく「レベルを上げて物理で殴る」作戦と、「狙撃」や「直感」を上げて「テクニカルに倒す」作戦と、どちらがいいのかが悩みどころだ。
前者のいい点は「筋力量」が上がれば荷物を持ったりするのも楽になるというメリットがある。
後者は……スマートであるところがメリットか。
おそらく「筋力量」を上げれば身体はムキムキになるだろう。「筋力量」16のローレンスが信じられないくらいムキムキだったし。
「見た目がどうのとか言ってられない事態になれば話は別だけどね」
今あるポイント9の使い道としてはいくつか考えられる。
1つ目は、残りの「隠密」系スキルを全部取ること。
「生命遮断」「魔力遮断」「集団遮断」で合計3。
「狙撃」も入れると合計6ポイントが必要になる。
「『隠密』限界値でなにか『職業』が出るかも……っていう発想だよな。でもこれってあまりにゲーム的だよな」
「天射」のように、なにかを「失う」ようなリスクがひょっとしたらあったりして?
いや、そもそも「天剣」に「失う」という記述があるとは限らないのだが。
2つ目は、「筋力量」や「スタミナ」といった項目に振る方法だ。物理系に強くなることで戦力底上げになる。
3つ目は、「魔法」だ。9ポイントもあれば相当な魔法を習得できる。
4つ目は、もっと全然違う「生産」「芸術」系のスキル獲得だ。だけれど、ここにきてそれもなぁ……という気持ちがある。
5つ目は、「直感」全振りだ。「直感」の有用性はヒカルも気づいている。「探知拡張」もMAXにすればあらゆる危機回避に効力を発揮してくれることだろう。
「うううううううんんんんんんん…………」
悩ましい。
巨人に襲われたときはなんの躊躇もなく「投擲」にぶっ込んだのに。
「人間、切羽詰まらないとなかなか決断できないってことか……。なまじポイントが見えてるだけに迷う」
ヒカルはソウルボードを消した。
「で、もう1つ問題があるとすればこいつだ」
ギルドカードである。
「古代神民の地下街」を踏破してから、ヒカルの「職業」項目にはいくつか追加されていた。
【暗殺神:ナイトストーカー】
【隠密神:闇を纏う者】
【投擲神:デッドショット】
【凡混沌神:台風の目】
【森林散歩神:フォレストウォーカー】
【迷宮探査神:ダンジョンウォーカー】
【天道探求神:罪深き者】
【凡市街地夜盗神:タウンシーフ】
【広域市民町民村民救済神:シビリアン】
「…………」
大きなツッコミどころが1つある。
「なんだよ……『罪深き者』って……」
「デッドショット」はわかる。「百発百中」とかそういう感じだ。「ダンジョンウォーカー」も特に不思議はない。どんな恩恵があるのかはサッパリだが。
しかし「罪深き者」ときたものだ。
「『天道探究』……『天』が入っているってことはやっぱり『天射』関係か?」
「天射」のスキル説明を見てしまった以上、「天道探究神」にしようとはさすがに思わない。
そう言えば「台風の目」も設定したことはないが、どことなくハプニングを呼び込みそうな気がするので未設定のままだ。いつか実験してみよう。
「神……か。『神の遣わす』という『巨人』……『聖魔』という謎のエネルギー……それにあの『龍』……。僕に言葉を発した。なんなんだ、アレは? わからないことが一気に増えた」
謎の解ける日が来るかはわからない。
それでも学術都市であるスカラーザードに行けばなんらかの情報が手に入るかもしれない。
謎を解かなければいけない理由はない。
しかし、
「知識欲がうずくんだよな」
なかなか刺激的な世界だよな、とつぶやいて、ヒカルはベッドに戻った。





