表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
クリスディアへの道程

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/349

64.考え方の違い


1500PV達成しました!ブクマ・評価ありがとうございますm(*_ _)m


「何かあっても、貴族が平民に謝まる事はまずありません。それと同じように、獣人を見下している店主(あの男)には、難しい事なのでしょう。

貴族であるティアナさんに対しては、いくらでも謝る事ができても、獣人に対しては優位にいたいと思ってるあの男には、難解な事なのだと思います」



……なにそれ、くだらない。


リズが小声で教えてくれたことに、思わずそう思ってしまった。けれど、それがこの世界の“常識”なのだろう。


悪いことをしたら謝る。感謝したらお礼を言う。

それは私にとって当たり前のことだったけど、この世界では少し違うらしい。


目上の人には謝れても、それ以外に対しては非を認めること自体が“屈辱”とされる。

お礼にしても、部下や使用人が何かしてくれても「当然の義務」で済まされ、感謝の言葉など不要とされるらしい。

そう理解し、私は複雑な気持ちになった。


意識を目の前の状況に戻す。



「……私にじゃないわよ。

彼だって、一方的に殴られた“被害者”なんだから。

そんな彼に、弁償しろと責めた“あなた”が、まず謝るべきでしょ?」


私にそう言われた店主は、苦虫を噛み潰したような顔をしたまま、黙っていた。

周囲の野次馬たちは口々に何か言いながら、その様子を見守っている。

その中には、「獣人に謝れだなんて……俺なら死んでも嫌だわ」と、店主と同じ価値観を持っていそうな声も聞こえてきた。


私の中では、「悪いことをしたら謝る」なんて幼稚園児でもできると思っていたけど、この世界では意外と高いハードルのようだった。


「謝罪は結構です。……失礼します」


獣人の青年はそう言って立ち上がり、歩き出した。


汚れた服のまま近づいてきた彼に、野次馬たちは自然と道を開ける。

彼は左足を引きずりながら、その隙間を静かに進んでいった。




* * *



人混みをかき分けて追いかけると、足を怪我している彼にはすぐに追いつけた。


「ちょっと待って!」


ゆっくりと振り返った彼は、金色の目を見開き、そして深々と頭を下げた。



「先ほどは、ちゃんとお礼も言えず申し訳ございませんでした。

何かお礼をしたいのですが、自分は……奴隷の身なので、何もできそうにありません……」


「そんなことはどうでもいいの。貴方、その汚れ(格好)と怪我はどうするの?」


「怪我は、自分は獣人なので治りが早いんです。たぶん明日には治ると思います。汚れは……今から近くの川に行って洗おうかと……」


「川!?」


そんな会話をしていたとき、「仕方ありませんね」とギルベルトさんが声をかけてきた。


「近くにフェラール商会の工房があります。そこへ行きましょう」



──そうして案内されたのが、フェラール商会の工房だった。


染色なども行っているらしく、身体が汚れることが多いため、風呂も備え付けられているという。

……風呂といっても、平民用の簡素なもので、樽に水を貯めただけのものだった。


「えっ!? 水で洗うの?」


驚く私に対し、青年は「こんな良い場所を使っていいのか」と逆に恐縮していた。


「しっかりシャンプーなども使ってくださいね。汚れたままでは、お嬢様が気になさるでしょうから」


そう言って、ギルベルトさんは青年を風呂に押し込んだ。



* * *



しばらくして──


「ありがとうございました」


風呂から出てきた青年を見て、私は思わず目を奪われた。

私と同じようなグレーの髪だと思っていた髪色と耳、そして尻尾は、真っ白だった。

顔も、さっきから「綺麗そうだな」と思っていたけれど、風呂でさっぱりして、長い前髪を後ろに流した姿は、さらに整って見えた。


思わず無言で見つめてしまった私に、彼は困ったような顔をした。


「……あの?」


「貴方、こんな髪色や尻尾だったのね。でも、このままじゃ良くないわね。ちょうどさっき、ギルベルトさんからドライヤーをもらったから使いましょ」



タオルで軽く拭いただけなので、髪も尻尾もまだ濡れていた。

そう言うと、リズが返事をした。


「私の魔法で、乾かしますよ?」


「うん。リズは頭を魔法で乾かしてあげて。私はドライヤーで尻尾を乾かすわ」


そう言って、リズがマジック(バッグ)にしまっていたドライヤーを受け取り、彼の髪と尻尾を乾かし始めた。


遠慮する彼を無理やり椅子に座らせ、尻尾をわしゃわしゃと掻き分けながらドライヤーをあてる。

水を含んでぺちゃんこになっていた尻尾は、だんだんふわふわになっていった。


ふわふわ~! もふもふ!!


もう、顔を(うず)めたい気分だったが、なんとか耐えた。


「あの……」


「な、何!?」


もしかして、また心の声漏れてた!? とドキッとしながら返事をする。


「あの、どうして俺にこんなによくしてくださるんですか?

俺は獣人で……奴隷なのに……。尻尾をそんなふうに触るのも……汚いとか、思わないんですか?」


そう言って、彼はうつむいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ