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スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
クリスディアの領主

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176.異世界の塩と米、そして【錬金術】


あの後、話が盛り上がりすぎたオリバーさんとミーナが酔いつぶれてしまい、食事会はお開きとなった。

本当は私がマリーたちを新しい家に案内するつもりだったが、オリバーさんがあんな状態で、ルークくんもすっかり寝てしまっている。マリーとマイカちゃんだって旅の疲れがあるはずだ。

結局、家の案内はエレーネさんに任せ、私とリズはミランダさん、アイリスさんと共に会議室へと向かった。


ミランダさんがティーカップを口から離し、ふうっと息を吐いた。


「相変わらず、エリザベスのお茶はおいしいわね。

──さて、さっきの話を改めて聞かせてちょうだい」


優雅に座るミランダさんを見返しながら、私は思う。


この人、誰よりも飲んでたのに──まったく酔ってる気配ないんですが!?


私は背筋を正し、指を二本立てて見せた。


「今、新たにやろうとしているのは主にふたつ。米作りと塩作りです」


驚いた表情を浮かべたふたりのうち、アイリスさんが静かに口を開いた。


「“こめ”とは何でしょうか? それに、塩を“作る”とは……採掘するのではなく、“作る”のですか?」


──うん、やっぱりそうなるよね。


私は、もはや慣れっこになった米と塩の説明を始めた。



「こんなの……見たこともないわ」


「塩を海の水から作るなんて、初めて聞きました」


ふたりは私が取り出した米やおにぎり、藻塩を手に取りながらつぶやいた。


説明だけでは信じてもらえそうにない反応だったので、実物を見せることにしたのだ。

うん、予想通り。

言葉だけじゃ伝わりにくいし、現物を見せた方が早いってことも、驚かれることも、もう何度も経験してきたやり取りだ。


だから──油断してしまったのかもしれない。


藻塩の瓶を手に取ったミランダさんが、ふと口を開いた。


「で、あなたはこれらの物を──どうやって手に入れたの?」


「ひょっ!?」


思わず変な声が出てしまった。


言われてみれば、まさにその通り。

今までは「ステータス画面から取り出すのはおかしい」と気をつけて、あらかじめマジックバッグに入れておいたのに……。

でも、これまで誰にも突っ込まれなかったから、つい油断してた!


ひとりでグルグル考えていると、リズがまるで私の心を読んだかのように言った。


「今までは、平民相手でしたから『貴族の特別なルートで手に入れたんだろう』と思ってもらえたでしょうが……ミランダ様たちには、それは通じません」


あー……なるほどね。

まあ、ミランダさんたちなら大丈夫かな。


誤魔化すのは早々にあきらめて、素直に全部白状することにした。



「な……なんなのよコレは……っ!?」


「下級ポーションです」


「そういうことじゃないわよっ!!」


ミランダさんのツッコミが止まらない。対照的に、アイリスさんは無言でじっと見ていた。


ふたりが見ているのは、私のステータス画面。


私は【錬金術】──もちろん鍋などを使った通常のやり方ではない。

あの、『錬金術師になろう』のチート能力を、ステータスをオープンにした状態でふたりに披露していたのだった。


それはもう、驚かれた。


名前、性別、年齢など、天職を授かる前から見えていた情報はこの国の文字──フォレスタ語で表示されているが、天職やスキルなど成人の儀のあとに追加された項目は、日本語で書かれている私のステータス画面。


私には自然に両方の文字が読めているが、ミランダさんたちには読めない。

それも単に「日本語が読めない」というだけでなく、彼女たちにとっては、そもそも見たこともない未知の文字なのだ。


日本にいた頃、外国人の友人が言っていた。


『日本の漢字って──文字というより、絵や図形みたい』


読めるかは別として、何度も日本語を見たことがある人でさえ、そう言うのだ。


ましてや初めて見る異世界の文字となれば、かなり違和感があるだろう。

読めないどころか、どこが何を表していて、どこまでが1文字なのかを判断するのも難しいはずだ。


ミランダさんたちが日本語を見て、眉をひそめたのが分かったが、私は気にせず操作を続けた。


そしてレシピ選択画面まで進めると、ふたりが大きく反応した。


「『錬金術のレシピ』!? これ、読めるじゃない!」


そう。

パッシブスキル【翻訳】が発動していて、日本語をはじめとした元の世界の文字も、こちら──異世界の文字も、普通に読めてしまうのであまり意識していなかったが、フォレスタ語で書かれた『錬金術のレシピ』を取り込んだせいか、取り込んだ本の名前も中身も、フォレスタ語で表示されていた。


私はそのまま『錬金術のレシピ(初級編)』を選択する。


画面が切り替わり、そこに現れたのは『錬金術のレシピ(初級編)』に記載されていたであろう作成アイテム名の一覧。


それを見て、ふたりは目を大きく見開いた。


「……なに、これ……」


そんな小さな声も聞こえたが、私はそのまま下級ポーションを作成し、完成させた。



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