表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
海の街、クリスディア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

169/349

168.再会と再会

海の向こうに太陽が沈みかけ、辺りを赤く染める頃、一台の大きな馬車が屋敷の前に止まった。


馬車到着の知らせを受けた私は、早足で駆け寄る。ちょうどその時、馬車から一人の人物が降りてきた。


「マイカちゃーんっ!」


「あっ! ティアナお姉ちゃん!」


マイカちゃんと手を取り合い、再会の喜びを分かち合う。すると、馬車の窓から別の顔が覗いた。


「マリー!」


「ティアナ! 待たせたわね。とうとう来たわよ、クリスディア! ……って、すごいお屋敷ね。前にオリバーがお世話になってた家より、ずっと大きいわ」


マリーは馬車から降り立つと、ヴィリスアーズ邸を見上げて感嘆の声を漏らした。


「──長旅、お疲れ様でした」


「リズさん!」


屋敷の中から現れたリズと、マリー、マイカちゃんは再会を喜ぶ。その時、馬車の中から声が響いた。


「おーい、ちょっと手伝ってくれ」


「あっ、ごめんね、オリバー!」


マリーが馬車の中に戻り、代わりにオリバーさんが姿を現す。


「オリバーさ──っと」


私は名前を呼びかけたが、口元を押さえて言葉を飲み込んだ。


なぜなら、彼の腕には眠っているルークくんの姿があったから。オリバーさんの後ろから再びマリーが顔を出し、小さな可愛らしい靴──おそらくルークくんのもの──を手にしていた。


「……寝ちゃったのね」


私はくすりと笑いながら、オリバーさんに抱かれたルークくんを覗き込む。ルークくんはすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。


「……かわいい。とりあえず、中へ入りましょ。ルークくんを運ばないと」


そう言って皆を中へ促そうとした時、リズが馬車をじっと見つめてつぶやいた。


「……この馬車って」


「?」


何か気になるの? と尋ねようとしたその時、馬車の中からまた声が響いた。


「ジルティアーナの専属料理人を連れてきてあげたのよ。感謝しなさい、エリザベス」


そう言って顔を出したのは、まさかの人物だった。


「──ミランダさん!?」


私は思わず名前を叫ぶ。対するリズは、落ち着いた声で答えた。


「やはり、ミランダ様の──フェラール商会の馬車でしたか」


「えっ!? リズ、気づいてたの?」


「だって、馬車にフェラール商会の紋がついてますし」


そんな会話を交わしていると、中から見覚えのあるオレンジ色の髪の女性──アイリスさんに手を引かれ、ミランダさんが馬車から降りてきた。


「お久しぶりね、エリザベス……そして、“ティアナ”さん?」


リズに微笑みかけたあと、私に視線を移すと、意味ありげに目を細めて笑った。


どうして“ティアナ”の名を──!?


驚いていると、まるで心を読まれたように、彼女は答えた。


「ギルベルトからあなたの面白い話をいろいろ聞いてね。そろそろ会いに行こうかと思っていたのよ。そんな時、このご家族と偶然知り合って……そしたらびっくり。『ジルティアーナの専属料理人になったから、クリスディアに行きたい』って言うんだもの」


ミランダさんはころころと楽しげに笑った。


「さらに話を聞いたら、勧誘したのがジルティアーナの専属侍女であるエリザベスとティアナだと言うから。……ああ、なるほど、ってね」


それだけの情報で全てを把握した様子──おそろしいっ!


そんなことを考えていると、マリーに袖をつんつんと引っ張られた。


「なに?」


「ねぇ、ミランダさんとあなたたちって、どういう関係なの?」


──え? ミランダさんから聞いてないの?


「ミランダさんからは『ジルティアーナ様とその侍女たちは、商会の顧客』ってだけ聞いてて……でも、ただの取引相手ってわけじゃないんでしょ?」


「……う、うん」


どうしよう、なんて説明すればいいの? 正直に話すべき?


と、迷っていると、リズがあっさり言った。


「ミランダ様は、ジルティアーナ様のお義姉様です」


「えっ!?」


驚きの声を上げたのは……私。


マリーも驚いていたが、「なんでティアナが驚くのよ」と突っ込まれてしまった。


マリーは気を取り直して続ける。


「まさか……ミランダさん、いえ、ミランダ様がジルティアーナ様のお姉様だったなんて。そんなこととは知らず、ミランダ“さん”なんて呼んでしまって……大変失礼いたしました」


マリーは深々と頭を下げる。


ミランダさんはそんなマリーに手を差し出し、にっこりと笑って言った。


「構わないわ。私はジルティアーナの姉と言っても、親同士が再婚しただけで、血のつながりはないし、嫁いだから今は上級貴族でもないのよ」


「ですが……! 義理とはいえ、ジルティアーナ様のお姉様ということは、ミランダ様も……お貴族様なのですよね?」


ミランダさんは苦笑して、やや肩をすくめながら答えた。


「まあ、形式上は中級貴族だけど……フェラール家は商会ですからね。貴族の肩書きなんて、今さら気にするようなものでもないわ。 それに貴女はティアナの友達なんでしょ? ティアナは私の妹のようなものなの。だったら、私にとっても貴女はお友達のようなものだわ」


いや、“妹のようなもの”って……本当に妹なんですが?


「そんな、お友達なんて……っ」と、恐縮するマリー。それを笑顔で見守るミランダさん。そんなミランダさんをジト目で見る私。


ぽんっと肩を叩かれ振り返ると、無言で首を振るリズがいた。


……うん。ミランダさんには逆らわない方がいいですよね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ