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地上に眠る蒼穹~Celeste blue~  作者: ZAKI
第1部 スラム編
92/202

第20章 戦闘開始(2)

 スラム勢と公安特殊部隊との戦闘は、日々苛烈さを増し、スラム側に深刻な打撃を与えつつあった。


「スキャット、敵の位置は?」

「手筈どおり、リッキーたちの誘導にのせられて、第7ストリートをホテル街に向けて北上してる」

「よし、うまくいったな。先回りして、裏路地に追いこんだところで挟み撃ちにするぞ」

「シェン、目印ホテルは『スター・ダスト』でよかったな?」

「そーゆうこと」

「墓場に相応しいネーミングだぜ。敵さんにも、せめて最後くらいは美しい星くずになって、さっさと消えてもらいましょ」

「油断すんなよ、決着がつくまで勝負は水モンだかんな」

「勝利の女神様は、むさ苦しい中年オヤジより美少年のが好きだとよ」

「おいおい、だれのことだよ、そりゃ」


 挟撃ポイント付近に到着した改造車とバイクの集団は、仲間内でのヘッドホン越しの通話を切ると、それぞれの愛車を乗り捨てて、すぐわきの建物内へ移動した。



没法子メイファーズ》配下、《玄武》――総勢19名。


 廃屋ビルの地下まで降りた彼らは、オートロックのかかっている扉を認証キーで解除すると、200メートル先の目的地に直通する抜け道へと足を踏み入れた。このまま通路を抜けて地上へ上がり、戦闘配置につく手筈となっていた。敵が、別働グループによって狭い裏路地に追いこまれてきたところを待ちかまえ、逃げ道を塞いで前後及び建物の上から攻撃し、一網打尽にする作戦だった。


 スラムには、上位階層の有力グループを中心とするセクトが縄張りとする一帯に、通常、このような専用の抜け道がいくつも造られている。それゆえ、自分たちが庭とする場での戦闘は、最大限に地の利を活かすことができた。



 通路を走り抜けながら、リーダー格の少年が手もとの通信機に目を落とす。そして、途端にその速度をゆるめた。


「どうした、シェン?」


 不審に思った仲間の少年が、声をかけた。シェンは、ついに足を止めて仲間たちを顧みた。


「通信が、切れてる」


 少年たちは不安げにざわめいた。


「電波妨害か?」

 シェンの親友であり、《玄武》の副将を務めるスキャットが尋ねると、シェンは難しい顔でおそらくは、と頷いた。


「どうする、いったん引き返すか?」

「だが、リッキーたちの状況が掴めない」

「だからこそ、妨害波の外に出たほうがよくないか? とりあえず、あしは確保しておいたほうがいい。そのうえでロンに――」

 その言葉が終わらぬうちに、前方でけたたましい喚声と銃声音が炸裂し、通路内にこだました。


「なん……」

「シェンッ、逃げろ!! 敵が――」


 目を凝らした先に、軍を追いこむ役目を果たしていたはずの味方が形相を変え、転げるように走ってくる姿が見えた。後方から押し寄せる、目に見えない恐怖が、彼らを瞬く間にパニックへと突き落とした。


 危険をさとった少年たちは、ただちに方向転換し、出口を目指した。その背後で、目映い閃光が走った。

 凄まじい爆音と烈風が、彼らを吹き飛ばした。

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