51.次の街へ!
ブクマ、評価、いいね!励みになります。
ありがとうございます。
「お世話になりました」
「何言ってるの、お世話になったのは私たちの方よ。そして、これからもよろしくね! 宿の事が落ち着いたら、すぐにティアナ達を追いかけるから」
「うん! マリー達がクリスディアに来てくれるのを、楽しみにしてるね」
とうとう、別れの時が来た。
あの後、マリー達は弟さん達と話し合い、無事に理解を得られたらしい。
私達については
「あいつ、顔を真っ青にして『お貴族様に対して、なんて失礼な対応をしてしまったんだ……っ!』て、震えてたわwww」
と、マリーは悪い顔で笑いながら言った。
最後にwマークが付いてるように聞こえたのは……私の聞き間違いだろうか?
改めて、マリーたちはクリスディアに来てくれる事を約束してくれた。
笑顔でマリーと話していると、リズが「これを」とオリバーさんに小さい袋と紙の束を手渡した。
「これは?」
「クリスディアへの旅費と、通信の魔紙です。
通信の魔紙は、伝えたい事があれば魔紙に書いて投げて頂ければ私の元に飛んで来ます。
私の魔力が込められてますので、オリバーさんが魔力を込めなくても大丈夫です」
「そんな貴重な物を……! ありがとうございます」
後で聞いたところによると、一般的な通信の魔紙だと自分で魔力を込めねばならず、それなりの魔力が必要になるらしい。
魔力の少ない平民には扱いが難しいため、この魔紙のようにあらかじめ魔力が込められているものはとても便利なのだとか。
「私からはコレを貸してやろう」
オブシディアンが差し出したのは、昨日私と一緒に買った黒いポーチ。
「それって......マジック鞄よね?」
「マ、マジック鞄!?」
私の言葉に、オリバーさんが驚いたように反応する。
「引越しをするなら、マジック鞄があった方がいいだろう?
馬車2台分くらいの荷物は入る」
「そんなに!? ですが、そんな高価な物をお借りするわけには……っ」
オリバーさんは慌ててポーチを返そうとしたが、オブシディアンはそれを制した。
「大丈夫だ。お前とマリー以外は開けられないし、悪意を持って触ると痛みを感じるようにしたからな!」
馬車2台分なんて、また凄い価値がありそうだもんね。
オブシディアンは、先程オリバーさん達がクリスディアにくる事を知り、カモフラージュ用の何も付与してなかった普通のポーチに急ぎ、魔法を付与し本当のマジック鞄にしたようだ。
オブシディアンは胸を張り、まるで『どうだ、すごいだろう?』と言いたげな顔をした。
「気にする事はない。早くクリスディアにきて、また美味い飯を期待してるぞ!」
「………………。有難く、お借りします」
胸を張るオブシディアンに対し、オリバーさんは、もう何も言うまい。という様子でマジック鞄を受け取った。
…………オブシディアン、とにかく美味い飯を食べたいんですね?
「ティアナお姉ちゃん、リズお姉ちゃん、ディアンお兄ちゃん、バイバーイ! またねー!」
「うん! クリスディアで待ってるね。マイカちゃん達も気をつけて来てね」
マイカちゃんが手を振る。
私も手を振り返しながら、彼女たちと別れた。
「では、行くとするか」
人気がない街の端まで来ると、オブシディアンは元の姿……聖獣へ変わった。
人の姿になったオブシディアンを、昨日、初めて見たはずなのに、なんだか聖獣の姿に戻ると懐かしく思える。
そして──翼が風を切り、私たちは空へと舞い上がった。
小さくなっていくルセルの街並み。
たった三日間の滞在だったのに、一ヶ月過ごしたヴィリスアーズ家とはまるで違う時間を過ごした。
初めて屋敷を出て見た世界の街並み。
マイカちゃんたちとの出会い。
オリバーさんの料理。
そして、リズとオブシディアンとの絆。
私は、これから――
この世界で生きていく。
私は、もう『 』ではない。
これからは、貴族のジルティアーナ・ヴィリスアーズとして生きていくんだ。
そう決意し、目の前に広がる地平線を見つめた。
あとがき
やっとルセルの街が終わりました。
1話の文字数を少なくしてるといえど、こんなに長くなるとは……次はやっとクリスディア!ではなく
次回、52.地方都市ウィルソール
なかなか行けないクリスディア……。




