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スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
クリスディアへの道程

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79.ロストスキルの確認


評価、ブクマ、いいね。ありがとうございます!


「では、契約も成立したことですし、情報の共有をいたしましょうか。

さっそくですが、レーヴェさん。失礼ですが、あなたのステータスを見せていただけますか?」


「それは……先ほどもお話ししたように、俺は【ロストスキル】なんです。

見てもあまり意味がないと思いますが……」


リズに切り出され、レーヴェは目線を落とし、申し訳なさそうに答えた。

異世界(こちら)の感覚がいまいち掴めていない私には分からないけれど、やはりステータス、特に【ロストスキル】を見せるのには抵抗があるのかもしれない。


「それについてなのですが……

ジルティアーナ様にステータスをお見せすれば、何かが分かるかもしれないんです」


「……?

よく分かりませんが、ジルティアーナ様がご覧になりたいのであれば、お見せします。

ステータスオープン」


レーヴェの言葉とともに、目の前に彼のステータス画面が現れた。


──これは……。


「これ、英語!? ……ですよね?

でも見慣れない単語が多くて、なんて書いてあるか……分かりません」


リズは目を見開いて驚いたが、そのあと読めないことに気づいて、残念そうに瞳を伏せた。

私は内容を確認しながら言う。


「英語とほぼ同じアルファベットだけど……英語じゃなくて、ドイツ語ね」


「ドイツ語!? それも、ティアナさんの……?」


「うん。私のいた世界の、日本でも英語でもない、別の国の言葉だよ。

大丈夫。ちゃんと読めるから」


私の言葉に、リズは安堵の表情を浮かべた。



私とリズは、混乱していたレーヴェとステラに、事情を説明した。


──私の秘密。


今の私は異世界からの転生者であること。

本当のジルティアーナは、すでに亡くなってしまったらしいこと。


ジルティアーナも【ロストスキル】だったが、それは「スキルが無い」という意味ではなく、

異世界の文字で記されたスキルであるということ。

そして、私の【翻訳】スキルにより、それを読むことができるということ──。


「転生者……ですか。それも異世界から……」


「うん。この世界の常識って、いまいち理解できないことも多くて……

ジルティアーナの知識はあるんだけど、偏りもあるみたいなの。

だから、傍で色々と助けてほしいのよ」


「それはもちろん。

俺たちで力になれることがあるのなら、なんでもいたします。

……ただ、転生なんて話は初めて聞きました。

もちろん、ジルティアーナ様のお話を疑っているわけではないのですが……」



まぁ、そりゃそうだよね。

私も自分の身に起こった事でなければ、信じ難い話だもの。



「……あのっ!」


「なに?」


「さっき、お兄ちゃんのスキルが読めるって……本当ですか?」


ステラが、期待と不安が入り混じった瞳で私をじっと見つめてきた。

レーヴェがステラを止めようとしたが、私ははっきりと答えた。


「うん。レーヴェの天職もスキルも、ちゃんと分かったよ」


「本当に……? よかった……。

【ロストスキル】は、本当にスキルが無いわけじゃなかったんだ……っ」


ステラはそう言って、目に涙を浮かべた。

もちろんレーヴェも、何も言わずとも感慨深い様子だった。


そんな兄妹の姿を見て、私はジルティアーナが【ロストスキル】だと知ったときのことを思い出す。


自分が【ロストスキル】だと分かって、絶望したジルティアーナ。

この世界では、成人の儀で──天職やスキルが人生を左右する、とても重要なものだとされている。


日本でも、進学や就職先は人生に関わる大きな選択だけど、

それで人生が完全に決まるわけじゃない。あとから転職することもできる。


でも、この世界では……。


オリバーさんのところで見たように、例えば「料理人になりたい!」と思っても、【調理】スキルがなければ、料理は不可能だと信じられている。


実際には、【調理】スキルを持っていないマリーでも、ちゃんと教えれば料理できるようになった。

ただ、スキルがあると泡立てなどが楽だったし、道具の少ないこの世界ではスキルが助けになる場面も多そうだ。


オブシディアンによると、天職は先天的に生まれつき持っている場合と、後天的に努力や環境によって得られる場合があるらしい。


つまり、いま【調理】を持っていないマリーでも、努力を重ねればスキルを得ることができるのかもしれない。

──それが私の推測だ。


でも、この世界の常識では、天職やスキルは成人の儀で「神様から授かるもの」と信じられている。


微妙なスキルを授かるだけでもショックなのに、もし「無し」と言われたら……。

特に、ジルティアーナのような上級貴族の跡取りには、絶望的だったろう。


日本で例えるなら──

総合病院の跡取りとして、期待され、医学部を目指していたのに、一発勝負の受験に失敗して、さらに滑り止めすら落ちた。

──そんな感じ、かな?


「……さん、ティアナさん!!」


リズに呼ばれて、ハッと我に返る。

どうやら考え事をしていて、話を聞いていなかったらしい。


「ごめん。なに?」


「それで、レーヴェさんの天職は……なんだったんですか?」


目の前には、エメラルド色の瞳をキラキラさせて興奮するリズ。


……また研究者の血が騒いでるな?


リズの後ろを見ると、レーヴェとステラもソワソワしている。

長年“【ロストスキル】=スキルなし”と思ってきたのだから、それも無理はない。


私は、レーヴェの天職を伝えることにした。



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