97.ピザを作ろう
「では、さっそくピザを作ってみましょ」
私は調理台の上に並べられた、ミーナとアンナが用意してくた材料を確認する。
「ドライイーストはやっぱりないか」
「申し訳ございません。色々探したのですが······、ドライイーストというものがどういった物かも分からなくて」
「大丈夫よ。ドライイーストは無くてもベーキングパウダーで代用出来ると思うから」
私はマジック鞄から、ナポルケーキの時につくったベーキングパウダーを取り出した。
よし。これで材料はOK。
「ティアナ様は、ドラーイストを知ってるのかい? そのベークンパウンダてのは何なんだい!?」
「······お母さん、ドライイーストとベーキングパウダーよ」
間違いまくってるミーナに、アンナが冷静にツッコム。やはり、ドライイーストやベーキングパウダーはこの世界には存在してないっぽい。
そう思う1番の理由は、言葉だ。
翻訳のスキルのおかげで、普段何も問題なくこの世界の言語を理解し話しているが、普段はこの国の言語、フォレス語を話している。
でも、ドライイーストとベーキングパウダーは日本語だ。
······いや、正確には英語なんだけど。
日本語では、ドライイーストは乾燥酵母。ベーキングパウダーは膨らまし粉。······みたいだ。
翻訳のスキルの効果で、日本語を話そう。と意識しなければ、私が自然に話して出てくる言葉はこの国の言語、フォレス語だ。
今まで私は、ドライイーストが日本語か英語かなんて気にした事もなく、あまり考えず普通にドライイーストと言っていた。
今になって、ドライイーストもベーキングパウダーも日本語なのか?と考えたら、翻訳のスキルの効果なんだろう。ドライイースト=乾燥酵母。ベーキングパウダー=膨らまし粉。と、自然に頭の中に思い浮かんだ。
だから、気付いた。
以前分かったこと······野菜は見た目や味の特徴も日本の野菜とほぼ一緒の為、翻訳されて野菜の名前はは思ったまま言うと通じた。
だけど果物は、梨の形をしてるけどリンゴのような味の赤い果物が、ナポル。みたいに、日本の果物と違う特徴がある物は別の名前で呼ばれてる。
ベーキングパウダーの事は、オリバーさんに聞いても「知らない」と言ってたし、今回ミーナとアンナも「聞いたことも無い」という。
恐らくこの世界には存在してない。もしくは認識されてないんだろう。
だからミーナも発音し難くて言い間違えたのだろうと推測できた。
「ドライイーストもベーキングパウダーも、パンやお菓子を膨らませるものなの。
出来ればベーキングパウダーよりドライイーストの方が弾力が出るから、ピザには本当はドライイーストのがいいんだけどね。
ドライイーストは作るのに時間がかかりそうだから今回はベーキングパウダーで代用します」
大きめのボウル強力粉と薄力粉、砂糖、ベーキングパウダーを入れてよく混ぜる。塩、ぬるま湯、オリーブオイルを入れて粉気がなくなるまでさらに混ぜる。
まとまった生地を表面がなめらかになるまで、調理台に打ち付けこねた。
うん。やっぱりパンとか捏ねるのって腕が疲れるけど、スキルのおかげで楽にこねる事が出来るね。
いい感じにこねられた生地を表面が張るように丸め、ボウルに戻し入れる。それに蓋をした。
「今回はドライイーストじゃなくて、ベーキングパウダーだから30分くらい寝かせればいいかな」
「本来はもっと長く寝かせるんですよね?」
アンナが、レシピノートを掲げて聞いてきた。
「ええ。普通なら2時間くらいは置いて発酵させるんだけどね」
そう言ってボウルを端によせ、他の料理の準備に取りかかろうと玉ねぎを手に取ったところで「お手伝い致します」と、アンナとミーナが材料を受け取り、レシピ通り下ごしらえをしてくれた。
流石は料理人たち。私を含め3人で作業したおかげで、あっという間に一通りの作業が完成した。
「じゃ、ピザ生地を伸ばしてみましょう!」
調理台に打ち粉をした後に生地を置き、手で伸ばしていく。
「え! そんなに潰しちゃうのかい!?」
「まだまだ、更にこれで伸ばすよ」
そう言って手に取ったのは、めん棒。
めん棒を使って、生地を薄く伸ばし25cm程の大きさにした。
「レシピを見て、『生地の上にたくさんの具を乗せる』て、どうするのかと思ってましたが······ピザは、こんな薄いものだったんですね」
「この生地の上にソースを塗って、具を乗せて焼けば完成よ」
私は生地の上にオリーブオイルを薄く塗り、さらにトマトソース塗ったあとトッピングを乗せたピザを鉄板に置き、オーブンへ入れた。




